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EQ向上で職場の問題を解決する
経営者や人事担当者の間でいま、「EQ」という概念が注目されています。自分の感情を管理し、人の気持ちに寄り添うEQを高めることで、職場の問題を解決する可能性が高いからです。今回は、そんなEQの能力についてご紹介します。
EQとは何か。なぜ今注目されているのか?
EQとはEmotional Quotientの略で、「感情指数」や「心の知能指数」とも表現されます。これは、自分の感情をコントロールする力や、相手の気持ちを知覚する力を表す指数です。EQは1990年、アメリカ人のピーター・サロベイ博士(エール大学学長)とジョン・メイヤー博士(ニューハンプシャー大学教授)のふたりが提唱した理論です。ふたりは心理学の視点で、「ビジネスで成功する人とできない人」の違いは何かを調査研究しました。そして成功する人は 「自分の感情を把握し、それを上手に管理するだけでなく、他者の感情を知覚する能力に長けている」 という傾向を導き出し、「感情をうまく管理し、利用することは一つの知能である」と結論付けました。これがEQの理論です。
EQという概念は90年代に大きな話題になりましたが、再び注目され出した背景はふたつあります。一つは、2020年に行われた世界経済フォーラムで「2025年までに求められるビジネススキル・トップ15」にEQが11位に入ったこと。もう一つは、経済産業省の「人生100年時代の社会人基礎力」で、EQが今後不可欠な能力として指定されたことです。これらによって、論理的思考力を表す「IQ」の高さだけでなく、主体性やリーダーシップ、他者に働きかける力などと同じく“人間性”にフォーカスするEQ(感情指数)にも注目が集まりました。
EQで示される4つの能力
EQは4つのブランチと呼ばれる能力によって示されます。それぞれ詳しくみてみましょう。
1)Identify感情の識別
自分と他者の「気持ちを感じる」能力です。例えば、自分が今悲しいのか怒っているのか、自分の感情を正確に識別する力です。これができれば、他者の気持ちもわかるようになるというわけです。
この能力はEQの原点ともいえる重要な要素です。「気持ちを感じる」ことができなければコントロールすることもできないからです。
2)Use感情の利用
求められる場面で求められる行動をするために、必要な「気持ちをつくる」能力です。例えば、悲しみに打ちひしがれている部下に声をかける時、自分は楽しい気持ちだったとしても部下と同じ悲しい気持ちをつくってから声をかけるというような形で発揮されます。「気持ちを切り替える」こともこの一つになります。
3)Understand 感情の理解
自分や他者の「気持ちを考える」能力です。なぜそういう気持ちになったか(過去)、これからどうするか(未来)を考える力です。例えば、「仕事をしたくない」という感情が起こった時、その理由が「疲れているから」だとわかれば、「休息をとる」という解決策をとることができます。
なお、「考える」とは本来、IQで示せる能力です。EQが「心の知能」と呼ばれるのは、このように「考える」能力が含まれるからだと言われています。
4)Manage 感情の調整
1~3の能力を常に働かせ、望ましい決定をするために「気持ちを活かす」能力です。EQを発揮するための最終段階と言えます。具体的には、心の中でマネジメントした感情を、最適な行動として選んで決定する力です。
(小見出し3のまとめ)
「感じる」「つくる」「考える」「活かす」という4つの能力を使えるようになると、動揺しても冷静な行動をとることができたり、ストレスマネジメントが上手になったりします。結果として仕事のパフォーマンスが安定します。
なお、業務での一例としては、経理や分析、校正など正確性が求められる場合、ポジティブな気持ちで業務にあたるとミスが起きやすいため、ネガティブな気持ちに切り替え変えたほうがいいと言われています。気持ちの切り替えができないとき、上記の能力を意識して使えばスムーズに業務に集中できるというわけです。
なぜ職場にEQの概念が必要か?どんな人がEQを高める必要がある?
EQの概念は、企業が抱える「ハラスメント」「リーダーシップの欠如」「メンタルヘルスの不調」などの諸問題を解決するとして期待されています。そのため、組織のメンバーをけん引するマネージャークラスが、とくにEQを高める必要があるでしょう。
良くも悪くもリーダーというのは、組織のメンバーの感情を左右する力を持ち、大きな影響を与えます。例えばメンバーの感情を熱意が生まれる方向へ導くことができれば業績は上がり、反対に不安や憎悪が生まれる方向へ向かわせてしまえば足並みは乱れます。また、リーダーに優れた戦略があっても、実行への想いをメンバーに伝えることができなければ実現しません。組織や人間は、「理(IQ)」だけでなく「情(EQ)」もないと動かないからです。そこでリーダーには、メンバーの感情に寄り添ったマネジメントが求められ、EQの高さが有効になります。
なお、EQが高いリーダーとは、いわゆる「いい人」ではなく、「目的達成のために感情をうまく使える人」のことを言うことに留意しておきましょう。
社員のEQ向上によって起こること
ここでは社員の視点から、EQが向上するとどんな良い影響があるかをご紹介しましょう。
1)メンタルヘルスが安定する
社員一人ひとりのEQが向上すれば、メンタルヘルスの安定が期待されます。例えば最近、企業内で問題になっているのが「24時間、やる気満々の興奮状態」の社員が増えていること。仕事が終わり家で食事をしていても、頭の片隅で仕事のことばかり考えている状態のことです。
休息の時間にリラックスしないと、翌日への活力を養うことができず、やがてメンタルに不調をきたします。このようにオンとオフの切り替えが苦手な社員が、この状態でいいのかと“自分の気持ちを意識的に考える”ようにすれば、「やる気」から「リラックス」へ、また、逆の「リラックス」から「やる気」にうまく切り替えられるようになり、メンタルヘルスが安定し、仕事のパフォーマンスが維持できます。
2)コミュニケーションの質が高まる
EQの向上はコミュニケーションの質を高め、対人関係を円滑にする効果も期待できます。というのも、EQが高いと、相手の感情を読み取り、相手に配慮した行動を取ることができるからです。結果的にEQの高い社員が増えれば、チームワークが発揮され、高いパフォーマンスも出せるようになります。
3)ハラスメントの防止になる
社員のEQが向上すれば、ハラスメントの防止につながると考えられます。ハラスメントは相手の気分を害する不快な言動を使うことで派生します。人間には「嫌いな人・苦手な人」がいるものです。例えば、苦手なメンバーとの会話で、何気なく発言した一言が、相手の感情を逆なですることがあります。反対に、苦手な人が発した言葉によって、不快な思いをすることもあるでしょう。
そんなとき感情のコントロールができれば、冷静な態度で対応することができるようになります。結果として、不快な言葉や行動を事前に抑えることができ、ハラスメントの防止につながります
まとめ
EQはIQと一見対立する概念と思われがちですが、実はそうではなく、互いに補い合う関係にあります。IQを充分に発揮するためにも、目的に合った感情をつくって活かすことが必要なのです。
性格は変容しにくいものですが、EQは日々のトレーニングで向上させることができます。EQを測定する専用アセスメント(※)もあるので、社員や管理職のEQを高めるため、まずは導入してみるのもよいでしょう。
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