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公開日 : 更新日 : 研修を120%活用するために [研修後]編③
個人と組織の変容をどう測定するか?


研修後の効果を評価する方法としては、アメリカの経営学者であるカークパトリック博士が1959年に提案した教育の評価法のモデルが有名であり、世界的に定着しています。この評価は4段階に分かれており、企業研修では、下記のように読み変えることができます。
研修を「やりっぱなし」にしないためには、研修によってどのような変化が生まれたのかを把握するプロセスが欠かせません。個人の行動変容や組織の変化を測定するのは難しいことですが、本稿では、こうした成果の可視化に役立つ具体的な評価手法を紹介し、より効果的な人材育成を実現するための考え方をお伝えします。

研修後の「個人」と「組織」の変化を検証するには

研修後の効果を評価する方法としては、アメリカの経営学者であるカークパトリック博士が1959年に提案した教育の評価法のモデルが有名であり、世界的に定着しています。この評価は4段階に分かれており、企業研修では、下記のように読み変えることができます。

  • ①Reaction(教育研修内容の満足度)
  • ②Learning(教育研修で何を学んだかという理解度)
  • ③Behavior(教育研修による行動変容度)
  • ④Result(教育研修内容が組織へ及ぼした影響度)

①②についてはアンケートでの測定が可能です。詳細は下記のコラムでご紹介しています。

コラム:やりっぱなしにしない研修活用術!研修後編②アンケートを最大限に活用する>>

本稿では、③の行動変容度や④の組織への影響について、それぞれ具体的にどのように測定するかをご紹介します。

個人の行動変化度の測定法

③の「Behavior」は、研修をきっかけに個人の行動がどのくらい変容したかを見るものです。こうした個人の行動変容を測定するには次のような手法があります。

1) 360度評価で測る

研修後アンケートは受講者本人が回答するものですが、360度評価は一緒に仕事をしているメンバーから回答を得るものです。上司だけではなく同僚や部下にも回答を依頼し、「360度」という名前の通り、全方向からのコメントを判断材料として、対象者の行動の現状を把握します。研修の成果を測定するのに活用する場合は、研修の前後に実施することで、過去と比較した成長を推定することができます。

ただしこの方法には、回答をするメンバーが評価のプロではないために、どうしても日頃の個人的な感情が排除しきれなかったり、フィルターのかかったジャッジとなってしまうなどのリスクもあります。こうしたフィルターやバイアスがかかりにくい設問を用意するためには、自社で質問を作成するのではなく、専門機関が設問設計をするのが望ましいでしょう。

また、自社の育成課題に合わせた評価を行いたい場合、自社の社風や育成施策の狙った項目に合わせた設問をオーダーメイドで準備をするとより効果的です。その場合、「期待された能力の開発が本当に進んだのか」、「思考や行動の変容が本当に起こったのか」など、研修の成果が明らかになるのはもちろんのこと、個人のポテンシャル評価や、能力を最大限に活かすためのキャリアプラン、配置や昇格の判断材料としても活用することができます。

2) アセスメントに基づき社外の専門家の目で測る

アセスメントには記述式や面談・観察形式など複数の種類がありますが、いずれも社外の専門家が採点し、期待される能力・行動・思考の現状を定量的もしくは定性的に評価することで対象者の現状を知ることができます。これを研修前・後に実施すれば、研修を経てどのように変化が起こったかを確認することが可能です。個人や組織の強みが発見できるなどの副効用も期待できます。

得られた結果は、評価を受けた当事者へのフィードバックセッションを行う、次の育成施策の参考とするなど次のアクションに活用できます。また、設問をカスタマイズすれば、より企業の育成課題に合った評価が可能になるでしょう。

3) アクションプランの達成度で測る

研修の当日もしくは直後に、受講者自身で「研修での学び・気づきをどのように活かすか」というアクションプランを策定、上司の協力も得ながらその実践・達成状況を振り返る場を設定し、確認することで研修の効果を見る方法です。継続性や中期での変化を評価するうえでは、一定の期間をはさみながら複数回にわたり振返りを行うことも効果的です。

