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ポストコロナの時代に強みを発揮する「解決志向」を学ぶ
コロナ禍で、経営やビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変化し、これまでの経験やモノサシが通用しない状況が生まれています。そんな状況の中、問題解決のアプローチ方法として、「うまくいかない原因」に目を向ける「原因志向」ではなく、できることに目を向ける「解決志向」に注目が集まっています。
解決志向とはどういうものか?
解決志向はアメリカで生まれた心理療法の一種であり、1980年代半ばに、セラピーやカウンセリングなどの分野で、スティーブ・ド・シェイザーとインスー・キム・バーグによって開発されました。日本では「解決志向アプローチ」や「解決志向短期療法」と呼ばれています。
まず抑えておきたいのは、「カウンセリング」「コーチング」「マネジメント」などがアプリケーションだとすると、「解決志向」はOSのイメージだということです。つまり、解決志向の考え方を土台にして「カウンセリング」「コーチング」「マネジメント」が実行されるというわけで、さまざまな分野で応用が可能なアプローチ方法ともいえます。
過去のカウンセリング実施例からは、「解決志向」のアプローチを使用すると、「原因志向」のアプローチと比べて少ない回数で問題解決に至りやすいことも示されています。
「原因志向」との違い
解決志向との対極にあるといえるのが原因志向です。原因志向は、「悪いのは何か」「うまくいかないのはなぜか」を分析・追求していくアプローチで、起こったこと(過去)に目を向けます。「こわれているところをなおす」モノづくりや製造、システムには有効です。
一方、解決志向は、人間の行動をより生産的な方向に導くために、「できていること」に注目します。うまくいかない原因の究明ではなく、「どうすれば解決するのか」を考えることに時間をかけるアプローチで、いわば心が未来を向いているといえます。「うまくいっていることに目を向け、さらなる可能性を探究する」のに有効です。
コロナ禍においては、うまくいかない原因を追求しても、結局はすべて「コロナ禍だから」で終わってしまいがちです。そんな中で解決志向は、「原因」はともかく、「どうすれば解決するのか」を自分たちの強みや可能性等、ポジティブなことにフォーカスするアプローチであり、ポストコロナ時代に力を発揮する問題解決方法と言えます。
基本的な考え方
解決志向は特徴的な3つの基本原則の上に成り立っています。人が何かの問題に悩んでいる時には、この3つの原則のどれかに反した行動を取ったと、解決志向では考えます。
- もしうまくいっていないのであれば、違うことをする
- 一度やってみてうまくいったことは、またそれと同じことをする
- うまくいっているのなら、変えようとしない
解決志向ではこの基本原則のもと、「変化」「ありたい姿」「リソース」に注目していきます。
変化……「変化は絶えず生じていて、変化は必然である」そして「小さな変化が大きな変化を呼ぶ」と言われています。問題の根本的な解決を目指すのではなく小さな変化を生じさせることが大切と考えます。
ありたい姿……“こうあるべき”と考えるとどうしても「問題」や「原因」を追究してしまいがちです。解決志向では、“こうありたい”を描くことが重要で、“そうなるためにはどうしたらよいか”を考えます。
リソース……うまくいかない原因を探るのではなく、持っているリソース(資源や資質)を活かし、解決や未来を作っていく発想です。
解決志向で考える際の大まかな進め方
解決志向は、現在を基点に「これまでうまくいったこと」に注目し、現状をポジティブに捉え、人や組織を未来に向けた行動を起こすために役立ちます。以下、解決志向でものごとを考える際の大まかな進め方を説明します。
1 「共通して解決すべきことは何か?」という解決すべき困りごとを見つける
組織、チームの中で困りごとを共有していき、共通して解決すべきことを見つけていきます。
2 「うまくいったこと」「うまくいった理由」など現在の状況の確認をする
「うまくいったこと」のあらゆる成功ポイントを見つけ出し、「うまくいった」ことの理由を考えます。
3 「今後、大切にしたいことは何か?(進みたい方向)」や「どうなりたいか?(理想の未来像)」などを具体化してビジョンを作成する
組織としての方向性を明確にし、組織の「なりたい姿」を具体化していきます。
4 すでにあるリソースから活用できることを探し、現在の位置を確認した上で、小さな一歩を踏み出すためのアクションプランを作る
現状どこまでできているかを数値で確認し、今あるリソースの中から活用できること、続けた方がいいことなどを探します。困りごとを解決するために、小さな一歩を踏み出すためのアクションプランを決定します。小さなゴールをクリアすることはモチベーションの維持につながるでしょう。
解決志向で考える際のポイント
上司の前では本音で語れなかったり、愚痴の言い合いになり、結局は原因探しになってしまったりすることがあります。チーム全体の気持ちをポジティブにし、建設的な議論の場にするため、解決志向による進め方が組織に浸透・定着するまでは、外部のファシリテーターに協力してもらうと良いでしょう。穏やかに、本音で話し合いができる雰囲気を作ることができれば、オンラインで研修を行うことも可能です。
さまざまな変化が起こる中で、未来に目を向ける解決志向のアプローチは、チームや組織の行動力やモチベーションアップにつながるといえるでしょう。
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