やりっぱなしにしない!研修活用術

研修を120%活用するために
研修後編①
学んだ内容を定着させるアクション

公開日:2021/05/31 更新日:2023/09/13

研修後のアンケートの満足度が高く、研修直後の参加者のモチベーションが高まっていても、研修内容がその後の業務に生かされていないと効果があったとは言えません。研修は現場を離れた非日常的な空間で行われます。そのため日常の業務に根づかせるためには、実践につながるように周囲の支援が必要です。そこで、今回は研修で学んだ内容を定着させるアクションについて紹介します。

研修

研修内容を定着させるには上司のフォローが有効

研修内容は、職場のマネジメントと連携して取り組むことで、実践・定着とその効果測定が可能になります。参加者が、研修直後は業務に実践しようと意気込んでいても、日常の業務が忙しいため研修内容の活用を後回しにしてしまい、そのまま忘れてしまうこともあるでしょう。また、研修に参加していない、あるいはその目的や内容についての情報を持たない職場関係者(上司や同僚)からすると、研修参加者が学んできたことを実践しようとする行動やその進め方に違和感を覚える人もいるかもしれません。これは、よほど意識しない限り、新しいやり方よりも今まで慣れている組織のやり方や慣習が勝ってしまうからです。その結果、研修参加者は新たな行動を諦めてしまい、せっかく学んできた内容が組織に浸透することなく、研修前の状態に戻ってしまいます。

日常の実践に繋げるためには上司や先輩の巻き込みが有効です。何であれ組織の中で新しい試みをするときには、職場マネジメントの承認と支援が有効ですが、研修内容を業務に取り入れる際にも、上司による支援が力となるでしょう。

学んだ内容をもとに職場で新しいことに取り組んでみるプロセスや、その成果を、きちんと見てもらい評価されることで、研修参加者の実践への意欲も高まることが期待できます。
上司は、研修内容を実践した成果を評価するとともに、問題があればその解決のため、アドバイスを含めたサポートを行う大切な役割も担っています。

上司からのフォロー・フィードバックを促進するには

実践に対する支援・フィードバックを各職場に任せてしまうと、実際には上司のフォロー不足が起こる場合があります。そうならないためには、上司が職場実践についてのフィードバックを行う節目や確認の仕組みを予め設けて研修を企画しておくとよいでしょう。研修前の段階から、職場実践のフェーズについて上司の関与が必要であることとその具体的な進め方・スケジュールについて理解を得ておくことで、研修後のフィードバックも促しやすくなります。

育成担当者から上司に働きかけることができるアクションには、以下のようなことが挙げられます。

●研修前
各職場にとってのその研修の意義を理解し、育成についての上司・本人間の対話を促進するために、上司から参加者本人に対して、この研修で何を得てほしいか、どのような業務やキャリア開発に活かしてほしいのかを示してもらうことが有効でしょう。職場ニーズと研修内容がより一致することで業務に直結しやすく、研修後の上司の支援や、参加者に対しての継続的な観察が効果的になります。

●研修中
研修参加前に上司から研修参加者に、研修の目的や得てほしいことを伝えてもらった上で、参加者には以下のように具体的なアクションプランを作ってもらいましょう。

  • 研修終了時に、学んだこと・得た気づきを元に、自身の業務でどのような行動をするか、目標設定を行う
  • 目標には「何を、いつまでに、どのように」を決め具体的にする

●研修後
参加者と上司の参加報告・対話の仕組みも研修後に設定しておくと、受講内容を共有し、研修直後に設計した目標についてのフィードバックをもらうことができます。そのうえで、研修内容を業務にどう活かしていくのか、それを実現するには上司からどんなサポートが必要なのかを、対話の中で決めていきます。アクションプランを振り返る対話は、定期的に行うことで継続性も高まります。

研修を活用して人材育成に主体的に取り組む意識を高めるために、経営者や人事・人材開発部門の責任者から、研修が「会社としての取り組み」であることを明確に示してもらうとより効果的です。研修参加者だけでなく、上司を含めた組織の関係者に対し、研修が会社全体の取り組みとして認知されやすくなり、自職場の人材育成や組織風土づくりを担うことへの上司の意識も高まっていくでしょう。

研修内容を職場で共有してもらう

上司に限らず、研修での学びを参加者から組織メンバーに紹介してもらうことも有効です。以下のようなメリットがあり、研修内容が社内に根づくための後押しになるからです。

  • 他の社員も研修に参加してみたいというモチベーションアップにつながる
  • 研修参加者が組織のメンバーに対し、研修での学びに基づく行動変化・アクションプランが進めやすくなる

育成担当者からの働きかけが効果的

育成担当者からの研修後の働きかけも有効です。参加者と上司に研修参加のお礼メールや研修開催報告レポートを送付することで、研修の振り返りに繋がります。研修に対して、参加者や上司からの感想や問題点についての意見をもらえるきっかけにもなるため、研修後のフォローや今後の研修の内容ブラッシュアップなどに活用できるメリットもあります。

社内SNSを活用して研修参加者同士のつながりを育てよう

研修内容を業務内で実践していくためには、継続するための仕組みが必要です。そこで、チャットなどの社内SNSを活用するのも一つの方法です。研修参加者同士の意見交換の場になるだけでなく、それぞれが自分の職場に戻ったときの孤独感を解消する効果があります。

社内SNSには、場合によっては研修講師にも参加してもらうことで、実践を後押しするサポートの場がより強固に出来上がります。参加者からの進捗報告や悩みの共有に対して、アドバイスをしながらPDCAを回していくイメージです。研修後も、互いに体験を共有し、励まし合いながら取り組もうという雰囲気になり、業務に定着しやすい環境が出来上がります。

学びを定着し育成につなげていくためには、研修をきっかけに、参加者同士や参加者と上司を、スキルの定着や職場の課題解決などにチャレンジするチームとして繋ぎ、組織内で実践させる仕組み作りが重要です。育成担当者は、研修後のアクションも研修の一部と考え、組織への定着まで目指す過程をデザインしていきましょう。

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