組織への影響度の測定法

続いて④の「Result」、つまり研修の「組織への影響度」についてです。研修参加者が学んだ内容を活用してビジネス成果を向上させたか、研修が組織に貢献したかということを問う段階です。

こうした変化を「研修の成果」として測定するのは非常に難しいのが現実ですが、ここでは、研修の前後で「組織の状態変化を見る」ことに置き換えて考えてみましょう。

定期的な組織診断で変化を見る

より包括的に組織としての成長・変化を見ていきたい場合には、「組織診断」が活用できます。

  • ①組織診断で課題が浮き彫りになる
  • ②対策として研修等の人材育成施策を実施
  • ③再び組織診断を行い、課題が改善しているかを見ていく

以上のようなサイクルで、組織の状態と育成施策の評価を見ていくことになります。組織全体を定点観測することで、経年変化を追うことができるでしょう。

なお、JMAでも下記のような組織診断プログラムを提供しています。

組織診断:JMAマネジメント力診断>>

「全社一社体制での改善マネジメントのしくみ」「目標のあり方」「人材育成のしくみ」「ミドルマネジャーの状態」のコア4項目を中心に、組織の「強み」「弱み」を明確化し他社との比較ができます。法人会員企業はコア4項目のみの簡易版を年1回、無料で受けていただけます。

組織診断:ワーク・モティベーション調査>>

企業業績につながる従業員のモチベーションを握。従業員の意識を“正確”に測り、構造的に解析し、向上・改善の方向性を得ることができます。

成果の確認を現場任せにしないことが重要

残念ながら、こうした研修後の成果測定は、現場、つまり受講者それぞれの職場任せになっているケースも多く見られます。たとえば、研修後にせっかくアクションプランを立てても、その達成状況については受講者の上司に任せきりになっていて、育成部門では把握していない、ということも多いのではないでしょうか。

今回ご紹介したような効果測定を行っていても、“測定どまり”になっているケースもあるかもしれません。しかし、個人や組織の変化を測定した結果、研修の効果が期待に至らなかった場合には、次の人材育成施策のヒントとして活かし、改善していく必要があります。具体的には、以下のような点を意識し、PDCAサイクルを回していくのが理想です。

Plan(計画)

研修実施前に、具体的な目標設定と測定指標を明確にする。できれば測定方法についても事前に計画しておく

Do(実行)

研修を実施。研修中は、受講者の反応や理解度を注意深く観察する。

Check(評価)

研修後、設定した測定指標に基づき、個人の行動変容や組織への影響度を測定する。上記で紹介した360度評価、アセスメント、アクションプランの達成度、組織診断などを活用し、期待通りの成果が得られたか、あるいは課題が残ったかを客観的に評価する。

Action(改善)

測定・評価結果に基づき、次の育成施策への改善策を講じる。研修内容の見直し、フォローアップの強化、対象層の再検討、あるいは育成課題そのものの再定義など、具体的な改善アクションを計画し、実行する。

こうした一連の取り組みが、研修を「やりっぱなし」にせず、次へとつなげる鍵となります。

研修本来の目的を達成するために

研修は、「自社にとっての課題」を解決するために行うものです。本稿では研修後の取り組みについて紹介しましたが、そもそも研修とは、「自社の課題は何か」「人材育成上の課題は何か」を把握するところから始まり、状況が改善したかをしっかり確認して次につなげてこそ意味があります。本当に研修の成果を出すためには、育成担当者が研修を「一過性のイベント」として捉えるのではなく、継続的な人材育成サイクルの一部として位置づけることが不可欠でだと言えるでしょう。

JMAソリューションでは、各種アセスメントやアンケート設計、専門家による分析など、さまざまなツールやサービスを通じた多角的な人材育成のお手伝いが可能です。例えば、オーダーメイドでの人材育成による課題解決をお考えなら、ぜひ気軽にご相談いただければ幸いです。

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