5分でわかるビジネストレンドワード

やりっぱなしにしない!研修活用術

今どき研修テーマ&メソッド図鑑

【シリーズ:変革リーダー育成のススメ】
第1回 変革が求められる今、必要な人材育成の考え方

公開日:2024/02/09 更新日:2024/02/20

多くの企業が必要性を自覚しながら、現実にはなかなか進んでいない企業変革。本シリーズでは、変革を実現に不可欠な存在である「人材」に着目し、変革をけん引できる人材の育成方法について論じます。本稿では、なるべく早く変革を実現するため、誰をどのように育成するべきかを紹介します。

「変革」は多くの企業が抱えている課題

日本企業は今、世界的な競争から取り残されてしまっています。そのことを如実に示しているデータの一つが、世界の時価総額上位企業ランキング。1989年には、世界のトップ20社のうち14社を日本企業が占めていたのに対し、2019年には1社もランクインすることなく、最上位のトヨタ自動車でも世界第43位という結果となっています。

こうした状況から巻き返しを図るには、従来型のビジネススタイルではもはや不可能と言えるでしょう。この30年で世の中も大きく変化しているからです。

たとえば、生成AIの登場は社会に大きな変化をもたらしました。しかしそれ以外にも、さまざまなテクノロジーの発達が人々のライフスタイルを大きく変えています。消費についても、「モノ消費」から「コト消費」へ移行し、シェアリングエコノミーやサブスクリプションモデルなど、今までになかったスタイルが生まれる中で、従来型のモノやサービスが役目を終えつつあります。さらに、VUCAという言葉に示されているように、こうした激しい変化は今後も続くと予測され、企業も変化に合わせて絶え間ない変革を迫られると考えられます。

実際、経営レベルでは、多くの企業が変革の必要性を自覚しています。日本能率協会が企業の代表を対象に行った調査、「日本企業の経営課題2019」では、現在から5年後にかけての課題として最も多く挙がったのが「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」と「人材の強化」でした。

こうした課題感の一方で、実際には変革が進んでいないのも事実です。背景には、従来型思考の枠に阻まれて変革が進みにくいさまざまな要因が考えられます。変革を進めるには、こうした従来型の思考自体を改めることも重要ですが、一方で、困難な環境においても変革を実行できる人材の育成も大きな課題だと言えます。

今、求められている人材構成はどのようなものか?

 絶えず変革できる組織であるためには、社内の人材構成はどのようになっている必要があるでしょうか?従来型の組織と比較しながら考えてみましょう。

従来の組織では、経営トップ層が戦略を策定して方針を示し、ミドル層が調整とマネジメントを行い、ボトム層が実行するという形でビジネスが進められてきました。そのためには、社内調整役としてのミドル層やオペレーション役のボトム層が一定数必要でした(下図左)。しかし、変革を続けるためには、それをけん引する人材や、そのための深い知識を備えた専門家人材がより多く必要になります(下図左)。

専門家人材については、企業のコアとなるノウハウに関する分野を除けば、中途採用や外部委託など外部人材の活用も可能です。しかし、「変革けん引人材」は、企業の成長、発展の核となる人材でもあるため、できれば企業内部で育成したいところです。

変革が急がれる中、こうした人材を新人から育成していたのでは間に合いません。現実的には、従来のミドル層を、社内調整役から変革けん引人材へと転換するべく、計画的育成を進める必要があると言えるでしょう。

現状の人材開発の問題点

こうした状況において、人事制度や人材開発の面でも課題への対応が遅れています。

従来の日本企業においては、均質なメンバーをゼロから育成し、均一性を重視する人材開発が行われてきました(下図左)。しかし今後、メンバーが多様化してく中で個々の人材を活かすためには、一人ひとりのスキルや専門性を適切に評価して活かせる仕組みが必要です(下図左)。

たとえば、一般に行われてきた階層別研修についても、全社一律の内容ではなく、その人の得意不得意、固有のスキルなどを踏まえた内容にしていくことを考えるべきでしょう。

とくにミドル層の育成については、従来のミドル層の役割から変革けん引人材への転換を意識した育成を意識して進める必要があります。

変革に向けたあるべき人材開発とは?

 以上のようなことを踏まえ、今後あるべき人材開発の方向性についてまとめると、下記のように言うことができます。

  • ①『全社均一』の人材開発から『個人の現状やキャリアに適合した』人材開発へ
  • ② 『経験を共有する集団をマネージする人材』開発から 『多種多様な人材を統合して集団をけん引する』人材開発へ
  • ③ 『着実に階層の役割を果たす人材』開発から 『現状の変革を実現できる人材』開発へ

2回では、こうした人材開発のために踏むべきステップについてご紹介していきます。

関連リンク

シリーズ:変革リーダー育成のススメ

▶第2回:変革リーダーをどう育成するのか?アセスメントの重要性
▶第3回:企業変革に必要な2種類の変革リーダーと具体的な育成方法