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「1on1ミーティング」とは何か?どうスキルを上げるのか?

公開日:2023/07/10 更新日:2023/09/13

リモート環境下での上司と部下のコミュニケーションの場面をはじめ、今やすっかり定着した感のある1on1ミーティング。しかし、実施はしているものの今ひとつ効果が見えない、正しい進め方が分からないといった声も根強くあるようです。そこで、1on1ミーティングにはそもそもどんな意義があるのか、効果を上げるにはどうすればよいかといった点について紹介していきます。

1on1ミーティングとは何か

1on1ミーティングとは、「メンバー(部下)を主役として、上司とメンバーが定期的に、自由に目的を設定して行う11の対話」のことです。元々は米国のシリコンバレー企業がマネジメント手法としてスタートしたと言われています。?

一般的には、週1回から月1回ほどの頻度で行い、1回あたりの時間は15分~1時間程度であることが多いようですが、いずれも上司と部下の合意のもとで自由に設定します。

上司と部下の間で行われてきた11の面談といえば、「評価面談」や「目標管理面談」どがあります。これらの面談の目的は、あくまで「評価」「目標管理」「情報伝達」であり、上司が部下を管理する場でした。これに対し1on1ミーティングは、基本的にメンバーと上司は対等に、情報はインタラクティブにやり取りされ、管理が目的である必要はありません。目的は多種多様に設定することができます。(管理を目的とする場合もあります)

重要なポイントは、「あくまで部下が主役である」こと。そのためテーマは何でもよいという場合が多く、部下が仕事を通じて得た体験、悩みの共有等について、上司は基本的に傾聴し、その時々の状況に応じた対応をする必要があります。?

なぜ1on1ミーティングが行われるのか

1on1ミーティングが浸透してきた主な背景には以下のような事情があります。

労働人口の減少と働き方の多様化

労働人口の減少と、終身雇用や年功序列が崩壊しつつある日本では、働き方に対する価値観が多様化し、転職へのハードルが下がっています。こうした状況下で社員の流出を抑えるためにも、上司が社員のことを理解し、個人の働くモチベーションを高めることができる1on1ミーティングが注目されるようになりました。?

リモート環境によるコミュニケーション不足

コロナ禍を経てリモートワークが率が上昇し、全員が出社していた時代と比べると日常的なコミュニケーションが減少傾向にあります。上司が部下の様子を把握し、早い段階で適切なアドバイスを行うためにも、1on1ミーティングが活用される機会が増えてきています。

1on1ミーティングにはどんな効果がある?

1on1ミーティングを導入することによって、上司は部下の成長を個別に支援することができます。具体的には、つぎのような効果が考えられます。?

業務プロセス確認ができる

リモート環境下では、上司が部下の様子を物理的に見守ることができないため、メンバーの業務が現在どのような状況にあるかを把握しづらいという問題があります。定期的な1on1ミーティングを行うことで、こうした業務プロセスの確認がしやすくなります。

評価への納得感が向上する

働きぶりが見えづらいリモート環境下では、上司が部下を評価するのも難しくなります。部下の側にも、自分が正当な評価をされないのではないかという不安が生まれかねません。定期的な1on1ミーティングで仕事内容を把握することで、こうした問題が解決します。

メンバーのエンゲージメントが向上する

上司と部下が定期的にコミュニケーションを取ることによって、お互いの信頼関係の向上が望めます。その結果、部下から見ると、上司だけでなく会社に対しての愛着や思い入れも深まり、エンゲージメントの向上につながります。?

メンバーが中長期的な成長を意識するようになる

今、目の前にある仕事の話題だけでなく、この先のキャリアや能力開発について対話をすることで、部下が自分のキャリアについて中長期的に考えることができます。結果として、部下のキャリア自律が促され、育成面でもプラスの効果が期待できるでしょう。

メンバーの自律性が高まる

1on1ミーティングの中で部下が自ら目標を設定し、行動し、上司からのフィードバックを受けるというサイクルを繰り返し行うことで、「言われたことを行う」のではなく、部下が自律的に行動するようになっていきます。

離職のリスクが低下する

定期的なミーティングを繰り返すことで、上司は部下の変化に気づきやすくなります。また、会話を通じて上司と部下の間に信頼関係が生まれれば、部下が仕事に悩んだときに相談されやすくなり、離職に至る前の段階で解決策を考えることができるようになるでしょう。?

