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モチベーションを左右する「アンダーマイニング効果」「エンハンシング効果」

公開日:2024/11/21 更新日:2024/11/21

仕事のパフォーマンスを上げるためには、一人ひとりのメンバーが高いモチベーションを保っていることが重要です。「アンダーマイニング効果」と「エンハンシング効果」とは、外発的動機と内発的動機の関係によってモチベーションが上がったり下がったりする現象のこと。それぞれの効果について解説し、モチベーションを高めるためにはどうすればよいかを紹介します。

外発的動機、内発的動機とは何か?

「アンダーマイニング効果」と「エンハンシング効果」について説明する前に、まずはその前提となる2種類のモチベーション、「外発的動機」と「内発的動機」について確認しておきましょう。

外発的動機

外発的動機は、外部からの刺激や働きかけによって生まれる動機のことで、外部からコントロールできるモチベーションとも言えます。例として次のようなことが当てはまります。

  • 物質的な報酬(昇給、昇格など)
  • 懲罰
  • 過度な競争環境
  • 監視(マイクロマネジメント)
  • ノルマや締切

外発的動機づけは、報酬や罰などの刺激を設定することで比較的簡単に行うことができ、即効性もあります。一方で、刺激には慣れてしまいやすいため、モチベーションが長続きしないという面もあります。

内発的動機

内発的動機とは、個人の内面的な興味や関心から湧き出すモチベーションのことです。「能力を高めたい」「楽しい」「達成したい」「新しいことを体験したい」などの気持ちは内発的動機に当たると言えます。

内発的動機は個人によって異なるため、動機付けは難しく、即効性も期待できません。しかし、本人の関心の高いことがもとになるため、モチベーション維持には効果的です。

<関連URL>

「内発的動機」を引き出し、活かす

アンダーマイニング効果とはどのようなものか

アンダーマイニング効果とは、本来あった内発的動機が外発的動機によってかえって低下してしまうことで、アメリカの心理学者エドワード・L・デシらの実験により明らかになりました。

たとえば、もともと純粋な楽しみとして絵を描いていた人がいたとします。その絵が売れるようになると、絵を描く目的が楽しみ(内発的動機)から報酬(外発的動機)に置き換わることになります。その結果、「絵を描いても売れないと楽しくない」「絵を描くことを純粋に楽しめなくなった」というように、内発的動機が失われてしまうことがあります。こうした現象がアンダーマイニング効果です。

アンダーマイニング効果は、「自分で決定している」という自己決定感や、「自分は努力すればできる」という有能感が低下したときに起こりやすいと言われています。 

報酬や罰則、ノルマなどは、外発的動機として短期的には有効なケースもありますが、厳しすぎる条件はアンダーマイニング効果につながりやすく、モチベーションの持続性も低くなります。上司などからの指導に対して、「やらされている」と感じてしまい、自己決定感や有能感が低下するからだと考えられるでしょう。

エンハンシング効果とはどのようなものか

外発的動機づけも、場合によっては内発的動機を高める方に作用する場合があります。

たとえば、昇進という外発的動機づけによって熱心に業務に励んでいるメンバーがいたとします。そのことを尊敬する上司から褒められると、メンバーのモチベーションがアップすることがあります。「褒められる」こともある種の報酬であり、外発的動機ですが、それによって「期待に応えたい」という内発的動機が高まり、モチベーションが上がるというわけです。これがエンハンシング効果と呼ばれる現象で、アメリカの発達心理学者、エリザベス・ハーロックの実験によって証明されました。

モチベーションを上げる評価の仕方とは

アンダーマイニング効果を防止し、エンハンシング効果を高めることができれば、従業員のモチベーション維持や生産性の向上につながるといえます。そこのためにはどのようなことに気を付ければよいかを考えてみましょう。

目に見える報酬を与えるだけでなく、言葉で評価する

一説では、同じ外発的動機でも、金銭や昇格などの目に見える報酬はアンダーマイニング効果を生みやすく、褒め言葉など言語による報酬はエンハンシング効果につながりやすいとも言われています。目に見える報酬と言葉による評価とを比較すると、言葉による評価の方が従業員の自己決定感や有能感を高めやすいともいいます。

つまり、従業員が結果を出した際には、金銭などの目に見える報酬以外にも「能力を認めていること」「頑張りを賞賛していること」などを直接言葉にして伝えることでエンハンシング効果が起こり、従業員のモチベーションが高まりやすぃと考えられます。

結果だけでなく、過程や努力も褒める

同じ言葉での報酬でも、部下の能力そのものや結果だけを褒めることは「目に見え報酬」に近く、部下は「失敗したら叱られるかもしれない」と感じるようになり、モチベーションが持続しないことがあります。

一方、「毎日の努力が結果につながったね」「契約は細かく準備した結果だね」というように過程や努力を褒めると、部下は「上司が見守ってくれている」「上司が気にしてくれている」と感じ、それに応えたいというエンハンシング効果が起きやすくなると言えます。

マイクロマネジメントを避ける

マイクロマネジメントとは、仕事の進め方などにつて必要以上に細かく指示を出す管理スタイルのことです。しかし、細かい管理、過度な競争環境などは、従業員にやらされ感やプレッシャーを感じさせ、アンダーマイニング効果が起きやすくなります。

上司は部下が自発的に行動しやすいよう、部下に裁量権を認めるなどすること、部下の自己決定感や有能感を高め、アンダーマイニング効果を避けることができるでしょう。

<関連URL>

一歩間違えればパワハラ?「マイクロマネジメント」の問題点

まとめ

外発的動機のすべてが内発的動機を下げるわけではなく、信頼している人からの評価や褒め言葉などの外発的動機づけは、モチベーションアップにもつながります。従業員のモチベーションを維持するには、評価が内発的動機につながるエンハンシング効果を意識して、伝え方や評価の仕方を工夫することが重要なのです。