新日鐵住金ステンレス【階層別研修(主任候補)】

カスタマイズ階層別研修
新日鐵住金ステンレス 久次光洋さん(人事・総務部 製造・整備人材室長)に、日本能率協会を利用いただき社内で実施されている研修についてお話を伺いました。
聞き手は日本能率協会 伊勢崎健です。(以下、敬称略。お役職はインタビュー当時)

主任候補者研修において力をいれている部分とは?

(伊勢崎)
今のお立場とお役職について、簡単にお話していただければと思います。
(久次)掲載1
製造・整備人材室という所で室長をしています。
製造・整備人材室とは、製造部門の社員の人事的なサポートをする部署です。私は室長として、採用、育成、人員管理の全体総括を行っています。
(伊勢崎)
今日から主任候補者研修が始まりましたが、どのような位置付けで実施しているのでしょうか。
(久次)
主任候補者研修は、主任としてどういう意識を持つべきなのか、どういう行動が必要なのかといった意識をしっかりと醸成する研修という位置付けです。
主任に必要な知識を習得してもらうというのも当然ありますが、意識の部分の育成に力を入れています。
(伊勢崎)
毎年この研修を実施されていますが、成果はいかがでしょうか?
(久次)
 3日間の研修を3ヶ月にまたがって実施していますが、前期の研修の1日目と2日目にJMAさんのリーダーシップ研修を取り入れています。このリーダーシップ研修が研修の一番のメインだと思っています。
講習を受けた社員からは、”リーダーシップ研修が非常に参考になった。もっと早く聞きたかった”という意見が多く出ています。
非常に有効で、役に立っていますので、今後も引き続き受講させて欲しいと思っています。
(伊勢崎)
主任代行は20代の方も多く、人事構成上、常に主任に上げて行かなければならないと伺いましたが、
そういったご苦労がおありなのでしょうか?
(久次)
そうですね。
本当は、主任代行という期間をなくして、然るべき研修を受けた上で主任になるのがベストの形だと思うのですが、世代交代のために若手に主任をやって貰わなくてはなりません。そこで、社内制度に正式な主任に任命できるタイミングではない場合には、主任代行という形にしています。
出来るだけ早く、主任候補者研修を受けてしっかりとした知識と意識を持った人間に、主任業務をやってもらいたいと思っています。

チームリーダーに期待する2つの意識とは?

(伊勢崎)
久次さんのお立場から見ると、主任にふさわしい意識とはどういうものなのでしょうか?
(久次)
チームリーダーとしての組織運営と人材育成の意識だと思います。
掲載2 人員を削減してきたのでチームの規模は小さくなっているのですが、それだけ運営が難しくなっています。
任されたチームをうまく運営して、かつ人材を育てていく。その最小単位のリーダーが主任だと思っています。
(伊勢崎)
そういう意味では、主任が順調に育つという事が、会社の業績に直結するという事でしょうか?
(久次)
そうですね。キーマンは主任だと思っていますので、主任が機能するかしないかで、組織全体が上手く回るか回らないかが変わってくると思います。
主任候補者研修は、非常に重要なポジションである主任という人材の育成に、とても役立っていると思っています。
(伊勢崎)
リーダーシップ研修が、主任としての意識付け、気付きのきっかけになるとお褒めいただいたのですが、逆にリーダーシップ研修にはこういう課題があるという事がありましたら、おうかがいしたいのですが?
(久次)
現在、実施している主任候補者研修に取り入れているリーダーシップ研修には、特に課題を感じていません。引き続き、研修を実施したいと思っています。
また、リーダーシップ研修とセットでお願いしているフォローアップ研修ですが、リーダーシップ研修で意識付けられた事を、行動に移していき、3年後のフォローアップ研修でフォローしていただくという流れが、とても良いと思っています。
ですから、2つの研修をセットでお願いしているのは、とても意味があります。
(伊勢崎)
現在、新日鐵住金ステンレスさんには、主任任命時のリーダーシップ研修、その3年後、7年後のレベルアップ研修としてのフォローアップ研修を受講していただいています。
このシリーズで一通りの主任のマネジメント要件が育成できているという事でしょうか?
(久次)
そうですね。

社内に良い影響をもたらしている魅力的な研修内容とは?

