今どき研修テーマ&メソッド図鑑
ロールプレイ学習とは何か?代表的なタイプと進め方
仕事の場面で起こるであろうことを想定して行われるロールプレイ学習は、部下育成のためのコーチング技術や営業・接客の技術を学んだり、個人の課題を明確にしたりとさまざまな研修の中で活用されています。そんなロールプレイ学習のメリットや、効果を高めるためのポイントをお伝えします。
ロールプレイ学習とは何か
ロールプレイはロール(role)「役割」とプレイ(play)「演じる」を組み合わせた言葉です。営業や接客業の方は馴染み深い言葉だと思いますが、「ロープレ」とも呼ばれています。実際の現場や場面を想定して、そこに出てくる登場人物の役割を演じ、擬似体験の中でスキルを身につけ、高める学習方法です。また、自らの対応や発言を通して、傾向や課題を明確にし、改善につなげることができます。
ロールプレイ学習の代表的なタイプと進め方
ロールプレイ学習にもいくつかのタイプがあり、進め方も多様です。ここではその代表的なものをご紹介しましょう。
ロールプレイ学習のタイプ
ケース型ロールプレイング
最もよく活用される型で、あらかじめ「部下との目標面談」や「最終プレゼン」のように特定の場面を想定して行います。相手の年齢・役職・性格などの条件まで決めて行う場合もあります。
リアル型(問題解決型)ロールプレイング
実際に起きていることや過去に起きた問題をテーマにして行います。スキル習得だけでなく、問題が起きた際に現場でそのまま役立てることもできます。どのように対応したかを協議し「ケーススタディ」として研修で活用することもできます。
ロールプレイ学習の進め方
グループロールプレイング
グループごとに分かれて行います。それぞれが違う役割を演じ、役割を変えながら繰り返し実施します。誰もが主体的に参加でき、それぞれの立場に立つことができるため、考え方の視野が広がります。
受講人数が多い研修では1対1、1対2と少ないグループを作り、全員が同時に実施することもあります。全員が実際に体験できることがメリットです。ケース型やリアル型ロールプレイングにもグループロールプレイングを活用できます。
モデリング型ロールプレイング
代表者が前に出て、ロールプレイングを行います。見ている人にイメージを共有したり、全員を同じスタンスに立たせたい時に使用される手法です。個別のロールプレイングを行う前に見本のような意味合いで行うこともあります。
ロールプレイ学習が効果を発揮する代表的な研修テーマ
ロールプレイ学習が取り入れられることの多い研修テーマには以下のようなものがあります。
営業研修
営業役と顧客役に分かれ、商談の現場を実演する形で行います。実際の場面を再現することで、顧客から課題を引き出すヒアリング方法や、ネガティブな反応への対応などを経験的に身につけることができます。特に、経験が浅い若手のスキル向上に有効で、多くの企業で導入されています。
コミュニケーション研修
伝えたいことを誤解なく伝える、相手の本心を聞き出す、褒める、叱るなどのスキルは、知識として知っているだけでは身につきにくいため、ロールプレイ学習が効果的です。リモート勤務が増えた今、特に部下との面談に課題を感じている上司向けに実施されるケースも増えています。
新入社員ビジネスマナー研修
新入社員が、電話応対や接客などの基本的なビジネスマナーについて、学んだことを定着させるためにもロールプレイ学習は有効です。何度も反復し、現場で使えるレベルまで落とし込みます。知識のアウトプットの場にもなるため、業務への理解が進むという効果もあります。
どんな効果があるか?ロールプレイ学習のメリット
ロールプレイのメリットには以下のような点があります。
限られた時間の中で効率的に学ぶことができる
OJTにより現場でスキルを習得することもできますが、必ずしも体験したいことや問題が起こるわけではありません。ロールプレイは目的に応じて意図的に場面を設定することができるため、限られた時間の中で効率的にスキルを習得できます。
アウトプットすることで学習効果が向上する
人から話を聞いたり、本を読んだりして知識や理論をインプットしているだけでは身につきません。ロールプレイを通じてアウトプットすることで、学習効果が向上します。
フィードバックを受けることができる
実際に人前で演じてみることで、まわりのさまざまな役割の方からのフィードバックを受けることができます。悪い点だけではなく、自分では気づくことができなかった良い点なども教えてもらうことができます。これにより、個人ごとの課題が具体的に見えてきます。
特定の場面に慣れ、メンタルを鍛えることができる
初対面の人と話すことや、経験の少ない場面に対して緊張する方もいるでしょう。ロールプレイで伝え方を訓練し、慣れておくことでメンタルも鍛えられます。
