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戦略的学習力とは?「学ぶ力」の高め方
リスキリングやリカレント教育などの言葉に代表されるように、今や社会人の学びは大きな課題と認識されています。そんな中でビジネスパーソンに必要なスキルとして注目されているのが「戦略的学習力」。こうした力がなぜ必要とされるのか、企業としてどうサポートできるのかといった点を解説します。
戦略的学習力とは何か
戦略的学習力とは、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授によって提唱された概念で、2017年のレポート「The future of skills employment in 2030」の中で、「2030年の雇用に求められるスキル・知識」の1位に挙げられた力です。「新しいことを学ぶ際に、自分にとって最適な学習内容や方法を選択し、知識やスキルを身につける力」というのがその定義。ごく簡単に言えば「学ぶ力」のことだと言ってよいでしょう。ちなみにオズボーン教授は、「2050年までに今ある職業の47%がAIによって失われる」と論じた人物でもあります。
なぜ戦略的学習力が必要か
では、なぜ今戦略的学習力が必要とされるのでしょうか。
正解のない課題が増えている
技術発展のスピードが加速し、変化が激しく不確実性の高い現代のビジネス環境においては、正解のない課題が増えています。こうした状況の下では、過去に成功したやり方やパターンは陳腐化し通用しいため、その都度仮説を設定し、その問題を解決する方法を学ばなければなりません。「環境変化に合わせた新しい能力」を身につけるために戦略的学習力が必要というわけです。
働く期間が長くなっている
少子高齢化、年金の支給額の低下や支給開始年齢の引き上げなどの変更によって、私たちの働く期間が長くなっています。働く期間が長くなれば、一度身に付けたスキルや知識だけではついていけなくなり、継続的に、素早く学ぶ力が必要になります
AIに置き換えにくい力である
AIに置き換わる仕事や自動化される仕事は今後も増えていくでしょう。しかし、AIで代替することが難しいとされているスキルもあります。代表的なものがコミュニケーション能力や協調性などのソフトスキルですが、戦略的学習力はもこうしたソフトスキルの一種とされています。
戦略的学習力の身につけ方
戦略的学習力を身につけるには、次のようなステップが有効だと言われています。
(1)知識をインプットする
新しい能力やスキルを身につけるためには、まずは必要となる知識をインプットしていきます。
(2)学んだことを実践する
学んだことをアウトプットし実践していくことで、理解が深まり、定着します。さらに学んだ知識を同僚に教えるなどすることで、使えるスキルになっているかを確認ができるでしょう。
(3)他者からフィードバックを受け、振り返る
アウトプットに対し、他者からフィードバックを受けることも重要です。そうすることで「スキルがうまく発揮されているか」「業務の中でどのように活かせばいいのか」など自分では気づくことができないポイントを知ることができます。他者からのフィードバックが自分の考え方を振り返るきっかけとなり、実践の精度向上につながるでしょう。
続いて、戦略的学習力を効率よく身につけるポイントも知っておきましょう。
学習目的を明確にする
戦略的学習力を身につけるには、「何を学ぶか見極める力」が大切です。学びたいスキルが将来も役立つスキルなのか、今あるスキルを活かせるものなのかなども洗い出し、学習目的を明確にするとよいでしょう。
メタ認知的知識をつける
自分に合った学習方法の検討も重要なポイントです。「記憶に定着する方法」「自分のレベルに合った内容の選定」「自分の強み、弱みの把握」など、自分を客観的に見る「メタ認知的知識」が必要です。
周囲のサポートを受ける
1人で学習すると、計画通りに学習が進まないといったつまずきが発生しやすいため、上司やチームなどの周囲のサポートを受けると効果的です。チームメンバーと一緒に取り組むと習慣化しやすく、周囲が程よい監視役として機能するため、より効果的に取り組めるでしょう。
従業員の戦略的学習力を高めるために企業ができる支援
企業の成長には従業員の進化が不可欠です。従業員が成長するための支援の一つとして戦略的学習力を高める支援を行うのもよいでしょう。以下のような点がポイントになります。
従業員が学ぶ企業風土を作る
従業員の戦略的学習力を高めるためには、企業全体として戦略的学習がもたらすメリットや効果を理解することが重要です。企業の理解が、気軽に学習する風土を作り、従業員の学ぶ姿勢を養うでしょう。
定期的な振り返りを実施する
戦略的学習力を高めるには、インプットとアウトプット、振り返りをセットにするのが効果的です。企業としても、戦略的学習に取り組む従業員に対し、定期的な振り返りを実施するとよいでしょう。グループで実践する際には、同じフォーマットで一緒に行うと効果的です。
従業員に学習機会を提供する
独学で戦略的学習力を学ぶ方法もありますが、適切な学び方を選択できないと、学習に時間を要することもあります。企業が従業員のために学習コースを準備したり、研修などの機会を提供することがサポートになります。
変化の激しいビジネス環境において企業が成長し続けるには、自社の強みと未来の社会に求められるスキルを見極める力が必要です。そのためにも、従業員の「戦略的学習力」を高め、変化に対応できる人材を強化することが必要なのです。