5分でわかるビジネストレンドワード
リモートワーク環境でも起こる!
「リモートハラスメント」を防ぐには
近年、職場で発生するパワハラやセクハラといったハラスメントが社会問題化し、雇用管理上の対策措置が企業の喫緊の課題となっています。
そして今、リモートワークが急速に社会に浸透していくのに伴い、ハラスメントは職場内だけでなくリモートワーク環境でも発生する問題となっていることから、「リモートハラスメント」への対策が注目されています。企業として備えておきたい「リモートハラスメント」の防止法、対処法についてお伝えします。
「パワハラ防止法」の成立でますます重視されるハラスメント問題
パワーハラスメントの防止を企業に義務付ける法律「改正労働施策総合推進法」、いわゆる「パワハラ防止法」は、まずは大企業を対象として2020年6月から施行されました。パワハラの基準を法律で定め、具体的な防止措置を企業に義務化するというものです。中小企業でも2022年4月からの施行は決まっていて、ハラスメントに対する企業の対応は一層重要になっています。
「パワハラ防止法」の中では、職場におけるパワハラの内容や種類について、以下のように定義されています
パワハラの定義
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
6種類のパワハラ
- 身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
- 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
- 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
- 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
- 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
パワハラの具体例としては以下のようなことが挙げられます。
- 人格を否定するような言動をする
- 集団で無視して、職場内で孤立させる
- 業務と関係ない私的な雑用などを強制する
- 気に入らない人に、故意に仕事を与えない
- 職場以外での行動を継続的に監視する など
ハラスメントには上記のパワハラの他、セクハラ・マタハラ・パタハラなどと呼ばれるものもあり、数多くの種類があります。その中でも、現在コロナ禍によりリモートワークが広がる中で、新しいハラスメントである“リモートハラスメント”が問題となっています。リモートハラスメントとは、在宅勤務中、リモートワーク環境において起こるハラスメント行為のことです。
なぜ、リモートワーク環境でもハラスメントが起こるのか?
パワハラ防止法が施行され、管理職のハラスメントに対する意識が一層高まっているにもかかわらず、なぜリモートハラスメントが起こるのでしょうか。
原因の1つには、リモートワーク環境では仕事とプライベートの境界認識が曖昧になることが挙げられます。これまで知りえなかった相手のプライベートな側面が見えることで相手に対する心理的距離感に変化が起こり、感情や言動の正しい抑制や判断ができなくなるのです。
もう1つの原因として、職場メンバーの業務状況が把握できないことによる管理職のストレスも挙げられます。管理職がマネジメントを行う際に、メンバーが今なにをしているのかを把握できず不信感が溜まり、そのストレスが原因となって過干渉や度を超えたマイクロマネジメントをしてしまうことが考えられます。これがイラ立ちを伴って表層化してしまうと、ハラスメントにつながる可能性があります。
これもハラスメント!リモートだからこそやってしまいがちなこと
ハラスメントになるかどうかは受け取る側の捉え方に左右されます。受け取る側が不快に感じたり、嫌な気持ちになったりしたらそれはハラスメントです。何気ない悪意、悪気のない発言や行動がハラスメントになることもあります。誰もが被害者・加害者になる可能性があるため、リモートの場合においても、どのようなことがハラスメントにあたるのか知っておきましょう。
リモートハラスメントの具体例
- 容姿・服装・部屋の模様に対しての言及
- 部屋の中や全身をカメラで写すことを求める
- 業務に関係ないオンラインでのコミュニケーション
- 必要以上のオンライン飲み会の強要、拘束
- 業務時間中は常にカメラをオンにすることを求める
ついついやってしまいがちなこともあるのではないでしょうか?リモートワークでは業務上のやり取りが円滑に進まないこともあり、部下の管理がうまくいかないという焦りから過度なコミュニケーションに繋がってしまうこともあります。リモート環境において、他人との距離感の取り方のバランスが難しくなった今、管理職、企業側に対して、一層のハラスメントに対する対策が求められています。
リモートハラスメントを発生させないために
リモートハラスメントを発生させないために、まずは被害者・加害者どちらにもならないよう双方の心構えを知っておきましょう。リモートワークの中で起こる不安、ストレスがリモートハラスメントの原因となりかねないため、少しでも自ら不安を取り除くことが必要です。
被害者にならないために
- 服装や身だしなみを整える
- カメラに映る背景にプライベート感を出さない
- 相手の不安を取り除くために、迅速な反応・報告を心がける
※共通点は、「相手からの指摘を減らす」ということです。
加害者にならないために
- 相手のプライベートに触れない
- ハラスメントの判断基準を理解し、自らの発言、行動に気をつける
※上記のような点について、企業から社員に対して意識付けることも有効です。
リモートハラスメントが起こってしまった場合の対処法
人事担当者は、リモートハラスメントが起きないよう、リモートハラスメントにあたるかどうかの判断基準と考え方を社内に共有することから始めましょう。とは言え、防止策を立ててもハラスメントが起こってしまうことはあります。その場合の対処法として、下記2点を備えておくべきです。
- 相談窓口の設置
- 適切な対応フローの作成(事実確認、証拠集め→注意・指導→処分)
テレワークが進む中では、リモート環境特有のハラスメントが起こるリスクがあります。今後も新しい働き方定着していく中で、リモートワークをすでに導入している企業も、これから導入を検討している企業も「リモートハラスメント」への備えを始めてみてはいかがでしょうか。