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ワークライフバランス向上のために管理職に求められること

公開日:2022/09/28 更新日:2023/09/14

ワークライフバランス向上への取り組みは今や、企業にとって避けて通れない課題ですが、その中心的な役割を担うのが管理職です。今回は、ワークライフバランスを推進するなかで、管理職が意識すべきこと、そのために企業としてできる支援についてご紹介します。

ワークライフバランスという言葉を正しく理解する

ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和を意味します。

内閣府「仕事と生活の調和」推進サイトによると、「仕事と生活の調和が実現した社会」とは、「国民一人ひとりがやりがいを感じながら働き、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」とされています。
こうした社会の実現に向けて、国民一人ひとりが積極的に取り組めるよう、官民一体となってワークライフバランスの支援に取り組む動きが始まっています。2007年には、内閣府のもと政労使(政府・労働者団体・経団連の3者)の合意によって「ワークライフバランス憲章と行動指針」を策定するなど、国としての対策も進んでいます。

では、企業が取り組むべきは支援とは何か。それは「仕事と生活の両立を図った支援」を行うことです。例えば、子育て中や介護中の従業員には、それらをしながらキャリア形成ができる仕組みを整えることがこれにあたります。

ここで気をつけたいのは、ワークライフバランス実現に向けた支援とは、「子育てや介護を支援する」「有給取得率を増加する」という断片的な支援ではないということです。重要なのは、大局的な視点でワークライフバランスを実現させる仕組みを作ることす。例えば、従来のワーク&ワーク型を前提とした仕事の仕組みを改めたり、ワークライフコンフリクト(対立)をなくすような仕組みです。言い換えるとワークライフバランスに向けた支援とは職場マネジメントの問題と言うこともできます。   

ワークライフバランス実現にはマネジメント上の課題も多い

ワークライフバランスの支援に必要なのは、組織が一体となって、計画するマネジメントです。こうしたマネジメントに正解はなく、各企業が自社に合仕組みの構築に難しさを抱えています。ここでは、ワークライフバランスの実現に向けた取り組みの例をケースでご紹介します。

ケースA :結婚・出産・育児を理由に辞めていく従業員に対して

これまでは、結婚、出産、育児によってどのような社内制度が使えるのか、従業員にほとんど周知できていませんでした。そこで、考えられる原因(下記)をもとに、結婚、出産、育児別に利用できる制度を紹介する冊子を発行。これによって、社内制度を使う従業員が増えてきました。

(考えられる原因)
仕事と育児の両立を希望する従業員に対して、本人と上司が社内制度を知らない。また、育児での休業や短時間勤務で周囲に迷惑がかかると思っている。

ケースB :介護で優秀な従業員が辞めていくことに対して

40~50代の管理職は、介護がいつ始まってもおかしくありません。そこで考えられる原因をもとに、管理職を対象に、定期的なセミナーを開催し、社内外の制度や介護をする上での重要なことを伝えることにしました。セミナーを開催する度に、参加者から介護施設の種類や選び方、介護に必要なお金のこと等、多岐にわたる質問が出てくるようになりました。 

(考えられる原因)
介護を自分一人で抱え込んでいたり、管理職自身が介護に関する制度を知らない。また、自分が休むと周囲に迷惑がかかると思っている。

ケースC :ワークライフバランスの実施に抵抗感がある従業員に対して

男女ともに残業や休日出勤は当たり前という空気が社内にまん延していたため、社長は従業員の健康のために「働き方改革」を実施し、残業削減と有給取得率を目標にしました。実施当初は多くの従業員が、残業手当が削減されることに抵抗感を抱きました。しかし、残業時間の削減が目的ではないことを発信したり、残業削減の達成度合いに応じて賞与に反映させる制度を作ることによって、抵抗感をなくしました。

(考えられる原因)
「残業手当が減ると自分の生活に影響がある」と思う従業員がいる。残業時間の削減だけが目的であると誤解されている。また、実現による評価・処遇への対策が未整備である。

管理職に求められる役割2つ

ワークライフバランスの支援に必要なのは、組織が一体となって、計画するマネジメントです。こうしたマネジメントに正解はなく、各企業が自社に合仕組みの構築に難しさを抱えています。ここでは、ワークライフバランスの実現に向けた取り組みの例をケースでご紹介します。

役割1)長時間労働の是正

・メンバーの業務量・業務進捗の把握

管理職は部下が長時間労働にならないように労働時間、仕事量を把握する必要があります。仕事量に差があれば、残業時間の上限を超えないように改善したり、部下の仕事の進捗状況を管理するなどが求められます。

最近ではリモートワークも増え、業務実態把握もより難しくなっていることから、ミーティング等の定期的なコミュニケーション機会創出も重要となっています。

・サポートし合えるチーム・組織づくり

管理職には、メンバーが効率よく業務を行えるような環境を作ることが求められます。例えば「仕事量に差があればチーム内で割り振りし直す」「ほかのメンバーが困っていたら相互支援する」など、チーム一丸となって相互にサポートし合える組織をつくるため、その土壌となる組織風土やシステムを整えていくことが、管理職の役割になるでしょう。

