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公開日 : 更新日 : 研修効果を損なう!?「10の落とし穴」とその回避策

どれほど考えて企画した研修も、設計や運用の段階で小さな抜けや誤解が積み重なると、成果は大きく損なわれます。終了後に「盛り上がったけど成果は見えない」「研修後に何も変わらなかった」といった声を聞くのは残念なこと。そこで本稿では、研修を設計から評価・定着までスムーズに進めるために、特に注意すべき10の落とし穴と実践的な回避策を紹介します。自社の研修を見直すチェックリストとしてご活用ください。

研修設計の落とし穴

1.目的が広すぎる/“やらないこと”がない

研修目的が「スキルアップ」や「意識向上」のように抽象的だと、内容が拡散し、成果も測りづらくなります。特に“やらないこと”を決めないまま進めると、あとから入ってくる追加の要望のせいで設計が迷走することも。関係者によって期待する成果や対象範囲が異なるまま進めてしまうと、終了後に「想定と違う」という不満が残ります。
回避策:初期の段階で「研修のゴール」を明確化しましょう。対象者・成功指標とともに「今回はこれはやらない」という除外範囲を明確化するのもよい方法です。さらにこれらをまとめたものを全関係者で共有することで、ブレや抜けを防ぎつつ、後からの追加や軌道修正も迷わず進めることができます。

2.受講者の粒度がバラバラ

新人とベテラン、異なる部門の社員が同じ内容を受けると、理解度や関心の差が大きく、演習や議論がかみ合わないことがあります。ミスマッチは受講者の満足度低下や実務活用度の低下を招きます。
回避策:事前に入口テストや自己評価などのアセスメントを行ってレベルや背景を把握しておきます。これをもとに、研修の共通部分とレベル別モジュール部分を作っておいて組み合わせるのもよいでしょう。受講者グループについても必要に応じてグループ分けを行い、学びやすさと適切な負荷を両立させましょう。

3.演習が“自社ごと化”できるものになっていない

事例を使って考える演習は効果的ですが、その事例が他社の事例や抽象的なケースだけでは、参加者が自分の業務への適用をイメージできず、研修後の行動変容につながりません。「現場で使えない」と受け止められると参加意欲も低下してしまいます。「長く使えるように」と汎用性を優先しすぎたためにこのような結果になることもあります。
回避策:直近の案件や社内帳票、実データなど、業務に直結する素材を用いて自社固有のケースを作成します。準備の手間はかかりますが、現場の課題に即した演習は関心を高め、行動移行を促進します。

4.講師任せで内容が明確でない

研修の狙いや重点ポイントを講師に丸投げしてしまうと、解釈の違いから内容が想定と異なる方向に進んでしまうことがあります。特に複数回実施する研修や、複数講師が担当する研修ではばらつきが大きくなります。
回避策:講師との情報共有をしっかり行うことが大切です。重要なポイントは事前に文書化し、役割分担を明確化、目的とゴールを共有することで、一貫性と質を担保します。

運用の落とし穴

5.上司が関与していない

上司が研修の目的や内容を理解していないと、せっかく学んだ人が現場でのフォローを受けられず、学びが活かされません。受講者も「どうせ現場では使われない」と感じ、意欲が低下します。
回避策:上司向けに事前に情報共有を行い、目的と期待される行動を伝えます。研修直後(翌週など)に1on1やフォロー面談を組み込むとなおよいでしょう。現場での支援体制を仕組み化することで、学んだことの定着率は格段に向上します。

6.当日の雰囲気だけで効果を判断してしまう

研修が盛り上がるのはよいことですが、それ自体が成果や行動変容を保証するわけではありません。感覚頼みの評価は、改善点を見逃す原因となります。特に経営層や人事が「参加者が楽しそうだった」で満足してしまうケースは要注意です。
回避策:観察シートで参加度や発言頻度、演習成果などを記録。講師側・運営担当者でレビューし、データに基づいた評価と改善を行いましょう。

7.当日の運営負荷が高く肝心なところが抜ける

当日の運営担当は進行や突発対応に追われ、遅刻や中抜け、課題提出など、本来チェックすべき部分のチェックが漏れてしまうことがあります。
回避策:事前に運営チェックリストを作成し、LMSなどを使って資料配布・課題提出・リマインドを自動化するのが理想的。手作業を減らし、本質的な運営業務に集中できる環境を作ります。当日の業務分担についてもしっかり決めておくと、抜け漏れのない対応ができます。

評価・定着の落とし穴

8.満足度しか測っていない

「満足度」は感情的評価に過ぎず、行動変容や成果は測れません。満足度だけを評価基準にすると、表面的な改善に終始し、実質的な効果検証ができません。
回避策:研修企画の初期段階で評価に関する設計を行っておきましょう。行動KPIを設定してその達成度を見る、上司のフィードバックを受けるなど、多面的な評価が改善の方向性を明確にします。

9.研修後に“何もしない期間”がある

研修直後の意欲は時間とともに急速に低下します。せっかく学んだことを活かす行動の機会がなければ、学びは定着せず、投資効果も薄れてしまいます。
回避策:30日後、60日後などのタイミングでフォローがあることを事前に伝え、小課題→発表→レビューなどのサイクルを設定。継続的なアウトプット機会を設けることで知識とスキルの定着を促すことができます。

10.振り返りが形骸化している

次の研修に向けて改善点を探る振り返りは重要ですが、参加者に「どう感じたか」といった感想を聞くだけでは改善点が明確にならず、振り返りが形式的な場となってしまいます。
回避策:事前に立てたKGI/KPIの進捗、成果、未達の原因仮説、次の一手などをフォーマット化し、すべての研修で定例化します。これにより、振り返りを実践的な改善の場に変え、次回の研修や業務に反映させることができます。

まとめ

研修の効果は、プログラム内容や講師の力だけでなく、設計・運用・評価・定着のプロセス全体で決まります。今回の10項目は、研修の質を左右する重要なチェックポイントです。自社の研修を見直す際には、このリストを活用し、落とし穴を未然に防ぐ仕組みを整えてみてください。また、JMAではこうしたお手伝いもできますので、ぜひ気軽にご相談ください。

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