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女性活躍とダイバーシティ〜なぜ進まないのか?
ダイバーシティの一環として女性活躍に取り組んだものの、うまくいかないという声もよく耳にします。なぜ女性活躍が進まないのか、推進にはどうすればよいのかを考えます。
女性活躍の現状とは
2023年6月、内閣府は「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」(女性版骨太の方針2023)を公表しました。具体的には、東京証券取引所プライム市場の上場企業について、女性役員の比率を2030年までに30%以上とする目標を掲げています。
しかし現状では、東証プライム上場企業(5月31日時点で1835社)全体で、2022年の女性役員比率は11.4%。約2割の企業で女性役員がおらず、女性役員が30%以上を占める企業は2.2%と、政府目標からかけ離れた数値となっています。これらの数字からも、多くの企業にとって女性活躍の推進は共通の課題と言うことができます。
女性の管理職登用が進まない理由
そもそも、女性の管理職登用も思い通りには進んでいないのが現状です。その理由には次のようなことが考えられます。
女性自身がなりたがらない
候補となる女性社員自身が、管理職になることを望まない場合、その背景には下記のような事情があるようです。
→キャリアプランが画一的だから
たとえば育児をしている女性と独身の女性では立場が異なります。社内に同じような境遇を乗り越えたロールモデルが多く存在していれば、将来のキャリアを想像しやすくなりますが現状では、企業では画一的なキャリアプランしか提示できていないことが多いのも事実。そのため将来のキャリアが想像できない不安から昇格を望まないケースが発生しています。結果として女性が管理職になるロールモデルも育たず、悪循環になってしまいます。
→女性が孤立してしまう
女性を登用しようとすると、「女性管理職比率」達成のための数字合わせだという批判的な声があがるなど、「お飾りとしての登用」と見られるケースもあります。また、「女性には任せられない」という風土の職場ではせっかく女性が管理職になっても意見が通らないことも。いずれのケースも、当人が孤立してしまうことになります。
→必要な業務経験を積む機会が与えられていない
これまで女性が行ってきた職務は、男性が主として行う職務の補助的な職務である場合が多く、管理職になるために必要な業務経験を積む機会が与えられていないことが指摘されています。結果として女性自身が管理職になることに自信を持てず、昇格を断るケースがあるのです。
制度の不備
会社制度が女性活躍を阻むものになっているケースもあります。以下のようなことが考えられます。
→産休・育休制度はあるがキャリアアップの仕組みがない
産休・育児休業などの制度が整うと、女性の「定着度」は高くなります。しかしキャリアアップの仕組みがなければ管理職登用にはつながりません。長期的な女性社員の活躍推進を促すマネジメントも確立されていないケースは多いです。
→管理職の労働環境がライフイベントとマッチしていない
管理職は長時間労働や転勤が必要になるなどの条件があると、育児などのライフイベントに左右されやすい女性たちにとっては不安要因となります。
女性活躍を推進するためにどうするべきか?
こうした現状を踏まえつつ、女性活躍を推進するにはどうしたらよいのでしょうか。
女性管理職を少数派にしない
経営陣や管理職の中に女性が一人だけだと、意見を出しづらく、意見を出しても通らないという傾向があります。これを解消するには、「ある程度の人数」を登用することが必要です。女性の人数を揃えることで意見が通りやすくなるだけでなく、次世代の女性が目指したいロールモデルができ、好循環が生まれます。
時間的制約のある人が不利にならないようにする
社内の会議を10〜15時のコアタイムに集中させるなどのルールを設定することで、時短勤務などの制約がある人でも意見を述べたり、業務の進捗を把握しやすくなります。
属性ではなく「個人」で判断する
「子どもがいるから出張は無理だろう」「女の人に営業を任せるのは厳しいのではないか」といった考え方は、一見相手に配慮しているように見えて、結果的に管理職への道を閉ざすことになりかねません。そうならないためには、属性で判断するのではなく、社員がどのような働き方を望んでいるのかを丁寧にヒアリングするなど、個人に向き合って判断する姿勢が重要です。
評価制度を改訂する
長時間働く人ほど評価されるような制度は、時間の制約がある女性には不利に働きます。時間あたりの労働生産性を重視する評価制度に改訂することで、短い時間でも効率的に働く人が評価されやすくなり、時間的制約のある女性の管理職候補への道が開けるでしょう。
女性のスキルアップに向けた投資を惜しまない
企業側が意識的に女性を引き上げる姿勢を見せることも重要です。論理的思考、リーダーシップ研修、管理職研修など積極的に幅広い研修の機会を提供していきましょう。
女性活躍研修についてはどう考えるべきか?
いわゆる女性活躍研修についても、実施の仕方次第で効果を発揮しやすくなります。
研修に参加させる理由を明確に伝える
「女性だから」「適齢期だから」と属性のみで召集しても本人が納得感を持てません。他の研修と同じように、「なぜこの研修に呼ばれたか」を明確に伝えることで、参加者本人の研修に対する向き合い方が変わります。
自信をつける機会を提供する
「女性向け」の研修の前に、管理職を目指すに当たって必要なスキルを学ぶ機会を設け、実践経験を積んでもらっておくのも有効です。各種テクニカルスキル、リーダーシップ、マネジメントなどの研修を実施し、それを発揮する機会を提供することで、自信を育てることができます。
あるべきダイバーシティとは?
ダイバーシティといえば「女性の活躍」をイメージする人は多いかもしれませんが、ダイバーシティは「女性」に限ったことではありません。本来のダイバーシティとは、「女性」などの属性よりも個人に着目することが求められるものです。
たとえば、育児中の女性社員が抱える問題と、親の介護をしている男性社員が抱える問題には類似点があります。まずは各個人が置かれている状況に理解を示し、その人に合ったキャリアプランを提示できることが重要なのです。