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いずれは人事領域にも?話題の「NFT」を理解する
これまで、デジタルデータは簡単にコピー・加工が可能なため資産価値が生まれにくいとされてきました。しかし、デジタルデータに一点ものの価値を与えられるNFTが出現したことで話題になっています。今後は、デジタルアートやゲーム分野に限らず、人事領域でも活用できる可能性があると考えられます。
NFTとはなにか
NFTとはNon Fungible Tokenの略で、日本語では「非代替トークン」と略されます。所有証明書や鑑定書が付いた唯一無二のデジタルデータという意味です。デジタルアートやゲームなどのデジタルデータは、簡単にコピーや加工が可能なため、これまではオリジナルのものを見分けることが困難でした。
この問題を解決したのがNFTです。NFTは、①唯一性を証明できる、②データの改ざんができない、③データの作成者・所有者を記録できるという3つの特徴を備え、デジタルデータに資産価値を与えられるようになりました。容易にコピーができるデジタルデータも、1つしかない本物がどれかを証明できるようになったのです。
NFT技術が適用される対象は、現時点ではデジタルコレクターズアイテムが中心です。JPEG、GIF、3Dアニメーション、VR、デジタル上の土地などデジタルのものであれば何にでも適用できます。たとえば、バーチャルなスニーカーが、物理的に販売されているスニーカーと同じくらいの価格で販売されている事例もあります。ブランド販売においても物理的な製品やサービスにとどまらず、バーチャルな製品を提供する動きが出てきているのです。そして現在、NFTを使って何らかのビジネスを展開しようと、NFTに適したコンテンツが世界中で模索されています。
NFTが話題になった場面
最初期のNFTプロジェクトとしては、2015年にイーサリアムのブロックチェーン上で販売された「Etheria(イーサリア)」があります。その後、大きな動きはないままでしたが、2021年になり、NFTアートの市場が拡大したことで人気が急上昇しました。Twitter創業者が出品した「最初のツイート」が3億1700万円で落札されたことも、NFTが注目されるきっかけになったと言えるでしょう。
NFTアートとはデジタルアートと「NFT」を掛け合わせた作品のことです。2021年に入ってから話題に上がったNFTアートには次のようなものがあります。
- アメリカのデジタルアーティストBeeple氏のデジタルアート作品がオークションにて約75億円で落札
- 1SEC社からオークションに出品されたバーチャルスニーカーが5ETH(当時のレートで約140万円)で完売
- 「ポケットモンスター」シリーズなどで知られるさいとうなおきさんのイラストが600万円で落札
- 週刊SPA!が世界初のNFT雑誌付録(トレーディングカード)を発売
さらに、SBIアートコレクションが日本初のNFTオークションを予定していることからも、NFT事業に力を入れる企業も増えてきているのがわかります。
支えているのはブロックチェーン技術
NFTの価値を支えているのがブロックチェーン技術です。ブロックチェーン技術とは、「取引履歴を暗号技術によって過去から1本の鎖のようにつなげ、正確な取引履歴を維持しようとする技術」とされています。ブロックチェーンは、複数のブロックが連結されたものを指し、合意された取引記録の集合体と各ブロックを接続させるための情報で構成されています。そのため、一つの取引を改ざんするにはすべての取引を改ざんする必要があり、データの改ざんや破壊が難しいという特徴があります。
NFTと暗号資産(仮想通貨)の違い
ビットコインなどの暗号資産とNFTはどちらもブロックチェーンを利用したトークンです。主な違いは暗号資産には代替性があり(Fungible)、NFTには代替性がない(Non Fungible)ことです。暗号資産は一つひとつの資産にオリジナル性はなく、その数字の大きさが価値に比例しています。一方、NFTはオリジナル性があり唯一無二の価値があります。
ビジネスにどんな影響があり得るのか?
デジタル化した社会において、NFTに対する企業の動きも加速しています。以下にその例をご紹介します。
NFTを活用した電子印鑑
コロナ禍において「書類に押印するために出社する」という事態が物議をかもしましたが、現在、シヤチハタ株式会社がNFTを活用した電子印鑑を開発したことで、リモートでの押印が可能になりました。その仕組は、印影データをNFT化し、印鑑保有者の情報と印影情報を結びつけ、ブロックチェーン技術によって改ざんが困難になるというものです。
バーガーキングがNFT技術を使ったゲームでキャンペーンを実施
バーガーキングは消費者の注目を集め、エンゲージメントを持続的に向上させるために、NFT技術を使ったゲームでキャンペーンを実施しています。コレクション性があるトレード可能な懸賞とすることで、これまで一回配布するだけだったキャンペーンの「おもちゃ」が、他のユーザーと交換し、コレクションを充実させることが可能なアイテムとなりました。こうした消費者体験の向上も、NFTの一つの用途といえます。
広告枠をNFTとして販売
2021年9月、仮想通貨系メディア3社が、広告枠をNFTとして販売する実証実験を行うと発表しました。 NFTだから可能な審査の自動化による収益性向上効果、ファン広告などより間口の広い広告としての利用の可能性、広告枠そのものの二次流通など、さまざまな側面から検証が行われる予定です。
人事領域にも応用の可能性がある
ビジネスにおけるNFTの影響をお伝えしてきましたが、人事領域においてもNFT応用が期待されています。HRの分野では、人材の社内評価に加えて社外での評価や社会的評価を蓄積する実験や、転職時やフリーランスの人のスキルや評価に対してNFTの利用が模索されています。
また今後は、オンライン研修に信頼性を付与するために、修了証やテスト結果などがNFTで発行される可能性も考えられます。NFTの広がりには、人事領域からも注目しておくべきといえるでしょう。