失敗しない研修計画
本当に必要な人材を育てるために~教育体系のつくり方(1)
研修にはそれぞれに意図があるはずですが、全体として見たときに、それは整合性のあるものになっているでしょうか? 自社にとって本当に必要な人材を育成するためには、ある程度長期的な視野に立った体系的なプランが必要です。本記事では、JMAの2人の営業担当者が、教育体系のあるべき姿について語ります。第一回は、現代のビジネス環境における「教育体系」の重要性と、実際に教育体系を作る際の具体的な考え方をご紹介します。
(1)なぜ教育体系が必要なのか?
――社員向けの研修については多くの企業が実施していると思いますが、教育体系を作るということは、それらをまとめた体系を作るということですよね。そもそも、なぜ個別の研修だけではなく、「体系」が必要なのでしょうか?
営業A
そもそも、評価制度や人事制度は「経営戦略を実現する」ためのものですよね。「何かを実現するために、経営戦略と人事戦略の連動が欠かせない」というのは、多くの経営者にとっての共通認識だと思います。
営業B
実際、JMAで実施している『経営課題調査』で組織人事領域における経営課題を聞いた中でも、最も多いのが「経営戦略と連動した人材戦略の策定と実行」でした。
営業A
社員の立場からすれば、「なぜこの研修を受けるのか」と考えたときに立ち戻る場所が教育体系。それが経営戦略と連動していれば、学ぶことへの納得感が高まります。管理職研修などにしても、いきなり「管理職になるのだから受けてこい」と言われるのではなく、「これから自分にこういうことが求められるんだ」と分かった状態で学べることになります。
営業B
経営環境の変化も大きな要因になっていると思います。DXやAIの登場、M&Aも含めた事業体質や商材の変化など、企業の経営自体が変わる中で、どの部門にどういう人材が必要かも変わってきている。しかし日本の場合はアメリカ等のように簡単に人を入れ替えるわけにはいかないので、今いる人たちを計画的に育成していく必要があるのです。
営業A
また、若い人は特に「この会社でどういう成長ができるか」をよく見ています。教育体系が整っていなければ、「ここでは成長できない」と判断してすぐ離脱してしまいます。
営業B
実際、優秀な人と働きたいと外資系の会社に転職したのはいいけれど、仕事の仕方が属人的で教育のしくみがなく、結局日系の企業さんに再度転職したというような話も聞きます。そういう若い人たちの「能力を高めたい」という気持ちをうまく拾ってあげることが、採用はもちろん、次の定着にもつながっていくんですね。
<関連URL>
若手社員のリテンション施策
――社員がオンデマンド形式などで自由に学べる仕組みを用意している企業さんも多いようですが、そういう仕組みはどうでしょうか?
社員B
よく聞くのが「提供はしているのだけどあまり利用されていない」というお声ですね。
社員A
利用しているのは一部の限られた人で、学ぶ人と学んでいない人のギャップがどんどん開いていってしまう、という問題点もあるようです。オンデマンド型の学びを取り入れるのはよいと思うのですが、企業として必要な人材を育てていくためには、やはり教育体系の全体像は整えておくべきだと思います。
(2)教育体系はどのように作っていくのか?
――では、「教育体系」とはどこから考えていけばよいのでしょうか。
社員A
基本はいわゆる階層別研修をイメージしていただくとよいでしょう。一般的には、人事制度として等級があるとと思いますので、その等級ごとの要件や期待役割に沿って、体系を整理していただくとよいと思います。
社員B
JMAの場合には、公開セミナーとして階層別のビジネススキルと、人職種ごとの幅広い公開セミナーなどさまざまなセミナーを開催していますので、それをモデルと考えていただくとイメージが付きやすいと思います。
そのうえで、各階層に求められる職能要件とかコンピテンシーなどを提示していただければ、それに合わせてどんな内容の研修を行っていくかが決まります。たとえば新任課長さんに、リーダーシップを身につけるだけでなくお金のマネジメントもできるようになってほしいのであれば、財務会計についてもプログラムに加えるといった形です。
重要なのは、一般的な課長のイメージではなく、「うちの課長は」という主語をきちんと作った上で設計することです。
――新入社員研修や新任課長研修については分かりやすいと思うのですが、先ほどの「若い社員の『能力を高めたい』という気持ちに応える」といった観点からは、その中間のミドル層の教育体系も重要です。そうした部分の教育体系や研修はどのように考えていけばよいのでしょうか?
社員A
繰り返しになりますが、各等級の定義や役割等から組み立てていくことになります。もしもそれが明確でないのであれば、対象となる方々がどんな役割を担い、どんな業務をされているのか、ヒアリングしていきます。たとえば「部下ではないけれど後輩は持っていて、指導にも当たってほしいと思っている」といった言葉をいただければ、それを必要なスキルに落とし込んでいくことができ、必要な研修を作ることができます。
社員B
実際には、 こうしたカスタマイズと先ほどご紹介したような公開セミナーを併用しながら組み立てていく場合が多いです。一つひとつのスキルについては、集まる人数によっては公開セミナーで行ったほうがコスト的にメリットがあるなど、さまざまなケースが考えられますからね。