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対話型アプローチの組織開発|言葉を超えて「関係の質」を高める組織開発 vol.1

公開日:2015/09/02 更新日:2020/05/06

研修の最前線で活躍する講師へのインタビューを通じて、人材育成について考えるシリーズ。
組織開発・組織変革と“楽器”―。一見、遠いところにあるように思えますが、言葉の限界を超えて組織の「関係の質」を高めることに、「リズム」は大きな作用をもたらします。組織メンバーの参加意識・協働意識や、創造性につながるアクティビティ「ドラムサークル」を切り口に、人間の本能への理解を踏まえた組織開発の取り組みについて、深代達也講師にお話を伺っていきます。

人と組織の可能性を引き出したい

-深代さんが、組織開発のテーマに講師・コンサルタントとして携わるようになった経緯を教えてください。

(深代)
僕自身は、もともと2000年ぐらいまで、バランスコアカード(BSC)のようなマネジメントの仕組みを企業や非営利組織に導入するコンサルティングの仕事をしていました。

ほかには、人事制度をマネジメントの仕組みに連動させ、BSCでKPI(重要業績評価指標)を作り、個々に落とし込んでいって1人1人の目標管理をしっかりやっていくというような仕組みづくりもしていました。主に医療系、福祉サービスの業界向けにご支援をしていたんですね。

それはそれできれいに、“ロジックの世界”を作れます。けれど、人はそうはいかないのです。マネジメントというのはある意味で人を物のようにコントロールしようとしてしまうものなのですよね。しかし人は物ではなく、1人1人が心を持っています。心を持っているということは、ある状況に対しての認知の仕方が人それぞれだということで、その認知の受け入れる余地によって、同じ状況をいいと思うか、悪いと思うかは変わってきます。

会社や組織に不可欠な存在である「人」を、どう大切にして、可能性を引き出せるのか、というところに関心がありました

もともと大学時代に人類学や心理学を研究していて、フロイトやユングなどの箱庭療法などをやっていました。自分の家族にメンタル不調があったことも影響して、人が生きるということをどう自分なりに意味づけるかということにとても興味がありました。そういった要素がちょうどぶつかって、その頃、NLP(神経言語プログラミング)を勉強しました。

勉強してみるといろいろな流派があり、しかも理論的な背景もいろいろあり、それを勉強していくと、これは心理学の認知行動療法にもつながっていました。

NLPのメソッドを使いながら、人の可能性を引き出すことによって、組織の可能性も引き出せるようなサポートができると、自分も生きていてうれしい、と思うようになりました。そんな経緯で、チーム・ビルディングの領域を2006年ぐらいから始め、JMAの公開講座でセミナーをスタートしました。それをきっかけに、組織開発の領域をもっとやっていきたいと思うようになったという次第です。

対話型の組織開発のアプローチとは?

-マネジメントの領域と、今やっていらっしゃるテーマを比べると、振り幅が大きいような印象を受けます。企業の側からもマネジメント理論だけでは足りない、そのようなニーズが上がってきたのでしょうか?

(深代)
そうですね。マネジメントのやり方が“人を物のように扱うやり方”だと、簡単に言ってしまうとモチベーション、エンゲージメントの問題が起こって、うまくいかないのです。疲弊をしてしまうのですよね。
自分は何のために働いているのだろうか、そういう話になってしまいます。

働いている自分自身に意味があることが、組織にとっても意味があり、会社にとっても、KPIにとっても意味があることならば、お互いに幸せですよね。そこをつなげられればいいなあという思いがありました。

同様の考え方に転換する会社も増えてきているような感じはします。
だからこそ、組織開発が2、3年前にブームになったりしたのだと思います。

組織開発のアプローチも、診断をして何か施策を打つ、というようなアプローチから、対話型のアプローチに転換してきています。

それまでは、主管となる人事部門や管理部門が一方的に調査をして、分析をして、現場に対して打ち手を打ってくださいという指示命令型の取り組みも多くありましたが、それだと普通の業務になってしまうのですよね。

-職場の皆さんで対話をしながら課題を見つけて行くようになってきているのですか?

(深代)
そうです。課題を見つける対話もありますが、対話をしながらそれ自体によって関係性が変わっていく取り組みもありますね。

~つづく(1/4)~

◆深代 達也(ふかしろたつや)プロフィール◆

一般社団法人日本能率協会 KAIKAプロジェクト室 主管研究員
組織開発分野セミナー講師:チームビルディング、組織力向上、モティベーションマネジメント、エンゲージメント向上
米国NLP協会認定トレーナー、DiSC公認インストラクター、Ocapiプラクティショナー
米国REMO社HealthRhythms&HealthRhythms Adolescent Protocolファシリテーター
“トレーニング・ビート”認定トレーナー、ドラムサークルファシリテーター協会会員
日本能率協会総合研究所にて、バランスト・スコアカードや人事革新・組織活性を中心としたコンサルティング&人材育成に従事。同研究所経営コンサルティング部長を経て「人と組織の可能性の最大化」を使命とする株式会社可能性コンサルタンツを設立。その後現職。
現在は、音楽なども活用した組織開発の推進支援、企業理念共有支援、エンゲージメント向上支援、インフルエンサーに向けたチームをエンパワーする力向上などの現場指導・人材育成等を推進している。