上司も成長する

部下を主役にして語らせるという対話を通じ、上司自身もコミュニケーション力が鍛えられるなど成長が見込めます。

1on1ミーティングを効果的に実施するためのポイント

1on1ミーティングを効果的に実施するためには、ポイントをおさえて実行することが重要です。

導入の目的を整理し、きちんと言語化しておく

1on1ミーティングを導入する目的が不明確なままで進めてしまうと、現場から「導入するメリットが感じられない」「忙しいのに時間を取られたくない」など不満の声が出てきてしまいます。そこで、上司は導入の目的を整理し、言語化し、自分の言葉で部下に伝えることが重要です。

自社にフィットする方法で全社展開を進める

企業にはそれぞれ文化や特徴があるため、他社のやり方を真似ても成果が出るとは限りません。まずは一部の部署などでトライアルするなどして、自社に合うやり方を掴んでから全社展開したほうが浸透しやすいでしょう。

継続的に行う

1on1ミーティングの導入時に、上司も部下もすぐに効果を実感できないかもしれません。実践しながら、上司もやり方を掴んでいくことが必要です。効果が出ないからとすぐにやめてしまうのではなく、継続的に行いましょう。あらかじめ、1on1ミーティングの予定を年単位などで押さえておくとよいでしょう。?

上司のスキルを高める

1on1ミーティングでは、上司は単に話を聞くだけでなく、状況に応じて部下との関わり方を柔軟に変化させる必要があります。気づきを与えるコーチング力だけでなく、ティーチング力やフィードバック力も必要です。上司はこれらのスキルを高めておかなくてはなりません。

上司を対象に、下記のような研修を実施するのも効果的でしょう。

コーチング・スキルトレーニング

https://solution.jma.or.jp/service/training/theme/skill/skill2_8/

相手の自発的行動を促進するコーチングを学びます。自発的行動が起こる環境をつくり、相手から多くのアイデアを引き出し、行動に移すよう導くスキルを身につけます。?

ティーチング・コーチング実践習得

https://solution.jma.or.jp/service/training/theme/ikusei/ikusei01/

部下が未熟な場合は、コーチングの前にティーチング(教えること)のプロセスも必要です。ティーチングとコーチングの使い分けを知り、部下の能力や意欲を強化するティーチング術を学びます。

1on1ミーティング」に学ぶ、効果的な フィードバック実践

https://solution.jma.or.jp/service/training/theme/ikusei/ikusei02/

客観的な視点から助言やサポートを行うフィードバックの技術を学びます。相手の心を開き、信頼関係を作り出すための考え方や伝え方が分かります。

リモートワークにおけるメンバーのモチベーションマネジメント

https://solution.jma.or.jp/motivation-mgmt/

モチベーションが低下しがちなリモート環境下で、メンバーが意欲を保ちやすくするための環境づくりや、1on1ミーティングでモチベーションを引き出す話し方について学びます。

1on1ミーティングでは、どんなことについて話し合うか

部下との対話の時間を有意義にしたいけれど、日々の業務以外にどんなことを話したらいいか分からないという人もいるでしょう。対策として、予めらかじめ、アジェンダを作っておくと効果的です。例としては下記のようテーマが挙げられます。

  • 業務で困っていること
  • より専門性を高める方法
  • 今後のキャリアについて
  • 体調やメンタル面の状態
  • チャレンジしてみたいこと
  • 自社のバリューについて日頃思うこと

よりよい1on1ミーティングのために知っておきたいこと

1on1ミーティングをより有意義なものにするためには、以下のようなことについても知っておくとよいでしょう。

実施前の準備(関係づくりに向けた準備)のしかた

1on1ミーティングでは、対話のために情報シートを準備しておくのが効果的です。「近況についての話」「前回の振り返りとその後の変化」「話したいテーマ」「話したことによる気づき」のように、流れにそって考えます。こうしたシートの作り方など、事前の準備について情報収集をしておきましょう。

相手の価値観の理解

生まれた世代によって、働き方に対する価値観が異なります。例えば、Z世代に対しての理解を深めるなど、相手の価値観について理解するといった準備も有効です。

1on1ミーティングによって期待された効果を得るには、上司と部下のお互いの合意が土台になります。そのためには、まず上司が1on1ミーティングの必要性を自分の言葉で部下に伝えられるかどうかも重要です。上司の心構えは部下にも伝わります。すでに取り組んでいるが効果を実感できていないという場合は、今一度、効果的に実施するためのポイントを見直してはいかがでしょうか

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