役割2)働き方の多様化への対応

ダイバーシティやリモートワークの浸透などにより、働き方が多様化する企業が増えました。管理職はそれらに柔軟に対応し、部下が活躍できるを環境つくることが求められています。

ワークライフバランス推進に必要な管理職の意識改革

管理職がチームのワークライフバランスを実現するにあたっては、管理職自身も意識改革が求められます。その意識改革のポイントは大きく4つあります。

ポイント1)管理職自身がワークライフバランスを実践する

管理職は時間外手当てがつかないので、「自分は残業しても迷惑をかけていない」と思う人もいるでしょう。しかし管理職の帰宅時間が遅いチームは、部下の残業も多いという傾向があります。それを解消するためには、管理職自身がワークライフバランスを実践する意識改革が必要です。

 現在、管理職に就く世代は「仕事中心の価値観」が強い傾向にありますが、人生全体の評価は会社(ワーク)だけでなく、家族や生活(ライフ)でも決まると価値観を改める必要があるかもしれません。

ポイント2)時間の制約がない部下はいないことを理解する

「あの部下は時間に融通が利きそうだ」という理由で、仕事を頼む管理職もいるでしょう。しかし時間の制約がない部下はいないことを理解しましょう。育児や介護といったわかりやすい理由がない部下でも、それぞれ事情があります。一部の部下に負担がかからないような新しいマネジメントに切り替える意識が必要です。例えば、仕事の詳細や進め方が当人しか分からない状態の「属人化」の廃止や、情報共有と仕事の「見える化」などです。

ポイント3)仕事量を最小限にする

管理職自身が仕事を取捨選択して、仕事量を最小限にする意識改革も必要でしょう。例えば、長時間労働の原因の一つになっている社内資料作成など、優先度の低い仕事を減らしていくなどです。小さなことでも一つ一つ実践することで、部下の疲弊やメンタル疾患、部下の家庭内不和などのリスクを防ぐ可能性もあります。

ポイント4)時間や場所も報酬として人事に交渉する

今まで報酬といえばお金でしたが、ワークライフバランスを推進していくためには、時間や場所なども報酬に入るという意識改革が必要でしょう。親の通院の付き添い、子供の学校行事などで月に数回、数時間の中抜けする部下の場合、「一日欠勤」扱いにする会社もありますが、「残業した分と相殺する」「在宅勤務にする」など、時間や場所なども報酬にすることも考えられます。こうした策を、管理職が担当部署に交渉することも必要でしょう。

管理職の置かれた現状は厳しい

ワークライフバランスの実施に向けて管理職の役割は大きいにもかかわらず、厳しい環境におかれていることが調査で明らかになっています。

管理職自身が長時間労働になっている

管理職は労働時間が長くなっていて、働き方改革に時間を割けていないという調査結果があります

 その背景には、「プレイング業務(プレイヤーとしての業務と管理職としてのマネジメント業務の双方を担う)」の増加や、コンプライアンス対応など担う業務の多さがあります。なかでも仕事全体のなかでプレイング業務に割いている時間の割合が高いという調査結果も出ていて、管理職が置かれている現状の厳しさが伺えます。 

部下の残業の肩代わりをしている

残業時間の上限が規定されたことにより、部下の残業を肩代わりする管理職が増える傾向にあります。「部下の残業削減のために自分の仕事量が増えた」と感じている管理職は多く、精神的にも物理的にも負担が大きいと感じる管理職が多いようです。

リモートワーク特有のコミュニケーションが難しい

働き方が多様になったことにより、リモートワークをする社員も増えました。その分、会社にいない部下の時間管理や評価など、リモートワーク特有の管理が難しいと感じる管理職が多くなっています。

企業から管理職への支援も重要

厳しい労働環境に晒される管理職に対して、会社側ができる支援をあげてみます。

1・管理職がマネジメント業務に当たれるような支援

経営層や人事担当が、ワークライフバランスの推進役を管理職に担わせるのであれば、それを実施できる環境作りが重要でしょう。

例えば、「不要な仕事の見直し」「無駄な会議・打ち合わせの廃止」「経営トップ主導による組織のあり方の見直し」「仕事上の権限を与える」などです。これらは実際、管理職側が求めていることですが、実施する会社は少ないのが実情です。会社全体がワークライフバランスを推進するのであれば、管理職の長時間労働を解消し、管理職としての役割が担えるように支援を早く始めることが大事でしょう。

2・業務マネジメント・部下マネジメントの支援

長時間労働を改善するための「業務マネジメント」、部下を育成する「部下マネジメント」など、ワークライフバランスに必要な情報提供や研修を行うことも助けとなります。 

3・人事考課の支援

管理職がメンバーの支援に繋がるマネジメントを実行しているにもかかわらず、人事考課で評価されないケースがみられます。取り組んだことに対し、適切な評価(人事考課)を実施することも、管理職の行動を促す助けとなるでしょう。

まとめ

ワークライフバランスを実施するために、奮闘している管理職は多いものです。経営層や人事側がその点を理解し、支援を進めることで、ワークライフバランスへの取り組み効果がより一層期待できるはずです。

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