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公開日 : 更新日 : リモートワークの功罪と、課題解決のために必要なこと

コロナ禍をきっかけに広がったリモートワークは、ある程度定着してきた半面、一部では縮小の動きも見られます。そんな今だからこそ、改めてリモートワークの利点と課題を整理し、自社に合った働き方を模索してみませんか?

最新のリモートワーク実施状況は?

国土交通省は2025年3月に「テレワーク人口実態調査」結果を発表。これによると、令和6年度(2024年度)の雇用型テレワーカー(※)の割合は24.6%(首都圏では37.5%)と、ピークだった令和3年度(2021年度)に27.7%(首都圏では42.3%)だったのと比較すると減少してきてはいるものの、昨年度からの減少幅は0.2ポイントと下げ止まり傾向にあり、コロナ前と比較すると依然として高い水準にあります。

※雇用型テレワーカー:雇用型就業者のうち、これまでテレワークをしたことがある人

また、「今後もテレワークをしたい」と考えている雇用型テレワーカーの多くが、現状より高い頻度でのテレワークを希望。しかしその7割以上は、週1回以上の出勤と組み合わせたハイブリッドワークを希望していることも分かっています。さらに、テレワークを実施している人は生活(家事、育児、介護等)や趣味に費やす時間が増えているという傾向も出ています。

令和6年度「テレワーク人口実態調査」(国土交通省)>>

ちなみに令和5年度(2023年度)の調査では、「勤務先が出勤を指示・推奨した場合の行動」についての設問もあり、若い年代ほど「勤務先の方針に従い、出勤」する割合が低く、「テレワーク可能な働き方ができるよう勤務先と交渉」または「転職又は独立起業を検討」するなど、よりリモートワーク志向が高い傾向が見られました。

令和5年度「テレワーク人口実態調査」(国土交通省)>>

企業にとってのリモートワークのメリット・デメリット

ある程度定着してきた感のあるリモートワークですが、一方で、国交省の調査からも見て取れるように、コロナ禍で導入したリモートワークを廃止する企業も出てきています。その受け止め方は企業によって、また人によってもさまざまです。継続するのか、廃止、あるいは縮小するのかも、それぞれの事情によって検討する必要があります。

自社にとってどのような形がよいのかを考えるために、まずは、一般によく言われているリモートワークのメリット、デメリットを整理してみましょう。

リモートワークのメリット

オフィスコストの削減

出勤する従業員が減ることで、光熱費、備品、賃料などのオフィス維持費が削減される。完全リモート化すれば大幅な固定費の見直しが可能になる。

人材確保の幅が広がる

地理的な制限がなくなるため、地方や海外など、より広いエリアから優秀な人材を採用できる。育児や介護などの事情を抱える人も働きやすい。

従業員満足度・定着率の向上

通勤時間の削減やワークライフバランスの向上により、従業員の満足度が高まり、離職率の低下が期待できる。採用時に有利になる可能性も。

BCPの強化

出社できない事態が発生しても業務を継続できる体制が整うため、災害時などに業務が継続しやすい。

環境負荷の軽減

通勤やオフィス利用が減ることで、CO2削減などの環境負荷低減にもつながり、サステナビリティ推進という意味でも有効。

その他、リモートワークを推進のために業務のデジタル化・効率化が進んだり、勤務時間ではなく成果で評価するアウトプット重視のマネジメントが定着することも期待できます。

リモートワークのデメリット

コミュニケーションの低下

ちょっとした雑談の機会が減ることに加えて非言語的な情報(表情・雰囲気など)が得にくく、情報共有の質が下がることがあります。結果として、新しいアイデアやプロジェクトなど、イノベーションが起こりづらいという指摘もあります。

マネジメント、評価の難易度が上がる

メンバーの様子が見えにくいため、マネージャーは適切な評価やサポートをしにくいと感じる可能性がある。

労務管理が難しい

労働時間の把握がしづらく、健康管理、安全衛生面などのケアが難しくなる。結果としてコンプライアンス問題につながる恐れもある。

セキュリティリスクの増加

個人のネットワーク環境や端末のセキュリティレベルによって、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクが高まる。

一体感の低下

物理的な距離により、企業理念や文化の浸透がしづらく、従業員のエンゲージメントや帰属意識が低下する場合がある。

新入社員・若手の育成が難しい

OJTやちょっとした指導がしづらく、若手社員がスキル習得や成長の機会を得づらいと感じかねない。

リモートワークのデメリットをカバーするには?

リモートワークのデメリットは、仕組みの整備やマネジメントの仕方がカバーすることもできます。それぞれの課題について、どのような方法でカバーできるかを考えてみました。

コミュニケーションの低下

  • 定期的なオンラインミーティングの実施
  • チャットツールを導入し、何でも発言してよい雑談用チャンネルを設置する
  • ミーティング時にはカメラONを推奨し、表情などの非言語的な情報を共有する

マネジメント、評価が難しい

  • 成果ベースの評価制度を導入する(MBO、OKRなど)
  • プロジェクト管理ツールを活用する
  • 1on1面談を定期的に実施する

<参考記事>

研修:パフォーマンスマネジメント入門>>

研修:リモートワークにおけるメンバーのモチベーションマネジメント>>

研修:「1on1ミーティング」に学ぶ、効果的な フィードバック実践>>

労務管理が難しい

  • 勤怠管理ツールの導入
  • リモート勤務用の就業規則やガイドラインの整備
  • 健康診断やメンタルヘルス対策の定期的な実施

<参考記事>

研修:ニューノーマルを健やかに生き抜くための「メンタルヘルス」研修>>

セキュリティリスクの増加

  • VPNやゼロトラストセキュリティの導入
  • 業務用PCやモバイルデバイスの貸与とMDM(Mobile Device Management)管理
  • 定期的なセキュリティ教育・トレーニングの実施

一体感の低下

  • 経営層からの定期的なメッセージ発信
  • 社内報、社内SNSでの情報発信

新入社員・若手の育成が難しい

  • メンター制度を取り入れて行うオンラインOJT
  • 新入社員向けに「リモートでの相談のしやすさ」を意識した文化の醸成

<参考記事>

コラム:リモートワーク下でのOJT、成功のポイントは?>>

 

リモートワークには、組織の力を落としかねない大きな課題もあります。とはいえ、単純にリモートワークを廃止することは、リモートワークの持つ大きなメリットを失うことにもなります。自社にとっては何が課題なのかをしっかり洗い出し、それを補う施策も含めて、あるべき姿を探っていくべきだと言えるでしょう。