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シニア社員を活かすエイジダイバーシティ
労働者の高齢化によって、全従業員に占めるシニア社員の割合が今後も増えることが予想されます。今後、企業が存続・成長していくためにはシニア社員をどう活かしていくかが鍵となるとも言えるでしょう。ここでは、シニア社員の活躍につながる「エイジダイバーシティ」の考え方を紹介します。
エイジダイバーシティとは
エイジダイバーシティとは多様性を意味するダイバーシティに「エイジ」がついたもので、「年齢や世代の多様性」を意味します。本来はシニア社員に限らず、若手、その他のあらゆる世代について言う言葉です。
エイジダイバーシティにはさまざまな意義がありますが、人口減少により、採用に課題を抱える企業が増えている今、注目が集まっているのがシニア社員の活用です。そんな背景もあり、「エイジダイバーシティ推進」という言葉は概ね、「シニア社員の活性化」というニュアンスで使われているケースが多いようです。
シニア社員が持つ可能性の例
企業がシニア社員に期待しているのは、シニア社員の経験を背景とした能力と、世代間のシナジー効果です。具体的に以下のような項目が期待されています。
専門性の発揮
シニア社員は若手社員にはない専門性を持っています。その専門性は、クライアントへの継続な関係づくりという意味でも見逃せません。
ノウハウの継承
希少性の高い知見やノウハウを若手社員に継承することは企業の存続にとって重要なことです。それができるのは積み重ねた知見やノウハウを持つシニア社員ならではです。
マネジメントのブレーンとして活躍
マネジメントに関する経験や優れた能力を持つシニア社員は、役職定年などの後にも、経験の浅い管理職のブレーン役として活躍することができます。また大組織においては、一部機能のマネジメントを代行する形での活躍も考えられます。
OJT担当者として活躍
豊富な経験を活かし、OJT担当者として後進に仕事を教えることができます。
シニア社員側のよくある課題
こうしたメリットは分かっていても、なかなか進まないのがシニア社員の活性化。原因の1つに、シニア社員側の意欲を低下させかねない状況が考えられます。
モチベーションの低下
もともと意欲のある人も役職定年を境にモチベーションが低下することがあります。多くの場合、給与の減少や担当業務の縮小による喪失感が原因です。テクノロジーの進化などで自身のスキルが通用しなくなり、意欲が失せることもあります。
スキルとポジションのアンマッチ
たとえば、再雇用により業務の役割や内容自体が変わることで、本来持っている強みを活かせないこともあります。自分が持っている強みやノウハウを発揮できないもどかしさは、就業意欲を低下させます。
シニアをマネジメントする側のよくある課題
シニアの活躍できない原因が、シニア社員をマネジメントする側にある場合も考えられます。
シニア社員のケアに手が回らない
とくにプレイングマネージャーの場合、日々の業務や若手指導のマネジメントだけで忙しくシニア社員のケアまで手の回らないケースがあります。
部下だが歳上なので接しにくい
マネジメント側よりも部下が歳上であるがために「シニア社員を怒らせると面倒だ」「かつては自分の上司だったため指導しにくい」「シニア社員は上から目線で指示してくるので近寄りたくない」など、マネージャー側がやりづらさを感じていることがあります。
シニア社員に対してネガティブなイメージがある
マネジメント側がシニア社員に対して「シニア社員はやる気がない」「第一線から退いているので任せる仕事がない」「パフォーマンスが低くまわりに悪い影響を与える」などと、ネガティブなイメージを持っているために活性化が進まない場合もあります。
シニア社員を活かすための施策
シニア社員の活性化に向けて、シニア社員側、マネジメント側、それぞれにできることを考えてみましょう。
シニア社員側への施策
報酬体系や評価制度の変更
モチベーション低下の原因となるのが報酬の減少。より成果が反映されるような報酬体系や評価制度の適正化は、シニア社員の活性化にも役立ちます。
労働環境の整備
高齢になると自身の体力の低下や親の介護などと、置かれる環境にも変化が生まれます。時短勤務制度、在宅勤務制度など、シニア社員を取り巻く環境に合わせた柔軟な働き方を選択できる制度を整えることで、パフォーマンスを発揮しやすくなるでしょう。
副業制度の導入
シニア社員のこれまでの活躍を社会で活かしてもらうよう、自社以外での副業を認めるのも効果的です。経験やスキルを社会に還元することがモチベーションにつながる、減ってしまった給与の補填となるなどのメリットもあります。
リスキリング支援
新しい職務に移行するためには、リスキリングも必要です。企業がシニア社員のリスキリングを支援することで、必要なスキルや知識の習得への意識が高まります。
マインド開発の機会を提供
権限や裁量の範囲が狭くなったとしても、今までのキャリアの強みやスキルなどを棚卸しし、今後のキャリアをどう形成していくかを考える機会を提供することで、前向きな変化が期待できます。
【関連URL】研修プログラム:50歳からのセルフコーチング
マネジメント側への施策
マネジメント力の向上
歳下上司であるマネージャーが「歳上の部下との接し方」「良い関係性の構築の仕方」などを身につけることで、シニア社員のモチベーションが高まります。
エイジダイバーシティの考え方を持つ
シニア社員に敬意を払うことは重要ですが、ほとんど関与しない状態だとマネージャーの役割を果たしているとはいえません。「世代は個性の1つである」と、マネージャー自身がエイジダイバーシティの考え方を持つことが必要です。
周囲からの期待・役割を伝える
マネージャーにはシニア社員の自己肯定感をあげる働きかけも効果的。シニア社員に仕事を任せる際に「周囲からの期待・役割」を伝えるなど、積極的に関わる姿勢も重要といえます。また定期的に業務の振り返りなども行い、自発的な目標設定を促す機会を提供するとよいでしょう。
シニア社員が活躍していくには、企業、シニア社員自身、マネジメント側のそれぞれの協力が不可欠です。そのためにはシニアダイバーシティの考え方を軸とした良い関係作りや、シニア社員の労働環境整備といった取り組みを進めて行く必要があると言えそうです。