(伊勢崎)
今回、新しく新人研修をご依頼いただいて、6月末に研修を実施しますが、JMAには人材育成の面でどういった事をご期待いただいているのでしょうか?
(久次)
JMAさんに研修をお願いするようになってから随分経つのですが、その前は自社内で研修をしていました。
社内で研修をすると、どうしても知識詰め込み型になる傾向がありました。それに、上司の立場という意識が出てしまったりしまして、少し偏った方向性になったり、一方通行の研修になる傾向がありました。
掲載5JMAさんのような研修のプロに実施していただくと距離感が良いのです。製造現場の事も良く分かっていただいていますし、といってべったりではなく、少し冷静に、客観的にやり取りしていただけるのが良い距離間に思えます。
社内での研修のような知識詰め込み型ではない、双方向での研修を期待してお願いしています。
言わずもがなですが、プロの講師の方の講習なので、1つ1つのメッセージの伝え方が上手で、受講者の心に染みるように話してくださるのが良いのですね。
かなり演習を重視した講習の中で、自分で考えて行動する事をプログラムに取り入れていただいているのが、講習後に良い方向で機能しているのではないかと思います。
日頃、社員には自ら考えて欲しいと言っているのですが、そこをグループ演習で実践させてもらえるのがありがたいです。
(伊勢崎)
JMAでは、座学が3割、演習やケーススタディが7割になる事を目標に研修プログラムを作っています。
とは言っても、研修プログラムが完璧という訳ではなく、将来に向けての課題はあると思います。
(久次)
リーダーシップ研修を通じて演習やケーススタディの良さを実感していますので、継続して行きたいです。
例を挙げると、詰め込み型ではない研修が少しずつ社内に浸透してきているようです。
社内講習でもグループ討議系を増やしていく傾向が強いので、やはりプロの研修が色々な所に良い影響を与えてくれていると思っています。
(伊勢崎)
みんなで考え、議論し、何かしらの答えを出す過程において、色々な職場の気付きや、他の事業部の気付きを共有できるという辺りを評価していただいていると思って良いでしょうか?
(久次)
そうですね。
気付きとか刺激のし合い、とかですね。

世代交代を進める上での人材育成課題とは?

(伊勢崎)
新日鐵住金ステンレスさんには、10年近く主任候補者研修を、4年前からはそのフォローアップ研修を受講していただいています。
今後、新しい主任像を御社の中で描きながら、JMAがご支援させていただきたいと思っているのですが、主任育成、または主任になった方を期待する主任像にするために、現段階で何か障害や悩みなどをお持ちですか?
(久次)
研修のようにOFFーJTという形で行う分に関しては、今の体系をしっかり回していけば良いと思っています。
しかし、世代交代が進んで来ている現場の実践技術と技能をどうやって後進に引き継ぎ、引き上げて行くかが、足元の課題になっています。
そこはOFFーJTではなく、OJTの役割です。今後、OJTをどう進めて行くかが、私たちが抱えている課題だと思っています。

各現場でも育成はやっているのですが、体系立ってやれているのかも含めて、私たちが何をサポートしていけば良いのか、これから考えていこうと思っている状況です。
掲載7ただ、あまり事務局がやり過ぎても良くない部分なので、そのバランスをどう取っていくか、どういう風に進めると良いのかを、現場の意見を聞きながら考えて行きたいと思います。
その辺りをサポートしてくれるアドバイスをJMAさんからいただければと思います。
 
(伊勢崎)
最近、教育支援でお客様をお訪ねすると、OJTの効果を皆さんがおっしゃいます。
新日鐵住金ステンレスさんの中で、OJTの効果的な進め方や効果測定の在り方について、製造整備人材室として支援している事はあるでしょうか?
(久次)
今は具体的に支援している事はありません。
育成に当たっては色々な経験をさせたいという現場からの意見が出ています。また、色々な経験をさせるために、人員配置にゆとりを持たせて欲しいという要望もあります。
ですから、少し採用面で厚めの採用をして、現場でやりたいことができる人的な支援をスタートさせたところです。

