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公開日 : 更新日 : ダイバーシティの進化型、コグニティブダイバーシティとは何か

ダイバーシティについてはすでに多くの企業で重視されている中で、注目されはじめたのが「目に見えない属性」に着眼したコグニティブダイバーシティです。コグニティブダイバーシティとは何か、そのメリットや実践のヒントをまとめます。

デモグラフィックダイバーシティとコグニティブダイバーシティ

日本の企業で行われてきたダイバーシティへの取り組みでは、一般的に、「女性」活躍、「外国人」雇用、「障害者」雇用、「シニア」活躍というように、従業員の「変えることができない属性」に着目してきました。このような属性面での多様性のことを「デモグラフィックダイバーシティ」といいます。デモグラフィックとは、統計学的な「層」を表す言葉で、年齢、性別、居住地などで分類する属性を表していると言えます。

これに対し、「コグニティブダイバーシティ」とは、それぞれの価値観や経験、能力の違いなど、目に見えない特徴の多様性のことを言います。「認知的多様性」とも呼ばれます。

なぜコグニティブダイバーシティが注目されているのか

コグニティブダイバーシティが注目されている背景には、これまでに行われてきたデモグラフィックなダイバーシティへの取り組みが必ずしも成果を上げていないという事情があります。

デモグラフィックダイバーシティの「デモグラフィック」はもともと統計学的な属性を指しているため、「管理職の女性比率」や「障害者の雇用率」のように、推進度が数値化しやすいという特徴があります。多くの企業がこの種のダイバーシティから着手してきた背景には、数値目標が立てやすく検証もしやすいという特徴も作用していたと言えるでしょう。

しかし、この種のダイバーシティには弱点もあります。たとえば以下のような点が挙げられます。

数値ありきになりがちである

たとえば「女性管理職比率」などの目標数値があると、それを満たすことが目的になってしまいがちです。結果として、登用だけで終わってしまって本人への必要なサポートが行われず、肝心の「活躍」が実現しない、いわゆる「トークニズム」に陥る場合もあります。
また、「数字を合わせるために女性の管理職を増やした」と見られて男性から反発を買うなど、別の属性を持つメンバーにネガティブな印象を抱かれる可能性もあります。

アンコンシャスバイアスが働く

属性単位で捉えた結果、「最近の若者は出世よりもワークライフバランスを重視している」「外国人従業員の採用は、今の業態にはマッチしない」など、一人ひとりのメンバーの実態とのアンマッチが起こってしまっている場合もあります。

コグニティブダイバーシティが注目されているのは、デモグラティックダイバーシティが持つこのような弱点を避けるためでもあります。たとえば女性管理職の登用についても、「女性」というデモグラフィックな部分ではなく、「その人ならではの価値観や視点」というコグニティブな側面を評価することで、より本質的なダイバーシティが実現するというわけです。

コグニティブダイバーシティによって何が得られるか

コグニティブダイバーシティを意識することによって期待できるのは以下のような効果です。

イノベーションの創出

従業員の多様な価値観やスキルが混ざり合うことで、新しい発想が生まれやすくなります。

リスクの軽減

さまざまな視点からものごとを見ることが可能になり、判断の誤りや盲点に気づきやすくなります。

問題解決力の向上

異なる視点と論理構造を持ち寄って考えることができるため、複雑な課題解決にも対応できるようになります。

エンゲージメント向上

多様な意見が受け入れられやすくなることで心理的安全性が高まり、組織全体の士気が上がります。

こうした効果は、ダイバーシティの推進により期待される一般な効果です。ただし、本当に効果をあげるには、デモグラティックなダイバーシティではなく、コグニティブなダイバーシティが必要だ、と考えられるようになっているというわけです。

コグニティブダイバーシティ実現のためにできること

コグニティブな特性は、いわゆる属性と違って分かりにくいこともあり、コグニティブダイバーシティの実現には工夫が必要かもしれません。たとえば次のような取り組みが考えられます。

採用・配置の段階から導入する

採用の段階から、年齢や性別だけでなく、価値観や思考のスタイルなど深層レベルでの多様性を意識します。配置についても同様に考えます。

スローガン化する

コグニティブダイバーシティの考え方を社内に浸透させるために「属性だけではない多様性を認める」ことをスローガン化するのも一つの方法です。教育や研修を通じて多様な思考スタイルの価値を伝えるのもよいでしょう。

失敗・成功を共有する場を設ける

失敗や成功を共有する多様な意見や視点を活かすには、「それを自由に表現してよいのだ」と感じられる心理的安全性が不可欠です。たとえば、定期的に失敗や成功を共有する場を作る取り組みは、多様な考え方を持ってよいのだという心理的安全性につながります。

オープンな対話・議論の場を設定する

他部署や階層の違うメンバーが集まってオープンな対話をする場を作ることは、異なる価値観との出会いが新たなアイデアを生むと実感できる機会となります。

インクルーシブなリーダーを育成する

リーダー自身が多様性を受け入れるインクルーシブな思考を持ち、異なる視点を引き出しながら、対話を促進する役割を担うことも重要です。インクルーシブ・リーダーシップについて学ぶ研修も役立つでしょう。

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「目に見えるもの」をベースとした多様性は分かりやすくはありますが、本来、ダイバーシティの本質はもっと深いレベルの感じ方、考え方の違いにあります。ダイバーシティ推進の意義に疑問を感じている場合も、コグニティブダイバーシティを意識することで効果が実感できるかもしれません。

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