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ダイバーシティを推進するインクルーシブ・リーダーシップとは?
「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)という言葉を耳にする機会はかなり増えました。昨今では、組織でD&Iを実現するための働きかけとして「インクルーシブ・リーダーシップ」を導入する企業も出てきています。ダイバーシティを推進するインクルーシブ・リーダーシップについて解説します。
ダイバーシティ、インクルージョンとは?
ダイバーシティとは、性別や年齢、国籍の違いなど「目に見える外見的な違い」と、能力、経験、考え方など「目に見えない内面的な違い」を含む人の多様性のことを指します。インクルージョンは、それぞれのあらゆる違いを持ったメンバーが、組織の中で認められ、自分が受容されていると感じる状態のことです。
この2つの言葉を組み合わせた「ダイバーシティ&インクルージョン」は、組織にいる多様な人材が組織に属し、自分の居場所を見つけて自分らしさを発揮できている状態にあることを意味します。
最近は、ここに「公平性」という意味の「エクイティ」が加わり、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの略でDEIという表現もあります。DEIを目指す企業は、不利な状況にある人に対しても、活躍できるリソースや機会を積極的に提供している企業といえるでしょう。
なぜ「インクルージョン」が必要なのか
不確実性の高い環境下において、企業の競争力を高めるためには、多様性ある人材の「個々の強み」が必要だとされていますが、活かされていなければ意味がありません。ダイバーシティの効果は、インクルージョンがあってはじめて発揮されるといえます。
インクルージョンが実現している状態には、以下の4つの要素が含まれています。
尊重:メンバーは、所属する集団の中で自分らしさを大切にでき、周囲から尊重されていると感じている
つながり:メンバーは、同僚との共通点を感じ、組織への帰属意識を持っている
貢献:メンバーは所属する集団の中で、自分の才能と活力が目標達成に役立っていると感じている
機会:メンバーは所属する集団の中に、キャリアアップや成長の機会があると感じている
インクルーシブな職場に近づけていくには、メンバーがこの4つの要素を実感することがポイントとなります。
インクルージョンを実現するために有効な「インクルーシブ・リーダーシップ」
こうした状態を実現するには、組織のリーダーが多様な人材の強みを活かしてチーム力を高める必要があります。そのための働きかけとして「インクルーシブ・リーダーシップ」が有効です。
インクルーシブ・リーダーシップは、強いカリスマ性を持ってトップダウン型で指示を出すリーダーシップとは異なります。メンバーと対等な立場でメンバーの可能性を引き出し、組織力を向上させるのが特徴です。
また、いわゆる「支援型リーダーシップ」では、リーダーはメンバー個々の主体性・可能性を引き出すことを主としますが、メンバー個々の主体性に加え、メンバー同士の関わり合いや組織力の向上にも注力するのがインクルーシブ・リーダーシップといえます。
インクルーシブ・リーダーに求められる3つの行動
職場でのインクルージョンを実現するために、インクルーシブ・リーダーに求められる3つの行動について解説します。
1.個の把握と尊重
メンバーの特性や状況を理解するためにリーダー自らが「能動的に」に働きかけ、メンバーが「こだわり・やりがい」を持って仕事で発揮してもらえるように導くのがリーダーの役目です。多様な人材が安心して自己開示できる状態にするのもリーダーの役目で、メンバー同士が異なる意見や視点を歓迎し、尊重する組織をつくり上げていきます。
2.自律型人材の育成
メンバーに主体性や成長を感じながら働いてもらうため、自分の意志で考え、行動し、解決ができる「自律型人材」を育てることが必要です。組織の共通目標に対する個々の役割認識を明確にし、リーダーはメンバーに権限委譲しつつ伴走する形で育成していきます。
3.一体感の醸成
メンバー全員と積極的に情報共有を行い、今まで以上に目標や目的を言語化・明確化することが必要です。リーダーはメンバーをつなぐハブ役となり、メンバー間の心理的な壁を壊していくことで、組織としての一体感を醸成します。
ビジネス環境の激しい変化の中で、企業が継続的に競争力を高めるためには「ダイバーシティ&インクルージョン」の取り組みは欠かせないものになっています。インクルージョン実現に向けて、リーダーについても「インクルーシブ・リーダー」育成を意識してみてはいかがでしょうか。
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