講師インタビューtrainer

多様な価値観を理解し合う必要性|メンタルヘルスで組織を強くする vol.2

公開日:2015/08/10 更新日:2020/05/06
研修の最前線で活躍する講師へのインタビューを通じて、人材育成について考えるシリーズ。
過労や職場環境が原因でうつ病などの精神疾患を発症したとして、2014年度に労災認定された人は497人(前年同比61人増)に上り、過去最多を更新したことが、6月25日厚生労働省の集計で分かりました。また、2015年12月から、改正労働安全衛生法に基づき、従業員数50人以上の企業には「ストレスチェック」が義務づけられるなど、企業側は従来以上に、従業員の職場環境の改善をすることが求められてきます。
「組織と人の活性化」を専門の一つとする羽地朝和氏(日本能率協会専任講師)に、「メンタルヘルス」という切り口から健全な職場づくりについてお話を伺っていきます。

Vol.2 多様な価値観を理解し合う必要性

―働きがいや、やりがいなどは、具体的にどのようなものでしょうか。

(羽地)
人や世代によって、やりがいを感じるポイントは違うと思っています。

高度経済成長期の頃に生まれ育った我々は、努力して頑張れば、必ず報われる、儲かるという時代を経験しています。会社の利益の為に頑張れば、その分、会社も報酬、昇進などで報いてくれました。

そういう時代を経験した人が、今、経営者や管理者となって、頑張れば報われるという価値観を持って、会社の利益の為に頑張れというメッセージを発します。

我々の世代は、会社を発展させれば自分にもちゃんと恩恵があるというように、会社の利益の為にというのが、モチベーションの源になっていました。

でも、頑張っても頑張っても将来の幸せが見えない、報われないという時代に生まれ育った人たちに、そういうことを言っても、たぶん共感してもらえないでしょう。

-そうかもしれませんね。では、信頼関係と若い世代の成長とはどのような関係がありますか。

(羽地)
ここで一生懸命やれば、必ず会社は報いてくれる、何か自分にとって良いことがある、という信頼関係があると良いのですが、今の若い人は、会社の利益の為ではなく、自己成長が”やる気スイッチ”の源になっている人が多いと感じます。中には、お客様の為、社会の為に頑張りたい、それが自分のやりがいだという人もいます。また仲間と楽しくやりたい、という”やる気スイッチ”もあるでしょう。

そういう意味では、昔と違い、仕事のやりがいを感じる源が多様化してきたと言えます。昔はやりがい・働きがいの源が一つだったから良かったのですが、今は、そうした様々な価値観を持った人が、一つのチームを組み、組織を構成しているという事を、経営者や管理者は理解する必要があります。

-人にはさまざまなモチベーションの源泉があるということを、マネージャークラス、あるいはその上の方々は知っていないといけないということですね。

同時に、若手中堅クラスの人も、自分のモチベーションの源泉がどこにあるのかということを、しっかりと把握する必要があるという事ですね。

(羽地)
やはり自分で自覚して、それを自分で満たす仕事の取り組み方やキャリア形成が必要だと思います。やりがいや働きがいは与えてもらうものではなくて、自分でつくりだすものです。

自分はこれを大事にして仕事がしたい、自分のこだわりをはっきりと持ち、それを打ち出す時代なのではないかと思います。

また、現在は、外国人がどんどん採用されています。外国人も含めると、それこそ文化や生まれ育った環境が千差万別、モチベーションの意味合いは、もっと違うものになります。

今後、どこの企業でも、外国人や、正社員以外の、契約社員や派遣社員がどんどん雇用されるようになるでしょう。そうすると、組織への帰属意識やモチベーションの源泉が全く違う人が増え、働く意味や価値の多様性がますます広がっていくことは確実です。

その点を、リーダーやマネージャーは、しっかりと理解しておくことです。自分の価値観だけを押し付けるのでは、絶対に上手くいきません。

それが出来ている企業が、多分、これからは強いのでしょうね。多様な価値観を持った人が集まり、それが企業のパワーになっていくのだろうと思います

-マネージャーやリーダーには、そういった意識や行動が求められるのですね。では、若手・中堅クラスについてはどうですか?

(羽地)
日本の多くの企業、特に製造業では、40代以上と20代に比べて30代の人数が少ない砂時計型の人口構造が多くなりました。30代は人数は少ないけれども、仕事はバリバリできる年齢で、自分でもたくさんの仕事を抱えているうえに、下も育てないといけません。

経験的にですが、最近の30代は、真面目で一生懸命だけど、どこか自信がない、仕事の中での満足感がないという人がすごく多いと感じています。一方、我々のような50代・60代は、結構、好き勝手にのびのびやってきた時代がありました。30代の人たちにも、もっとのびのびと、上の世代の顔色など気にすることなく仕事に取り組んで欲しいと思います。

~つづく(2/5)~

◆羽地 朝和(はねじ ともかず)プロフィール◆

一般社団法人日本能率協会 専任講師
株式会社プレイバック・シアター研究所 所長
大手企業から中堅企業を対象に、人材育成コンサルティング業務に従事。その他、精神科クリニック・精神病院でのグループセラピー、大学・専門学校等で人間関係論などの教鞭も取っている。