5分でわかるビジネストレンドワード

リバースメンタリングが組織にもたらす効用

公開日:2023/11/22 更新日:2023/11/22

上司や先輩社員が若手社員をサポートする「メンタリング」を導入している企業は多いかもしれませんが、逆に若手から上司や先輩に助言を行う「リバースメンタリング」という手法も出てきています。リバースメンタリングとは何か、その意義などを紹介します。

リバースメンタリングとは何か

リバースメンタリングとは、若手社員が上司のメンター(指導者、助言者)となる教育支援制度のことです。若手社員が指導者の立場となり、上司・先輩社員に、デジタルスキルや最新トレンド、若い世代の価値観など、若手社員のほうが詳しい分野について教えるケースが多いようです。

 リバースメンタリングが生まれたきっかけは、ゼネラル・エレクトロニック(GE)の元CEOジャック・ウェルチ氏による逆メンター制度の導入だといわれています。当時はインターネットの普及前で、「若手社員の指導によって上司や先輩社員にインターネット技術を習得させる」というミッションのもと、ジャック・ウェルチ氏自身も若手から指導を受けたのだそうです。

メンターとは何か

メンターとは日本語では「指導者、助言者」という意味で、指導を受ける人の先輩社員が担当するのが一般的です。指導やサポートを受ける側を「メンティ」といいます。メンターがメンティに指導することをメンタリングといい、対話を通じてメンティの自発的な行動や成長を促すことを目的として行われます。メンターは、メンティのキャリア形成上の課題解決や悩みの解消、行動につながるよう援助する役割を担います。

企業がメンター制度を導入する場合、基本的にメンターは悩みや不安も打ち明けやすいよう、評価を行う直属の上司や先輩ではなく、他部署などの先輩社員がメンターに選ばれます。メンターとメンティが定期的にメンタリングを重ねながら、信頼関係を育てることも重要です。

リバースメンタリングを行うメリット

企業がリバースメンタリングを行うメリットとしては次のようなことが言われています。

上司・先輩社員の知見が広がる

若手社員から最新のトレンドやデジタル技術、若者ならではの知識や価値観が共有されることで、上司・先輩社員の知見が広がります。こうした人たちが新しい視点が持つことで、これまでとは違った事業案や施策が生まれやすくなるでしょう。

お互いのコミュニケーションが活発になる

若手社員、上司・先輩社員がお互いの立場を超えて交流できるようになります。お互いの価値観を知る機会にもなります。

若手社員のモチベーションが向上する

立場の交代によってフラットな組織風土が広がると、若手社員の心理的安全性が高まりモチベーション向上につながります。また若手社員にとっては、自らの知識やスキルが組織の役に立っていることを実感でき、業務へのやりがいや企業への愛着心が高まる効果もあります。定着率の向上も期待できます。

管理職のマネジメント力向上につながる

若手社員の価値観や個性を知る機会になり、管理職の視野が広がります。マネジメントの際に気をつけるべきポイントをつかむこともできるでしょう。

リバースメンタリングを実施するステップ

リバースメンタリングを実施する際のステップを解説します。

目的を決める

まずは、リバースメンタリングを「何のために導入するのか」「どのような効果を得たいのか」という目的を決めましょう。どの世代、役職の人にどのような効果をもたらしたいのかを考えるとよいでしょう。

メンターとメンティの組み合わせを作る

目的を踏まえてメンターとメンティを決定します。直接の上司と部下など利害関係がある組み合わせは避けるなど配慮しつつ、それぞれの持つスキルや性格などの相性を考慮して人選するといいでしょう。

対象者に対して目的を共有する

人選が終わったらメンターとメンティに対して、リバースメンタリング実施の目的を共有します。「メンターに期待すること」「習得したい内容」など要望も確認します。人事のサポート内容も伝え、実施に向けて安心感を与えることも大切です。

オリエンテーションを実施する

人事担当者を中心にリバースメンタリングのキックオフの場としてオリエンテーションを実施します。対象者にガイドラインの共有や、メンターには心構えやスキルなど習得させることが目的です。研修を実施するのも効果的です。

リバースメンタリングを実施する

リバースメンタリングへの理解が高まったら実際にメンタリングを行います。人事担当者は新しい制度の導入によって現場が混乱していないかを定期的に確認するとよいでしょう。

フォローアップ

リバースメンタリングの実施後は、メンターとメンティに対して定期的にフォローアップを行いましょう。目的に沿って実施できているかチェックしたり、ルールの見直しなど行うことで問題に対し迅速に対処できます。

リバースメンタリングを導入する目的

実際にリバースメンタリングを導入している企業は、どのような目的で行っているのでしょうか。

若手社員の育成のため

若手社員が上司や先輩社員とコミュニケーションをとることで、他者への接し方、教え方などが身につき成長につながっています。

組織の活性化やイノベーションの創出のため

最新のトレンドや若手の感性を知ることで組織が活性化し、上司や先輩社員が新しい知見を持てるようになり、新規事業やイノベーション創出につながった例もあります。

フラットな組織づくりのため

世代を超えて異なる価値観に触れることで、フラットな組織づくりが進みます。

ダイバーシティの推進

属性を超えた相互理解が高まるという効果を、ダイバーシティの推進に活かしている例もあります。

 

リバースメンタリングは教育支援の手法としてだけでなく、組織の活性化やダイバーシティの推進にも効果が期待できる手法です。他者への接し方やマネジメントを学ぶ機会としても、検討してみたい手法といえるでしょう。