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コンプライアンス対策の手段としての研修を考える
コンプライアンス違反は、一度起こると企業の大きなダメージを与えます。こうした損失を防ぐには、コンプライアンスについて理解するだけでなく、組織風土自体を変えること、従業員一人ひとりが適切な判断力を身につけて対策することが必要です。そのためにはどんな研修が役に立つのかを考えてみましょう。
コンプライアンスとは何か?
コンプライアンスは日本語では「法令遵守」という意味です。一般的な定義では、企業が円滑な経営を行うために「法、社内規範、倫理」の3つの規範を守ることとされています。しかしながら、コンプライアンス自体は明確に範囲が定義されているものではなく、社会の一般常識やマナー、倫理観など広範囲におよびます。そのため、どこからがコンプライアンス違反になるかを判断するために、従業員自らが判断基準を身につける必要があるのです。
よくあるコンプライアンス違反の例
コンプライアンスへの意識を高めるために、よくあるコンプライアンス違反のパターンを知っておきましょう。大まかに言うと「労働問題」「法令違反」「情報漏洩」「不正経理」の4パターンに分けられます。
労働問題
パワハラ・セクハラなどの各種ハラスメント、長時間労働や未払い賃金など、従業員が雇用者から受ける不当な扱いや不利益が該当します。従業員には精神的・肉体的苦痛などの問題も生じることがあります。
法令違反
食品衛生法や著作権法、金融商品取引法など、企業が事業を遂行するにあたって各業法で決められたルールの違反を指します。法令違反は明確に基準が決められていることもあり、刑事事件になる可能性が高く、また社会から企業に対する反発も強くなります。
情報漏洩
企業が管理する顧客情報の流出やインサイダー取引などのことです。従業員の不正によって流出するケースや、セキュリティ不足によるハッキング被害などにより起こるケースがあります。
不正経理
故意に決算書を操作する粉飾決算や架空請求、業務上横領などが不正経理にあたります。不正経理は取引先や関連企業など広範囲に被害を与え、企業が被る打撃も大きいです。
なお、利害関係者が誰なのかによって以下のように4つに分類する考え方もあります。
- 消費者に対するコンプライアンス
- 企業に対するコンプライアンス
- 社員に対するコンプライアンス
- 株主に対するコンプライアンス
【関連URL】管理職なら知っておきたいコンプライアンスの基本
コンプライアンス違反が起きる原因とは
コンプライアンス違反はなぜ起きてしまうのか、主な原因を考えてみましょう。
法律に関する知識・教育不足によるコンプライアンス意識の欠如
従業員が自覚なくコンプライアンスに違反するケースがあります。「よかれと思ってタイムカードを押さずに残業をする」「業務内容を友人にうっかり話し情報漏洩してしまう」など、コンプライアンスに関する知識・教育不足が違反につながります。
過重労働や厳しいノルマによるプレッシャー
コンプライアンス違反と知っていながら違反するケースです。「業績を上げなければ」「昇給しなければ」などとプレッシャーにより不正を行ってしまいます。
組織としてのガバナンスの欠陥
「コンプライアンスを管理する窓口がない」「情報セキュリティ対策がされていない」など、組織としてコンプライアンスに対するガバナンスが不十分なために違反が起こってしまいます。
これらの3つの原因に加えて、コミュニケーションに問題がある組織ではコンプライアンス違反が起きやすいといわれます。たとえば、業務の担当者自身がコンプライアンス違反と気づきながらも、誰にも相談や報告ができず、罪悪感を抱きながら業務にあたり違反してしまうケースです。このような状況ですと、いくら組織にコンプライアンスに関する仕組みや制度が整っていても違反を防げません。また問題が起こった際にも発見が遅れ、問題が大きくなってしまうリスクもあります。
コンプライアンス違反をどう防ぐか?
企業がコンプライアンスに違反すれば、社会的信頼を失ってしまいます。そこで違反が起きてしまう前に企業ができる取り組みを知っておきましょう。
コンプライアンス研修を実施する
コンプライアンス遵守のためには「正しい知識」と「適切な判断力」の両方が必要です。研修では「コンプライアンスとは何か」を理解しながら、会社の規則やルールにないことが起こった際に、「やって良いこと・悪いこと」を判断できる「適切な判断力」をつけることをゴールとします。
人は一度知識を得ても、思い込みや勘違いなどの理由から、正しい理解が続かない場合があります。「適切な判断力」は継続した学びで初めて浸透するものだと理解する必要があるでしょう。たとえば、月1回eラーニングを受けるなどして定期的に知識を植えつけることが効果的です。
また従業員の「知らなかった」から起こるコンプライアンス違反もあります。企業は、従業員に対して定期的にコンプライアンス研修を実施することで、違反した従業員が「知らなかった」と言えない状況を作ることも必要なのです。
コミュニケーション関連研修を実施する
コミュニケーションが円滑な組織は、コンプライアンス違反が起こりにくいといわれます。組織の信頼関係を高め、コミュニケーションを活性化するために、とくに上司にあたる立場の人がコミュニケーション関連のスキルを高めるのが効果的です。
ファシリテーション・スキル修得
https://solution.jma.or.jp/service/training/theme/skill/skill2_7/
ファシリテーションスキルを身につけることで、メンバーの意見を引き出し、積極的な発言を促すことができます。メンバーも納得感のある発言ができるようになり、安心してコミュニケーションの取れる組織を作ることができるでしょう。
コーチング・スキルトレーニング
https://solution.jma.or.jp/service/training/theme/skill/skill2_8/
コーチングスキルを身につけることで、相手の考えや意見を引き出し、組織内のコミュニケーションを活発化させることができます。
アサーティブコミュニケ―ション
https://solution.jma.or.jp/service/training/theme/skill/skill2_2/
相手を否定せずに自分の気持ちを伝えるコミュニケーションです。アサーティブコミュニケ―ションを身につけることで組織内の意見交換が活発になります。
繰り返しになりますが、コンプライアンスについては「知る」だけでなく、一人ひとりが事態を判断できるレベルまで理解を深めつつ、問題が起こったときに言い出しやすい雰囲気をつくることが重要です。こうしたことを実現するため、研修の場をうまく活用していきましょう。
第1回 変革が求められる今、必要な人材育成の考え方 【シリーズ:変革リーダー育成のススメ】