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公開日 : 更新日 : ハラスメント防止研修に加えるべき“ロジハラ対策”とは
「ハラスメント」という概念が職場の問題として浸透し、企業でもさまざまな対策や意識改革が進められてきました。そんな中で新たに注目されているのが、「ロジハラ(ロジカルハラスメント)」です。一見正しいことを言っているようで、職場に悪影響を及ぼしかねない「ロジハラ」について、その特徴と対策方法を紹介します。

見落とされがちな“正論型”ハラスメント
職場でのハラスメント対策は進んでいますが、その多くはパワハラやモラハラなど、明確な攻撃性を伴う言動への対処が中心です。
一方で、「正しいことを言っているつもり」で相手を追い詰めてしまう行為は見落とされがちです。言われた側にしてみれば、「言い分を聞いてもらえない」「人格を否定された」と感じることも多く、メンタル不調や離職のきっかけになるなど、深刻な影響が出かねません。しかし、「論理的に正しい」という理由でハラスメントとして認識されにくいのが現状で、このとが精神的な負担となり、離職やメンタル不調の原因となるケースも起こっています。
こうした背景から、ロジカルハラスメント(以下、ロジハラ)に焦点を当てた対策が求められるようになってきています。
ロジハラとは何か?パワハラとの違い
ロジハラとは、ロジカルハラスメントの略称です。相手に正論や理屈を過剰に突きつけることで、精神的苦痛や不快感を与え、感情や立場を追い込む行為を指します。たとえば、ミスをしたメンバーに対し、事情を聞くことなく「なぜ同じミスを繰り返すのか」「他の人はできているのに、なぜあなただけできないのか」と一方的に指摘することなどが該当します。このようなやり取りは、相手に強いストレスを与え、自信喪失や萎縮を招き、職場全体の雰囲気も悪化させる要因になります。
パワハラ(パワーハラスメント)は、上司などの優越的な立場を利用して相手に精神的・身体的な苦痛を与える行為を指しますが、ロジハラは、立場に関係なく「正論」を武器にする点で、パワハラとは異なる特徴を持っています。
職場でよくあるロジハラの例
ロジハラは、日常的なコミュニケーションの中で無自覚に発生することがあります。ここではその典型的な例を紹介します。
会議中の論破
議論の場では、多様な意見が交わされることが理想ですが、「その意見は理屈が通らない」「現実的ではないからやり直して」のように一方的に否定することはロジハラに該当します。こうした発言が続くと、他のメンバーが意見を出しづらくなり、組織全体の創造性を損なうという意味でも悪影響を及ぼします。
感情の切り捨て
「報連相」や相談の場で、相手の気持ちを無視して「感情は関係ない、事実だけを話して」と言い放つことはロジハラの一種です。感情面を軽視することで、相手の信頼を失い、真の課題を共有できなくなるリスクがあります。
背景を無視した要求
納期を守れなかった部下に対し、「どんな理由があっても期限を守れなかったことは問題だ」と一方的に責め立てることもロジハラに該当します。背景を無視した指導は、意欲の低下やさらなるミスの連鎖を招く可能性があります。
このように、ロジハラは受け手に強いストレスを与え、職場の心理的安全性を脅かす要因となります。
なぜロジハラが発生するのか
ロジハラが起こる背景には、いくつかの組織的要因があります。
論理重視の評価文化
成果主義や数値目標が重視される職場では、感情や背景を軽視する風土が生まれやすくなります。「正しいことを言えばよい」という思考が強まることで、相手の立場への配慮が欠け、ロジハラが発生しやすくなります。
研修内容の偏り
ビジネスにおいて論理的であることは重要なスキルです。そのため、研修等でも「論理的思考力」「説明力」に重点が置かれがちです。一方で、感情への配慮や信頼関係の構築といった“人間関係スキル”については十分に扱われていないのが現状です。こうした状況もロジハラを生む要因になっていると言えます。
コミュニケーション機会の減少
リモートワークの普及などにより、直接的対話をする機会は減少しています。オンラインでは感情が伝わりにくく、相手の状況を誤解したままやり取りが進むことが多くなり、ロジハラを助長するケースもあります。
こうした複数の要因が重なることで、ロジハラが発生しやすくなっていると考えられます。
論理と配慮のバランスが職場の安全性を高める
ビジネスの場では、ロジカルな思考や説明力は欠かせないものです。正論を伝えること自体は決して悪いことではありません。
しかし、ロジハラは「意図せず加害者になる」リスクをはらんでいます。相手の感情や状況に配慮せず、一方的に正論をぶつけることが、結果的にハラスメントとなる可能性があるのです。
重要なのは、「論理」と「配慮」のバランスを取ること。今後は、ハラスメント防止研修や管理職研修の中にロジハラ対策を組み込むことで、職場の心理的安全性を高め、健全なコミュニケーションを育むことができるでしょう。
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