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ジョブ型雇用、リモートワーク…役割分化が進む組織を支える「組織市民行動」とは?

公開日:2023/10/16 更新日:2023/10/16

日本企業でも導入が進みつつあるジョブ型雇ですが、海外の例などを見ると、ジョブ型雇用により、自分の業績に結びつかない業務や他者をサポートするような行動が減ることも指摘されています。こうした役割外の行動、いわゆる「組織市民行動」の重要性について考えてみます。


組織市民行動とは何か?

組織市民行動とは「組織のメンバーが、見返りを求めることなく、自分の役割外の仕事を行う行動」のことです。インディアナ大学のデニス・オーガン教授(Organ)らが提唱し、「任意の行動であること」「公式の報酬システムによって直接または明確に承認されているものではないこと」「集合的に組織の効率を促進するものであること」の、3つの要件を含む行動として定義しています。「役割外行動」とも呼ばれ、組織の効率性を高め、組織に利益をもたらす活動とされています。

具体例としては以下のような行動が組織市民行動に当たるとされています。

  • 病気で休んでいる人の仕事を手伝う
  • パソコンの苦手な同僚がいたら教えてあげる
  • 職場が汚れていたら自発的に掃除をする
  • 間違っている業務を見つけたら改善の提案をする
  • 誰も見ていなくても就業規則を守る

組織市民行動が起こる状態の何がよいのか

組織や職場には、役割が誰にも割り振りされていない業務が多く内在しています。こうした役割外の業務に対し、自発的な行動をする人が一定数いる組織を「組織市民行動が起こっている」状態ともいい、こういう状態にある組織はうまく回っている場合が多いと言われます。組織市民行動が高まると、従業員の生産性や環境変化に対する組織の適応能力が向上し、従業員の離職意思が低下することも検証されています。

バブル崩壊以前、メンバーシップ型雇用中心の日本企業では、見返りを求めない組織の貢献として組織市民行動が根付いていたようにも見えます。しかし海外と比べて日本の組織市民行動は低いという指摘もあり、一概には言えないようです。 

さらに最近は、リモートワーク化により従業員の自発性の低下が懸念されているという背景もあり、総合的に組織のパフォーマンスを上げる行動としての組織市民行動が注目されるようになりました。

組織市民行動の5つの要素

提唱者であるデニス・オーガン教授は、組織市民行動を5つの要素に分解しています。

 利他主義

直接評価につながらなくても困っている人がいたら援助する行為です。

誠実さ

遅刻や欠勤しないなど組織内の規則を誠実に守ることを指します。

スポーツマンシップ

環境のせいにしないで精一杯対処するなど、置かれた環境でベストを尽くす行動のことです。

厚意性

職場の同僚の権利を尊重しようという考え方で、まわりに迷惑をかけないようにできるだけ自己完結する行動のことです。報告・連絡・相談など上司や部下に行う行動も含みます。

市民道徳

自分のことだけではなく、職場の活動に参加・関与しながら意思決定する行動です。

これらの5つの要素を実行していくことで、以下のような職場環境の変化が期待できるとされています。

  • 従業員の生産性が上がる
  • 優秀な人材の定着率が上がる
  • 環境変化に対して対応できる組織になる
  • 組織の雰囲気が良くなる
  • 顧客の満足度が上がる

組織市民行動を起こすためにできること

上司や周囲の目を気にしながら行動することは組織市民行動とは言えません。組織市民行動は主体的な行動でなければならないからです。つまり、組織市民行動を起こすためには、こうした行動が主体的に生まれるための「仕組み」作りが大切だといえます。たとえば次のようなことが考えられるでしょう。 

仕事の相互依存性が高まるよう役割分担を考える

業務が一人で完結するのではなく、従業員同士コミュニケーションを取りながら仕事を進める状態をつくることで、担当外の行動が自然と起こるようになります。お互いのコミュニケーションやフィードバックの機会も増え、組織力も高まります。

権限を移譲する

部下を細かく管理するマネジメントでは、部下の主体性は育ちません、従業員に仕事の権限を与えることで内発的動機が育ち、組織市民行動が促されます。

前例をつくる

組織内で組織市民行動が起こる状態を当たり前にするには、上司が率先して組織市民行動を起こすこともよいきっかけとなります。チーム内で率先して手助けする人が出てきたら、公の場で感謝を表明することも有効です。

さらに、組織市民行動が組織へどのような良い影響を与えているかを会議や朝礼で定期的に伝えることで、より一層その影響力を実感できるようになります。 

理念と結びつける

企業の理念やガイドラインに組織市民行動を取り入れてしまうことで、より組織内に浸透しやすくなります。

 

従業員の自発的な支え合いは組織を強くします。企業は従業員が役割外の仕事を率先して行う環境にするために、仕組み作りを検討してみるのもよいかもしれません。