それ以外に、実際にトレーニングするために、こちらが支援できるものがあるのかをこれから議論していくつもりです。

現場のOJT・部下育成をどのように支援するか

(伊勢崎)
採用・人員配置に余裕を持たせて、現場での上司の直接指導が上手くいくという考え方ですね。
それは、上司が自分の作業に掛かり切りになり、部下の育成ができない状況を少なくするという事でしょうか?
(久次)
生産量が増減する中で、柔軟に対応するために多能工化を進めたい部門もあります。そのために新しい職場に人材を配置換えすると最初は戦力にならないので、人的余裕を持たせて欲しいという現場の意見から今回の支援を始めました。

また、どう計画的に技能を習得させるか、どのようにそれが進んでいるかの評価については、今後、勉強しながら進めて行きたいですね。良いツールなどがあれば現場に紹介するなど、私たちができる事をこれから探りながら、支援をしていきたいと思います。
(伊勢崎)
OJTの効果的な進め方と、研修のようなOFF-JTを合わせてケアしていくわけですね。
では、人材育成の面で他に何か新しい取り組みがあれば、ぜひ聞かせてください。
(久次)
OJTを含めて、会社全体として育成面を強化しなければいけません。
ステンレス専門会社ですので、専門的な知識をしっかり持った社員を育成しなければならないという課題もあります。今はその育成を支援できる組織を整えていきたいと思っています。

(伊勢崎)
今後、人材育成をさらに強化するというお話をうかがっていますが。
(久次)
具体的には、人材育成の専門部隊を作ろうとしています。
今は人事部門の中で採用、人事評価といった色々な仕事の合間に育成をやっていますが、育成を専門的に考える部隊を作ろうと社内で議論しています。

育成部隊という組織を作って、何を会社として進めて行くのか、その組織が育成をどのようにサポートしていくのかという所を、今、まさに議論しようと準備しています。
(伊勢崎)
人事は採用だけでも大変ですし、採用が終わると新人研修と1年中、忙しくてたまらない状態だと思います。そこから育成の部分を機能特化させて、強化していくのですね?
(久次)
はい。その通りです。

他社の研修とは違うJMAの研修の強みとは?

(伊勢崎)
長いお付き合いをさせていただいていますが、簡単で結構ですので、JMAとはどういった組織で、どのような事を期待されているかについてお聞かせください。
掲載3(久次)
人材育成をサポートしている会社は沢山あると思います。
その中でもJMAさんが良いと思う所は、製造現場を良く分かった上で、各企業が求める事を良く理解した研修を企画してくれる所です。
スタッフ系のホワイトカラーの育成を企画してくれる会社は沢山あるのですが、製造現場に強いのはJMAさんだと思います。
そういったJMAさんの強みをこちらで活用させていただいています。

(伊勢崎)
ありがとうございます。製造現場というお話が出ましたが、製造分野のご支援で今後JMAに期待やご要望いただけることがありましたら、ぜひおうかがいしたいのですが。
(久次)
現状では、研修体系、特にOFF-JTが非常に充実していると思っています。特に重要な、主任になる前後の研修をJMAさんにお願いしていますので、引き続きしっかり支援していただきたいということです。

(伊勢崎)
現場で生涯お仕事をなさる方の安全管理や技能のスキル研修は、各社さんで取り組んでいらっしゃるのですが、最近はマネジメント能力が必要だと改めて考えている会社が多いようです。
今回の「主任候補者研修」では、マネジメントとリーダーシップを抽出して講習しているのですが、そこは新日鐵住金ステンレスさんとして、どうお考えですか?
(久次)
正にその通りだと思います。
主任は現場の第一線監督者という位置付けで、組織の最小単位のリーダーです。
主任が配下の組織を上手くリードする、運営する事は非常に重要です。
主任候補者研修の歴史というのは、会社発足以来の歴史ですので、主任というポジションが非常に大切だという位置付けは変わっていないのですね。そういうポストのマネジメント能力は非常に重要だと認識しています。

