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ダイバーシティに効く!CQ(カルチャー・インテリジェンス指数)とは?
IQ、EQなどと同様に、最近注目されているのがCQ(カルチャー・インテリジェンス指数)と言う言葉です。ダイバーシティが推進され、さまざまな背景や価値観を持つ人がともに働く今、働く人それぞれに高いCQが求められるようになってきています。
CQとは何か
CQ(Cultural Intelligence Quotient/カルチャーインテリジェンス指数)は日本語で言うと「文化の知能指数」というような意味を持ちます。IQ(知能指数)やEQ(感情指数、心の知能指数)と同様、知性を表す指数の一種として使用される言葉です。具体的には、文化の違いを超えてコミュニケーションを図る能力を表します。
ここでいう文化とは、国や地域ごとに形成される文化のみではなく、個人の価値観、働き方、組織文化など、より広義な文化が含まれます。
2000年代初頭にChristopher Earley とSoon Angが初めてCQという言葉を使用し、「さまざまな文化的なコンテキストにおいて、効果的に機能する能力」と定義しました。さらに2015年にはカルチャー・インテリジェンスの長年の研究者であるDavid Livermore が、『Leading with Cultural Intelligence』という著書を発表したことでも、CQの概念が話題になりました。
海外のある調査では、68カ国のトップエグゼクティブの9割が「CQは21世紀のリーダーシップには不可欠な要素」と答えています。今後、企業のダイバーシティが拡大していく中でも、リーダーを中心に高いCQが必要になってくると考えられます。
IQ、EQ、CQとの関係性
CQをEQ、IQと比較しながらその意味を捉えてみましょう。
IQ(Intelligence Quotient/知能指数)は、知能テストによって測定され、数値で表されます。これに対し、CQはチェックテストなどで確認はできますが、IQのように数値で表されるものではありません。またIQは基本的伸びるものではありませんが、CQはコミュニケーション能力のようなソフトスキルと同様に、鍛えて伸ばしていくことができます。
EQ(Emotional Quotient/感情指数、心の知能指数)は、自分や他者の感情を認識し、良好な対人関係を築く能力を表します。一見するとCQと似ていますが、自国内や組織内で活用することはできても、他国や別の組織など、文化の異なる相手への理解が足りないと活かせないこともあります。EQとCQを組み合わせることで幅広い文化に適応できるようになるといえます。
なぜCQが重要か
「異文化」というと国や地域による文化の違いが連想されがちなため、CQはグローバルな環境でのみ必要な能力だと捉えられるかもしれません。しかし冒頭でもお伝えしたように、CQが対象とする「文化」には「属する組織」「コミュニティ」「性別」「年代」など、さまざまな属性ごとの「文化」が含まれるため、CQを意識すべきはグローバルな組織に限りません。
企業の場合、「文化の違い」よる失敗が起こりやすい場面が、企業統合やM&Aです。統合失敗の原因としては「従業員間の対立や衝突」が多くを占めるとされ、異なる文化を持った従業員の間で対立が生まれやすいことがわかります。対立を抑え、互いに認め合いながら働ける環境にするためには、組織のリーダーに高いCQが必要とされるのです。
リーダーのCQが高ければメンバーの文化的背景を理解でき、それぞれの本質を見抜いて個々に適切なマネジメントができます。メンバーそれぞれのユニークなバックグラウンドを、組織にとっての貴重な資産の一部と捉え、個人の特性を活かしつつスキルを伸ばしていくこともできるでしょう。
CQの高い人物は新しい環境への適応力が高いという研究結果もあり、リーダーのみならず、一人ひとりのメンバーそれぞれもCQを高めていく必要があるともいえます。互いを理解したコミュニケーションが取れるようになることで、組織力も強化されるはずです。
またDavid Livermoreは、CQは人事部のリーダーにも欠かせない能力だと述べています。必要なポジションに合う人材を組織内外から見つけるため、また、従業員にキャリアプランの提案をする場面や、研修を提供する場面でも、高いCQがあることで適切なプランを提示できるのです。
CQの4要素と伸ばし方
David Livermoreは、CQを次の4つの要素に分け、それぞれを伸ばしていくことができるとしています。その4つの要素と、伸ばし方を見てみましょう。
CQ意欲:異文化を受容しようとする意欲
異文化間の問題に興味を持ち、受け入れようとする気持ちのことです。異文化との接触で生まれるストレスや恐れを克服するための第一歩ともいえます。
伸ばし方
- 日頃から文化の異なる人と対話することで、異文化への興味を高める
- 同じように新しい環境に踏み込んだ人がいれば、会話し自らの気持ちを高めていく など
CQ知識:文化間の相違性や類似性への理解
文化の違いは「規範」「制度」「教育」「政治」など目に見えるもの、「考え方」「信念」「価値観」など目に見えないものがあります。そうしたものへの理解がCQ知識です。
伸ばし方
- 相手の文化における制度、教育法などについて調べる
- 相手と対話して、相手が好むコミュニケーションの取り方や価値観を知る など
CQ戦略:文化の違いを調整するための戦略
異文化交流の際に起こる認識のずれなどに対しどのような行動を取るか、戦略をたてる力のことです。
伸ばし方
- 異文化を持つ仕事のパートナーに意見を聞いてみる
- CQ知識をもとに異文化間でのトラブルを想定して解決策を考えてみる など
CQ行動:異なる文化に対して取る適切な行動
意欲、知識、戦略をもとに行動に移すことです。仕事の場面では、場合によって、相手に合わせるべきかどうかという判断力も必要です。
伸ばし方
- 適切な言葉やジェスチャーを選ぶ
- 異文化間で双方にとってメリットになるポイントを日頃から考える など
CQの高い人を育てることは企業にとって重要なことです。日常の訓練や研修で誰しもが伸ばせる知性なので、ダイバーシティ施策の一つとして取り組んでみるのもよいかもしれません。