自分のスキルアップだけではなく他者理解の効果もある
ロールプレイは、一人ではなく複数人で行います。自分のスキル向上だけでなく、他者の対応や話し方を知ることで、相手の考え方など他者を理解することもできます。外部への対応の強化だけでなく、社内・チームの中での関係性の強化にも役立てることもできるのです。
成功している人のノウハウや手法を学ぶことができる
実績を上げている人のロールプレイの中でトークや振る舞いを見ることで、自分との違いや成功している手法を学ぶことができます。
ロールプレイを進める際のポイント
ロールプレイを効果的なものにするためには次のようなポイントが考えられます。動画として記録しておくと、身振り・手振り・話し方などを振り返りながらフィードバックをすることができるでしょう。
役割を明確にする
同期同士など馴れ合いの状態で行ってしまうと効果が薄れる可能性があります。営業役・顧客役・オブザーバーなど役割を明確にして進めるとよいでしょう。見られているから恥ずかしいという気持ちが出てくることもあるかもしれませんが、その役割になり切って本気で取り組む姿勢が大切です。
また、営業役、上司役など学習の主役となる側だけでなく、顧客役、部下役など相手役の設定も丁寧に行いましょう。会話の中で出てくる反応がよりリアルなものとなり、それに対応する主役もより大きな学びが得られます。
目的やテーマを具体的かつ現実的なものに設定する
現実に起こりうる場面を想定してテーマを決めましょう。このロールプレイで何を学びたいのか、目的をしっかり定めます。極端な例ばかり設定すると、現場で役に立たないということにもなりかねません。
また、研修参加者の経験に応じた内容にすることも重要です。経験したことがない場面を設定できるのがロールプレイ学習のよさですが、難易度が高すぎるのも現実的とはいえません。
評価のポイントを明確にしてフィードバックする
ロールプレイでは、やり取りを見ていたオブザーバーによるフィードバックが大きな意味を持ちます。抽象的なフィードバックは改善に繋がりにくいため、評価のポイントを明確にして具体的なフィードバックが行えるようにします。フィードバックシートを作成しておくとよいしょう。
失敗しがちなポイント
効果を上げるためのポイントの裏返しともいえますが、とくによくあるロールプレイ学習の失敗としては次のような点が挙げられます。
相手役(営業に対する顧客役、上司に対する部下役など)の設定が曖昧
「役割を明確にする」といっても、相手役の詳細なキャラクター設定まではできていないケースも多いようです。設定が曖昧だと、話の流れによっては会話に詰まってしまうなど、リアルな展開が期待できなくなってしまいます。
たとえば営業研修であれば、「相手はどんな会社なのか」「何回目の商談なのか」「どんなニーズがあるのか」「社内事情はどうなのか」などまで考えておくとよいでしょう。応対についても演者に任せるだけでなく、「こういう話が出たらこう答える」というように、ある程度ルールを決めておくのもおすすめです。また、研修講師に相手役を演じてもらうことができれば、よりリアルな相手役となるでしょう。
緊張感がない
実際の場面に近い緊張感がなくなると、ロールプレイ学習の効果は大きく低下します。たとえば、会話の途中で設定を確認するような「私語」が出てしまうと、緊張感が途切れてしまいます。
緊張感のないロールプレイは形式的なものになり、参加者にも「あまり効果が感じられなかった」という印象を残してしまいがちなので、そうならないように事前の準備が必要です。
フィードバックが抽象的
参加者が交代でオブザーバー役を務める場合、同じ参加者同士という遠慮もあり、フィードバックが甘くなったり、大雑把になったりしがちです。「概ねよかったです」というようなコメントではスキルアップにつながりません。
用意されたフィードバックシートに沿ってしっかりとやり取りを観察し、言葉で具体的に評価することは、オブザーバー役にとっても大きな学びになります。フィードバックをする側も学ぶつもりで取り組むようにしましょう。
また、対話の様子を録画しておくのも一つの方法です。映像で身振り・手振り・話し方などを見ながらフィードバックすることで、より具体的な学びにつながります。
まとめ
ロールプレイ学習は、うまく実施すれば幅広いスキルを効率的に身につけることができる研修方法です。重要なのは、本番のように場を作り、真剣に取り組むことです。効果をあげるためにも、ぜひ紹介したようなポイントを意識してみてください。
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