OJT・Off-JTの両輪で管理者候補層を育てる

(伊勢崎)
主任になる前の代行の方や、代行の下の候補者の方には、マネジメントの意識付けは、研修やOJTなどで取り組んでいるのでしょうか?
(久次)
代行になる時は、「管理基礎研修」という事で、主任が法的責任を持つという認識と、特に安全管理や環境防災に関しての責任者としての知識を最低限は教えています。
しかし、マネジメントには時間を割けていません。
そこは課題なのですが、主任に引き上げるペースを上げる事で対応したいと思っています。
代行より下の社員については、入社7、8年目で「中堅社員研修」があります。
「中堅社員研修」では中堅として7、8年で経験・習得したもので満足せずにさらに高みを追求して欲しいと伝えています。
これは、マネジメントスキルというよりも意識の部分を醸成する研修ですね。

(伊勢崎)
レイヤー毎に意識付けをして、特に安全管理と仕事の技能を習得してもらい、それと共にグループをまとめて、リーダーシップを発揮するようなマネジメントになる部分を順次育成しているという事ですね。
掲載9(久次)
マネジメントの世界だと主任になった層をしっかり育成していく事かなと思っています。
それまではスキルを中心に向上意識を醸成する事を中心にしています。

(伊勢崎)
製造業界の中では、現場監督の第一線に立つ方々の育成に悩んでいる会社が非常に多いです。
実は、ある会社にうかがった時に、メンタル不調を起こす監督職が増えてきていると聞きました。
その点、新日鐵住金ステンレスさんは、非常にスムーズに世代交代ができていて、主任さんの育成も問題なく進んでいると思っています。
新日鐵住金ステンレスさんの成功事例を踏まえて、よろしければ、監督職の育成が上手く進んでいない会社に向けて、何かアドバイスや応援の言葉がありましたら、一言いただきたいのですが。
(久次)
特別な事をしているという認識はないのです。
我が社では、主任になってから悩んで精神的にトラブルを抱えた人は見かけません。悩んだ時にサポートする人たちが周りにいるのかも知れませんね。

主任の姿を見ながら若手が育つ

掲載8(伊勢崎)
実は、他の会社ですと、監督職になる前に1度も研修がないという場合が多いのです。
同じ鉄鋼関係さんでも中堅、小規模になると、監督職まで研修がない企業が殆どです。
(久次)
そういう事ですか。
「主任候補者研修」に来た社員ですとか、その前の「中堅社員研修」に来た社員を見て思うのですが、主任の姿を見ながら若手が育っているようなのです。主任とはこうあるべきだという姿が、入社してからずっと主任の後ろ姿を見ているので自然と分かっているのでしょう。主任になる前に大変さとか、理想の姿なりが分かっていて、ある程度の覚悟ができているのが大きいのではないかと思います。

会社としては特別な事をしているという思いはないので、各段階で各人が心の準備をしている気がします。
(伊勢崎)
主任さんの背中を見て若手が育つ、所謂昔ながらの育ち方ができるのは、優秀な主任さんが沢山現場にいるという、新日鉄住金ステンレスさんの環境の成せる技だと思います。
(久次)
優秀な主任が沢山現場にいると思っています。しかし色々なタイプの主任がいて、中には反面教師にせざるを得ない主任もいたかも知れません。
私がよく言うのが、「教師と反面教師、良いも悪いも参考になる」です。
各自がそういった意識でやってくれているのだろうと思います。

(伊勢崎)
新日鐵住金ステンレスさんの主任さんを見てどう思われますか?
頼もしいですか?
(久次)
頼もしいですね。
物事をしっかり考えてくれますし、責任感も持ってやってくれています。
本当にこの人たちが会社を支えてくれているのだなと実感しています。
主任になる前も主任になってからもですが、その人たちを私たちがどうサポートしていくのかが課題です。

主任は、現場のキーマンとして、30歳前後で色々な法的責任を持つのですが、とても自然にこなしてくれて、責任感を持ってやってくれます。
立派だと思いますし、非常にありがたいです。

人材育成のプロとして大切にしていることとは?

(伊勢崎)
最後に、人材育成のプロとしての久次さんの今後の抱負を聞かせてください。
(久次)
私は自分を育成のプロとは思っていません。独りよがりにならないように職場なり上司なりのニーズをしっかりと聞いて、支援部隊として一生懸命頑張って行こうと思います。
(伊勢崎)
こういった頼もしい責任者の方々に囲まれて主任さんは学ばれていると思いますが、JMAも各種ご支援させていただきますので、よろしくお願いします。
今日は長い時間お話しいただき、ありがとうございました。