やりっぱなしにしない!研修活用術

失敗しない研修計画

リテンションの視点で研修を考える

公開日:2023/06/21 更新日:2023/09/14

人事領域でのリテンションとは、優秀な人材の流出防止を目的とした施策のことです。優秀な人材確保のために、リテンションを目的とした研修に力を入れる企業も増えています。リテンションについて、リテンションによってどのようなことができるのかを解説します。

リテンションとは何か

リテンションとは、英語では「retention」と書き、保持や維持と訳します。人事領域では優秀な人材の流出を防止するための施策というニュアンスで使われています。 

近年では、転職活動による人材の流動化や、少子高齢化による慢性的な人材不足を背景に、注目されています。ようやく採用した人材が退職してしまうと、企業には採用コストや育成コストだけでなく、機密情報の漏洩や人手不足による生産性の低下など組織全体のさまざまな利益損失が予想されます。そこで優秀な人材の流出を防ぎ、定着率を高めるリテンション施策が重要視されているのです。

何を行うことがリテンションにつながるか

リテンションの施策には「金銭的報酬」「非金銭的報酬」の2つがあります。

「金銭的報酬」は、人材確保のために金銭的な好条件を提示する方法で、一定の効果はありますが、企業にも資金の限界があり、従業員にとっても効果が持続しにくいといった分析結果も出ています。高い報酬だけでは従業員を引き止めることができず、従業員はゆとりを求めて転職してしまうことがあるのです。

これ対し、一般的に効果的だと言われているのは「非金銭的報酬」です。金銭的な報酬以外の価値を提供することで、従業員がやりがいや自己成長など感じると、その環境で働き続けたいと思うようになるというわけです。

非金銭的報酬の具体例には以下のようなものがあります。

心理的安全性の確保

自分の考えや気持ちを安心して発言できるような職場環境を確保することです。自分の意見を安心してメンバーに話せるようになると、組織のメンバー同士の理解が深まり、議論や仕事が進めやすくなりますが、その環境自体が価値になるというわけです。 

ワークライフバランスの推進

従業員が仕事とプライベートのバランスを保ちながら働けるように、ワークライフバランスを推進することは、育児や介護などさまざまな事情を抱えた従業員にとっては価値になります。 

キャリア支援、能力開発

優秀な人材は自らが成長できる環境に身をおきたいと思っています。企業によるキャリア支援や学びの場の提供は、成長したい人にとっては大きな価値を持ちます。

エンパワーメント

エンパワーメントとは、従業員に権限を与えて能力を引き出すことです。エンパワーメントにより、従業員は信頼に応えようと努力したり、自律的に行動したりします。

具体的なリテンション施策の例

リテンション施策の具体的な取り組み例を紹介します。

 評価システムの見直し

部門や職種別に評価制度を見直すことで従業員が評価に納得できるようになります。

FA制度の導入

従業員に新たなチャレンジの場を提供するためにFA制度は役立ちます。従業員の自発性を尊重することが離職防止にもつながります。

副業の解禁

従業員の多様な働き方を推奨するために、副業を解禁している企業があります。従業員のチャレンジしてみたい気持ちを満たすことが、離職防止につながります。

1on1によるコミュニケーション

1on1などによるコミュニケーションの活発化は、上司と部下が縦の繋がりを持つことができ、帰属意識が高まります。

リモートワーク、フレックス制度などの導入

ワークライフバランス推進のために、リモートワーク、フレックス制度等を導入することで、プライベートでさまざまな事情を抱える人も辞めずに済みます。

本人の望むスキルを身につける機会を作る

学習機会もリテンションの重要な手段の一つです。さらに一人ひとりが学ぶテーマを自分で選択できる機会を作ることで、主体性や学習意欲も高まり、学びを軸とした好循環が生まれます。

研修もリテンションにつなげることができる

研修にもリテンション施策としての効果があります。どんな研修が効果的かを考えてみましょう。

能力開発

自分に足りない、専門性を高めたいなど自ら望む分野を学ぶことで自主性が高まります。自らを成長させたい従業員に対しては、学びたい研修を選択できるカフェテリア方式の研修がおすすめです。すべてのプログラムを社内で準備するのは難しいため外部の研修を活用するのもいいでしょう。 

キャリアデザイン

「自社での将来的なキャリアイメージが持てないから」といって離職する人も少なくありません。企業は従業員に「自社で働き続けるキャリアイメージを持ってもらうこと」が大切です。キャリアデザイン研修やキャリアアップを実感できるような研修が効果的です。

 チームビルディング

心理的安全性が高い状態は、働く人にとって大きな価値を待ちます。チームワーク向上やコミュニケーションスキルを高めることで心理的安全性を高めるには、チームビルディング研修などが効果的です。

階層別研修において効果的なこと

新入社員

長期間の研修や複数回の集合研修を行うことで、新入社員同士コミュニケーションの機会が増えて一体感が生まれます。関係性が高まることで辛い時にも励まし合うことができ、離職防止が期待できます。

中堅社員

職場環境に慣れると自らの成長を実感しにくくなりがちです。スキルアップや目指すべき姿をイメージできるようにキャリアデザインの研修などを行うのもよいでしょう。

管理職

組織の人間関係は上司のマネジメントスキルの高さにも関係しています。部下とのコミュニケーションが円滑になるように、管理職側がマネジメントスキルやコミュニケーションスキルを強化することでも、心理的安全性づくりにつながり、職場全体が離職の必要のない環境になります。

 

優秀な人材の確保は多くの企業が抱えている問題といえます。従業員の働きやすい制度を整えると同時に、従業員が成長できる環境だと実感しながら働けるような、リテンション視点での研修を取り入れてみてはいかがでしょうか。