やりっぱなしにしない!研修活用術
失敗しない研修計画
誰もが一度は経験あり!? 失敗研修あるある 失敗研修事件簿
念入りにプランを立てて開催しても、いざ当日になってみるといろいろと起こるのが研修。そんな失敗やハプニングをご紹介しつつ、よりよい研修に向けた改善方法を探ります。
今回は、研修の場で実際に起こった衝撃の事件や驚きの発言を集めた「事件簿」です。
モチベーション編
【file.1】事前課題の回答がたったの1行
研修前、参加者に事前に提出をお願いした課題をチェックしていると、多くの人が10行、20行と記入している中で1人だけ、1行しか記入していない人が!しかもその1行の内容は「よくわからなかったので書きませんでした」。いやいやこれは「日ごろの自分について振り返る」という課題だから、わからないはずはないでしょう!このモチベーションの低さでは前途多難と言わざるを得ません。
【file.2】「OJTトレーナーって何ですか?」
日々の業務を通じて後輩に仕事を教える、いわゆるOJTトレーナーを経験することは、若手社員が大きく成長するまたとない機会。そんな大事なOJTトレーナーとして活躍するための研修なのに、参加者のAさんにはなんだかやる気が見られません。さり気なく話しかけてみると「っていうかOJTトレーナーって何ですか?僕、アサインされた記憶なくて」という衝撃の発言が飛び出しました!確かに役職と違って明確に任命するものではないけれど……。
【file.3】「それならもうやってるんですけど」
「心理的安全性のあるチーム作り」は、今どきのマネジメントに重要なテーマの一つ。リーダーやマネージャークラスにとってはきっと有益だと思って開催したけれど、会場のテンションは今ひとつ。そこへ聞こえてきたのが参加者同士のこんな会話。「これって要するに中身はコーチングですよね?それならもうやってるんだけどなあ」。あれ?もしかして「心理的安全性」の意味がきちんと伝わっていないのでしょうか!
【教訓】
- 研修参加者には、事前に役割・期待含め、「なぜ」自分がその研修を受ける必要があるかを認識してもらっておく。
- 研修担当者は、研修参加者の声に耳を傾け、役割や課題感に見合ったテーマで研修を企画する。
難易度編
【file.4】財務研修の悲劇
新規プロジェクトに向けた投資意思決定ができる管理職を育成するため開催した財務研修。対象もある程度の年次以上の管理職ばかりとあって、歯ごたえのあるプログラムを用意しました。ところがいざグループワークが始まってみると、Bさんが議論に全く参加できず固まってしまっています。かと思えば今度は猛然とテキストのページをめくり始めました!どうも基本の用語が頭に入ってないらしく、その都度調べているようです。必死についていこうとする姿勢は立派なのですが、これではBさんも気の毒です。
【file.5】配属前の経歴は…
今日はマーケティング研修の日。初めてマーケティング部門に配属された社員に、体系的に基礎を学んでもらうこの講座は、毎回好評の定番研修の一つです。それなのに今日は、研究開発部門から異動してきたCさんがずっと退屈そう。モチベーションが低いのかな?と気になって休憩時間中に声をかけてみると「実は前の部署でもこういうことやってたんですよね。だって開発にはマーケティングって欠かせないじゃないですか」ですって。素晴らしい姿勢だけど、それ早く言ってよ!
【教訓】
- 事前に研修参加者の現状の知識レベルを把握し、レベル別募集などの工夫を!
- 場合によっては事前インプットの準備も行い、受講者のスタート地点を揃えておく。
- 講師にも受講者の知識レベルを伝え、コンテンツの難易度を調整しておく。
質疑応答編
【file.6】個別に聞きたい悩みなので…
今や誰にとっても他人事ではないハラスメント問題。「何がハラスメントにあたるのか」については多くの人が知りたいはずだから、研修にも質疑応答を時間もたっぷり確保して臨んだのに、なぜか全く手が挙がらず、ちょっと気まずいムードで終了となってしまいました。後日アンケートを確認すると、「個別に聞きたいことはありましたが、デリケートな問題だけに、あの場では質問できなかった」という回答が。そういえば参加者同士の会話もなんだか盛り上がりに欠けていたけれど、そういうことか……!
【file.7】そもそも質問できる雰囲気ではない
講師が「質問はありますか?」と呼び掛けても、質問が一つも出てきません。考えてみればそれもそのはず。研修参加人数は100名程度で、しかもほぼ全員が初対面。気軽に質問ができる雰囲気ではなかったのです。大人数の注目を集めたり、質問の内容によっては回答が長引いたりするのを恐れるためか、みんな黙ってしまっています。きっとみんな聞きたいことはあるはずなのに……こういう場で質問を引き出すためには、仕掛けづくりが必要だと痛感させられます。
【教訓】
- テーマによっては質問の個別受付を検討。
- 参加者が実際に知りたいこと・現場の困りごとを事前にしっかり把握する。
- グループごとで質問事項を考えるワークを設け、全体発表の形で質問してもらう。
関係者すり合わせ編
【file.8】専務!そのお話は今ここでは……!
経営課題の解決手法を学ぶ研修で、役員発表の場を設けることになりました。経営陣に見てもらえるとなれば、参加者のモチベーションも上がるはず!ところが、発表を聞いた専務からは「その解決策には現実味がない」と延々ダメ出しが始まってしまいました。ちょっと待って!参加者には「今回は手法を学ぶのが目的であり、解決策の中身を評価するものではありません」と伝えてあるのに……不要なダメ出しを受けた参加者のモチベーションは上がるどころか急降下。わざわざ時間を調整して専務に出席してもらったのは何のためだったのでしょうか。
【file.9】先生!その熱さ、今は不要です……!
今日は診断ツールを使って一人ひとりの特性を知る研修。メインは「ツールを使ってみる」ことであり、チームのメンバーのキャラクターを客観視するための学習だったはずなのですが、講師の熱血指導がヒートアップし、「頑張っていいチームにしましょうね!」と盛り上がり過ぎて参加者が若干引き気味に。狙いと違う方向に行っても結果オーライならよいのですが、ちょっと気まずい雰囲気になってしまいました。
【教訓】
- 課題感・研修への期待・方向性などを、講師や研修会社と事前にすり合わせを行っておく。
- 社風に合った講師の選定を行う。可能なら研修前に講師と直接会って確かめる!
おわりに
研修を開催する側にとっては「事件」でも、必ず何かの理由があるものです。大切なのは、事前の準備に時間をかけ、参加者の状況を丁寧に把握し、講師や参加者の上司としっかり打ち合わせて臨むこと。ここでの教訓を活かし、よりよい研修につなげていただければ幸いです。
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