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戦略的に優秀な人材を獲得・育成・定着する「タレントマネジメント」のメリット

公開日:2022/06/29 更新日:2023/09/13

ここ数年の間に耳にする機会が多くなった「タレントマネジメント」。1990年代にアメリカで導入され、日本の企業でも人材獲得競争の激化や働き方に対する価値観の多様化などから注目されています。ここではそんなタレントマネジメントの概要や目的、メリットなどをお伝えします。

タレントマネジメント

タレントマネジメントとは何か

タレントマネジメントとは、従業員一人ひとりが持つタレント(能力・スキル・経験値など)に着目し、全従業員のタレント情報を一元管理したうえで人材マネジメントに活用し、人材の戦略的な獲得、育成、定着を図る仕組みのことです。その目的は「パフォーマンス最大化による経営目標達成」と「エンプロイーサクセス」の同時実現にあります。

タレントマネジメントの概念は、1997年にマッキンゼーが刊行した『ウォー・フォー・タレント(人材育成競争)』という書籍を起源として世に広がりました。「企業間の業績差は、優秀なマネジメント人材の充実を最優先事項に位置づけ、優秀な人材を強化するための具体的な施策を実行しているかが影響している」という考え方が、現在のタレントマネジメントのベースとなっています。

日本の人材管理の歴史~なぜ今、タレントマネジメントが必要なのか

19501970年代の高度経済成長期の日本では、「従業員はコストである」という前提のパーソナル・マネジメント(PM) が人材マネジメントシステムの主流でした。大量生産大量消費の時代の真っ只中であり、企業は安定生産を図るべく、従業員に長く働いてもらうことを目的とした、終身雇用制度や年功序列といった日本型雇用を始めた時代のことでした。

しかし、「モノを作れば売れる」時代が終わりを迎えるとともに、「従業員は資源である」という前提のヒューマン・リソース・マネジメント(HRM)へと変化が起きました。HRMは経営戦略と人的資源とを結びつけて考える手法です。経営戦略達成のために人的資源の生産性を高めるべく、採用や育成への投資に注力を始めたり、成果主義を取り入れたりする動きが生まれました。

1990年代にはバブル崩壊を迎え、「従業員は資本である」という前提のヒューマン・キャピタル・マネジメント(HCM)という考え方が生まれました。これはHRMとほぼ同義の考え方ですが、従業員への投資は業績へのリターンをもたらすと見込んだうえで実施する点が特徴です。

そして昨今、終身雇用制度や年功序列の概念が揺らいでいることで人材流動性が高まり、労働人口減少も相まって、人材獲得競争がいっそう激化しています。加えて、個々人の働き方の価値観も多様化していることから、企業側が労働力を確保することがますます困難になっています。 

また、激変するビジネス環境によって経営戦略にも変化が求められ、企業は自社の競争力向上のために今まで以上に人材を重視するようになりました。

こうした状況が背景となって、人材の戦略的な獲得・育成・定着の仕組み、すなわちタレントマネジメントが必要になっているといえます。

導入すると何が実現できるか

タレントマネジメントを導入することで企業だけでなく従業員にもメリットがあります。

人材の適性配置ができる

正社員・契約社員・派遣社員・フリーランスというように多様な働き方が増えている中で、適性にマッチしたポジションへの人材配置が課題になっています。従業員の「タレント」を一元管理することによって、適材適所な配置が可能になります。

「タレント」の内容には、能力、スキル、経歴、資質、キャリアプランなどの情報が挙げられますが、1on1ミーティングで語られた内容やアンケートの回答などで得られる定性的な情報も蓄積していくことで、より適正な評価が可能になります。

従業員のエンゲージメントが高まる

人材の能力を最大限に生かすことで従業員のモチベーションが上がります。従業員が会社への貢献や仕事へのやりがいを感じるようになります。エンゲージメントが高まることで、離職防止にも繋がります。

 従業員や組織の状態に合わせた育成ができる

タレントマネジメントをリーダー育成のために活用している企業もあります。経験を積ませたい部署への配置など、戦略的に育てていくのです。後継者育成、新規事業の発足に対する人材の育成にも対応ができます。また、従業員のタレントや適性を把握することで、個々の育成課題に対応した研修を計画的に行うこともできます。

スピード感のある組織運営ができる

新事業立ち上げや組織横断的なプロジェクト編成などの際には、「こういう人材を配置したい」というニーズがある程度決まっているはずです。タレントマネジメントの仕組みが整っていれば、必要な人材を一から探したり、感覚的に任命したりするのではなく、本当にニーズに合った人材が配置しやすくなるでしょう。大胆な抜擢や急な異動にもスピード感を持って対応することができます。

人事評価が効率化し、テレワーク下でも適正な管理ができる

テレワークが浸透するのに伴って課題視されているのが人材の管理や評価ですが、タレントマネジメントの仕組みがあれば客観的なデータを残しておき、必要なときに確認できるため、オンラインでも管理、評価がしやすくなるとされています。システム化されていれば、eラーニングの受講状況や受講後のオンラインアンケートの結果なども一元管理しやすく、エンゲージメント向上や育成にも役立てることができます。

より戦略的な採用活動ができる

社員の持つスキルを一元的に管理できるため、社内全体で足りていないスキルを知ることができます。これにより、現在自社に必要なスキルを持つ人材を採用するなど、戦略的な採用が可能になるでしょう。

新たな事業へのチャレンジができる

社員のスキルを全社的、一元的に把握できるということは、自社の「強み」を知ることにもなります。既存のリソースを活かした新規事業の開発など、新たなチャレンジが可能になるかもしれません。

タレントマネジメントを成功させるために必要なこと

タレントマネジメントを成功させるには、まず従業員は会社の財産であるという理解が大前提となります。その上で、導入するまでの基本的な流れと、成功のポイントは以下のようになります。

導入する目的を明確にする

何のためにタレントマネジメントを導入するのか目的を明確にします。人事部だけでなく現場の声も聞きながら明確にしましょう。

タレントマネジメントの問題点として、社員が「ランク付けをされている」という感覚を持ちやすいということがあります。何のための導入なのかを明確にすることが、こうした誤解を防ぐ手段にもなります。

タレント像の定義

人事戦略に基づき、求められるタレント像を明確にします。どんなスキルを持った人材が必要なのか、できるだけ具体的に定義します。

タレントを把握するためのデータの整備

基本的な属性、職務内容、これまで参画したプロジェクトや評価などをデータ化し、該当する人材がどれくらい在籍しているかを可視化します。今はこうしたデータを一元管理できる専用のシステムもあり、そうしたシステムを導入する方法もあります。

タレントマネジメントの活用計画と実行

人事戦略とのギャップに対して、新たに人材を採用するのか、既存社員を育成するのか等、具体的な施策を立て、実行します。

 実行した施策の見直し

計画を実行したら、効果の測定と施策の見直しを行います。

タレントマネジメントを成功させるには長期的な視点からタレント育成に取組むことが必要です。多くの部署との連携、協力体制が必要となるので最初は職種や部署を限定して小さく始めるのも良いでしょう。

また、データの管理のためにシステムを導入する場合も、導入したら終わりではなく、データを常に最新の状態にしておくことも大切です。データの更新の担当者を決めることや、更新の頻度も決めるなど仕組みを整えることがポイントとなります。 

人事戦略は、企業の経営目標や人事課題によって、それぞれ異なります。自社に適したタレントマネジメントを行うよう意識することが重要です。

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