健全な職場づくりに必要なスキルとは?|メンタルヘルスが組織を強くする vol.5
研修の最前線で活躍する講師へのインタビューを通じて、人材育成について考えるシリーズ。
過労や職場環境が原因でうつ病などの精神疾患を発症したとして、2014年度に労災認定された人は497人(前年同比61人増)に上り、過去最多を更新したことが、6月25日厚生労働省の集計で分かりました。また、2015年12月から、改正労働安全衛生法に基づき、従業員数50人以上の企業には「ストレスチェック」が義務づけられるなど、企業側は従来以上に、従業員の職場環境の改善をすることが求められてきます。
「組織と人の活性化」を専門の一つとする羽地朝和氏(日本能率協会専任講師)に、「メンタルヘルス」という切り口から健全な職場づくりについてお話を伺っていきます。
vol.5 健全な職場づくりに必要なスキルとは?
-マネジメントされている方々にとって、特に必要なスキルがあれば教えてください。
(羽地)
先程も言いましたが、マネジメント側として必要なスキルは、話を聴く、悩みを聴くということです。一方的に、自分の指示や命令しか言わない、周囲の話しに耳を傾けないような人は、マネジメントをしてはいけないと思います。
やはり、上司に必要なのは、聴き出す能力であり、それによって問題を把握することができるのです。問題や悩み、時には不満や不安といったネガティブなものも聴き出し、吸い上げる能力が必要です。さらに、「責任は自分が取るから、あなたは精一杯やりなさい」と部下にメッセージを伝えることでしょう。
-声掛けみたいなところですね。
(羽地)
責任は部下に押し付け、上手くいかないことや、業績が悪いことも部下のせいにするなど、もってのほかで、上司は部下に安心感を与え、チャレンジする勇気を与えられるかどうかだと思います。
-マネジメントする側が安心感を与える行動をとる一方で、部下はどのような行動をとればよいのでしょうか。
(羽地)
上司に対して、自分の抱えている問題や悩みを、きちんと伝えなくてはなりません。最近の若手には、この能力が決定的に不足していると感じています。
入社して3年以内に、新入社員の3割が辞めているというのは、会社を辞める前に、誰にも相談できなかったのではないでしょうか?誰にも言えずに、溜め込んでいる若い人たちがすごく多いと思うので、若手や中堅社員は、悩みや、困っていることや抱えている問題を、きちんと上司に伝えるという能力を、身に付けていって欲しいと思います。
-自分の考えや悩みを論理的に伝える能力が不足しているという傾向は、今の若い人には多く見られますか?
(羽地)
多いです。特に、ネットやメールで育った世代は、そういうツールの中では、何となく表現することはできます。絵文字やキャラクターを使っては言えるけれど、自分の言葉では言えない人が多いのです。
自分の言葉で、悩み、困っていることを伝えられずに、手軽なネットのキャラクターでごまかしています。そこで本音を言っているかといえば、そのようなことはないですし、今の若い人は、キャラクターを演じているといいますか、友達同士の間でも、本音や悩みを言えません。
今の若い人、特にネットで育った人達は、自分の内面を言語化する能力がものすごく低下していますので、しっかりと自分の言葉で伝えるスキルを身につけることが必要だと思います。
-最後に、羽地さんが、講師として心掛けておられることについて教えてください。
(羽地)
スキルを教えることや、講師としてのメッセージを伝えることはしますが、やはり、受講生がお互いに学び合う、指摘し合うといった場を作ることを一番大事にしています。
もちろん、お互い指摘し合う為のポイントややり方を、論理的に教えることはしますが、基本的には、本人達が、そこで実際に体験し、お互いにフィードバックし合い、共に学ぶ場を作ることを大事にしたいなと思っています。
-一方的に、インプットするだけではなく、インタラクティブな場を作るということですね。
(羽地)
そしてこれは蛇足ですが、若手の研修の時には、人生は楽しい、仕事って素晴らしいものだということを伝えたいと思っています。そんな事を思いながら、日々、研修に精一杯とりくんでいます。
-本日はありがとうございました。
(羽地)
こちらこそ、ありがとうございました。
~おわり(5/5)~
◆羽地 朝和(はねじ ともかず)プロフィール◆
一般社団法人日本能率協会 専任講師
株式会社プレイバック・シアター研究所 所長
大手企業から中堅企業を対象に、人材育成コンサルティング業務に従事。その他、精神科クリニック・精神病院でのグループセラピー、大学・専門学校等で人間関係論などの教鞭も取っている。