5分でわかるビジネストレンドワード
多様性を成功に導くコンフリクト・マネジメント
組織である限り、日々さまざまな意見の対立や軋轢が生じます。対立というと一見ネガティブなイメージが先行しますが、適切に対処すれば組織の成長に直結するもの。対立への対処法としてのコンフリクト・マネジメントについて考えます。
コンフリクト・マネジメントとは何か
コンフリクト(Conflict)には、「葛藤」「衝突」「対立」という意味があります。ビジネスの現場でのコンフリクトは、異なる意見や価値観がぶつかり、双方が意見を譲らず対立する状態のことです。コンフリクトは個人間だけでなく、グループ間、部署間などさまざまな範囲で発生することがあります。
こうしたコンフリクトについて、起きたときに放置するのではなく、積極的に問題解決のために活用する取り組みを「コンフリクト・マネジメント」といいます。もともと日本企業には、協調を重視し、対立をネガティブに受け止める傾向がありましたが、意見の衝突を前向きに捉えることで、物事を多角的な視点で見たり、意見しやすい環境を作ることもできるのです。
なぜコンフリクト・マネジメントが注目されているか
ビジネスの現場ではさまざまな対立や葛藤があって当然です。加えて昨今は、働き方の多様化や、不確実性の高いビジネス環境などによって、よりコンフリクトが発生しやすい状況にあります。たとえば以下のような場面は典型的なコンフリクトの例といえるでしょう。
開発部門と運用部門の対立
システム運用の現場では、開発部門の用意したマニュアル通りではうまく運用できないこともあります。
製造部門と営業部門の対立
よいものを作りたい製造部門とより多く買ってもらいたい営業部門はコストの面で対立する可能性があります。
中小企業文化と大企業文化の対立
合併や転職が増えた今、企業文化による価値観の違いや仕事の進め方の違いからコンフリクトが発生するケースも増えています。この種のコンフリクトは部署内で発生することもあり得ます。
こうしたコンフリクトは、放置すれば関係悪化や生産性の低下につながりかねませんが、根本原因を探ることで、より高度な運用方法を生み出したり、統合された新たな文化を築くことにつながる可能性もあります。こうした事情から、コンフリクト・マネジメントに注目が集まるようになったと考えられるでしょう。
コンフリクトが起こる理由とは?
コンフリクトが起こる理由としてよくあるのが次の3点です。
条件の対立
業務上の立場や仕事内容の違いなど、お互いの持つ条件によって起こる対立です。たとえば、「品質とコスト」「納期と安全」など優先順位に対する意識の違いなどがあります。
認知の対立
同じ仕事について、価値観や思考の違いから起こる対立のことです。「伝統を重視する価値観」と、「変革を重視する価値観」では出す結論も異なります。
感情の対立
個人的な感情によって生じる対立です。過去の確執やトラブル、劣等感などの嫉妬が原因となります。3つの対立の中で一番解決が難しい問題です。
コンフリクト・マネジメントを行う際のポイント
コンフリクト・マネジメントを効果的に行うポイントとしては次のようなことが挙げられます。
コンフリクトをポジティブに捉える
一般的にはネガティブに捉えられがちなコンフリクトですが、「問題解決のきっかけになる」などプラスの作用もあります。このように、まずはコンフリクトをポジティブに捉えることが重要です。
コンフリクト・マネジメントに取り組む認識を共有する
コンフリクトは従業員や組織の「間」で起こるため、一部の従業員のみでマネジメントしようとしても機能しません。組織全体でコンフリクト・マネジメントに対する共通の認識を持つことが重要であり、そのためには、コンフリクト・マネジメントに関する研修を行うことも有効です。
管理職、リーダーが積極的な姿勢を見せる
企業全体としてコンフリクトの存在を認め、管理職、リーダーが率先してマネジメントに取り組む姿勢を見せることも重要です。管理職が取り組むことで、対立を避けるのではなく、意見しやすい環境が整います。
コンフリクト・マネジメントの手順
コンフリクト・マネジメントは一般的に、次のような手順で行われます。
相互理解のための話し合いを行う
コンフリクトが発生したら、「コンフリクトはプラスに働くもの」という共通の認識のもと、双方が自由に意見できる話し合いの場を設定しましょう。相手を否定せずに、相手の話に耳を向ける姿勢で望むのがポイントです。
問題の本質を見極める
対立している問題の原因を探ります。「一致している部分はどこか」「相違点は何か」など整理し、「条件の対立」「認知の対立」「感情の対立」のどれに当てはまるのか分析し、問題の本質を見極めます。
客観的な解決案の提示
どちらかの意見を優先させるのではなく、双方があらゆる角度から客観的に原因を探り、解決策を提示します。解決策を考える際、意識を人に向けるのではなく、原因となる物事にスポットを当てるのがポイントです。
合意形成と協力体制の構築
提示された解決策から、双方が納得のいく着地点が見つかったら合意形成し、解決に向かって協力しながら取り組みます。双方で決めることで認識のズレがなくなり、さらなるコンフリクトを防ぐことにもつながります。
コンフリクト・マネジメントに役立つスキル
コンフリクト・マネジメントを成功させるには、コンフリクトの原因を分析し、コンフリクトが発生した双方への意見を尊重しながらも解決に導くスキルが必要です。たとえば次のようなスキルが役に立つでしょう。
ファシリテーション
ファシリテーションは対話を促すスキルです。双方の対立から建設的な解決策を導くためには、ファシリテーションスキルを持つ進行役が大きな役割を果たします。
<関連URL>
オンラインで学ぶ「オンライン・ファシリテーションスキル向上研修」
クリティカルシンキング
考えたことを疑い、検証する思考を「クリティカルシンキング」といいます。問題の本質を見極める思考法として、コンフリクトの原因を客観的に見極めるのに役立つでしょう。
<関連URL>
ロジカル・クリティカル・ラテラル・シンキング実践習得セミナー
コンフリクトに適切に対処すれば、企業の生産性の向上や新しい価値創造にもつながります。ネガティブに捉えるのではなくマネジメントするという視点から、必要な対処法を考えてみるのもよいのではないでしょうか。