5分でわかるビジネストレンドワード
EX向上でエンゲージメントを高める
人材の流動性が高まる中、企業が優秀な人材を確保するために従業員体験(EX)の施策が注目されています。EXとは何か、EXを高めることで企業にどのような効果があるのかを解説します。
EXとは何か?
「従業員体験」を表すEXは、Employee Experience(エンプロイーエクスペリエンス)を略した言葉です。従業員が会社の中で働くことを通して得るすべての経験を指し、体験を通じて心理的・感覚的に感じること、考えることもEXの要素の一つとされています。
EXを測定する指標は、主に「従業員満足度」「従業員ロイヤルティ」「ブランド」「従業員のエンゲージメント」などに分類されます。従業員のエンゲージメント向上のためにEXを高める施策を取り入れる企業も増えていて、近年注目が集まっているキーワードです。
CX、DXとの関係
EXとの関わりの深いCX、DXとの関係についても確認しておきましょう。
CX
CXはCustomer Experience(カスタマーエクスペリエンス)の略で、顧客体験と訳します。もともとはマーケティング用語で、従来は商品の機能や性能で価値を測るためのものでした。昨今では、顧客が製品やサービスを知った段階から、購入、利用して破棄や解約するまでの一連の体験と、それらに基づき顧客が企業に感じる価値を測るために使われています。購入後の企業のフォロー体制や情報交換のできるコミュニティの提供もこうした価値の一部といえます。
顧客の消費スタイルは、モノ(商品)を中心とした消費から、体験を中心としたコト消費、感情的価値を重視するトキ消費・イミ消費へと変化していて、顧客の満足度を高めるにはCXの向上が重要といわれています。
EXは、CXのC(顧客)をE(従業員)に置き換えたものと考えることもできます。また一般的に、EXが高い企業はCXも高いとも言われています。EXが高まることで従業員の企業へのエンゲージメントが向上し、仕事の生産性が上がり、そのことがポジティブな要素としてCXにも還元されていくというように、相乗効果を生み出すと考えられるのです。
DX
DXはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略で、デジタル技術の発展により革新的なサービスや価値観を生み出すことを指しています。CXやEXを高めるためにも、DXは大きな役割を果たすため、EX、CX、DXはそれぞれ個別にとらえるののではなく、お互いを循環させながら作用させるのが理想的です。
たとえば、DXによって顧客や従業員の行動データ分析することで、CXやEXの向上を図ることができます。さらにCXやEXがポジティブに作用しあうことで、DXがより一層推進されるというように、これらの3つの概念はつながっています。
企業がEX向上に取り組む意義は?
米国では、EXを充実させるために投資をしている企業の方が、そうでない企業に比べて4倍もの利益を創出しているとする調査結果もあるなど、EXと業績の間には強い相関が指摘されています。
企業がEX向上に取り組むと、企業と従業員との間に信頼関係が生まれ、従業員満足度やエンゲージメントの向上にもつながります。エンゲージメントが高まると、従業員のモチベーションの向上、生産性の向上や組織の活性化などのさまざまな相乗効果が生まれ、その目に見える成果として利益が生まれると考えられます。
また、人材の流動性が進み企業の人材不足が高まる中、従業員にとって魅力的な企業でないと選ばれなくなっています。優秀な人材を自社に定着させるためには、従業員エンゲージメントを高めることが重要であり、そのためにもEX向上に取り組む必要があるといえるでしょう。
EX向上のための取り組み例
EXを高めるためには企業が従業員に対する理解を深めることが大切です。そのためには、入社前から退社後まで、さまざまなタッチポイントでできる施策があります。具体的な取り組みの例を紹介します。
- 面接前に企業風土を知ってもらうためにカジュアル面談を行う
- 新入社員のオンボーディングを強化し、職場に早く馴染めるようにする
- 適切な評価を行う人事制度を導入する
- テレワークやハイブリッドワークなど柔軟性のある働き方をデザインする
- 従業員に充実した学びの機会を提供する
- 子どもの保育所をオフィス内に設置する
- 従業員専用のカフェテリアの設置する
- 1on1の実施により、個人が抱えている課題解決をサポートする
- 退職後のアルムナイ制度やコミュニティの設計をする
その他、「業務」「働き方」「人間関係」などのテーマに分けて必要な施策を考える方法もあります。
EX向上のためにはさまざまな施策が考えられます。いずれにしても、従業員に対する理解を深め、従業員のニーズに合った施策を考えることが成功への第一歩といえるでしょう。