今の時代に求められるリーダーを育てるためには 講師インタビュー(5)
研修の最前線で活躍する講師へのインタビューを通じて、人材育成について考えるシリーズ。
企業を取り巻く環境が劇的に変化している今、リーダーに求められる資質も変化しています。どのような資質が求められ、企業はどのようにサポートをしていくべきなのか。HCD(Human Capital Development)のマツイ エリザベス氏と川島民子氏にお話を伺いました。
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5.リーダーに求められる「人間力」
<川島>
リーダーは組織のメンバーとともに目標を実現していくものだと思うんです。自分だけで行動するのではなく「人と共に」というところが重要で、お手本にもなるし、コーチングもおこなう。社員がこの人と一緒にやっていきたいと思われる人間でなければいけません。だから、今まで以上に「人間力」が問われていると、強く思います。会社員は会社でずいぶん長い時間過ごします。ほとんどの時間を会社で過ごすと言ってもよいですよね。最も多くの時間を過ごす上司と「一緒にやっていきたい」という思いがなかったら、組織はどんなことをやっても成功しないと思います。
昔も「人間力」は重要でしたが、他にも人を動かす要因があったと思うんです。ですが、今は人としてどうかというのが鍵になるんじゃないでしょうか。リーダーとして、どんな「人間力」が必要なのかということを学ぶことが、大事になっていると思います。
<エリ>
リーダーシップというものは、極めて個人的だと思います。仕事のアプローチが個人で違うのと同じで、スタイルが各々で違う。リーダーシップは個人差が生かされてくる要因です。聞き上手であったり、尋ね上手であったり。人の意見やアイディアを取り入れることができる柔軟性、順応性を持っている。そういう性質も必要でしょうね。
―「人間力」を身につけるためには、どんなことが必要でしょうか?
<川島>
ひとつには、自分が生きている人生が、会社だけではないということを知ることですね。家庭もあるし、あるいはそれ以外の部分もありますよね。そういう自分を拡げていく経験をすることが大事です。自分が今まで知らなかったことや避けてきたことにチャレンジする。いろんな学びの側面を拡げていくことがプラスになると思います。
―リーダーを育成するには「人間力」を高めることが必要で、そのためには自分を深く知ることが必要だということですね。
<エリ>
そうですね。ビジネスの面でも探求は必要でしょう。いろんな角度から自分のビジネスを知る。それも必要になってくるわけです。営業の方でしたら、営業のことだけを知るのではなく、マーケティングはどうなのか、ファイナンスはどうなのか、グローバルな環境はどうなのか、といったことですね。
―自分自身を知るためには、良い方法は?
<エリ>
ひとつは日本能率協会でも実施している「DiSC」という診断ツールですね。それから「MBTI(エムビーティーアイ:Myers-Briggs Type Indicator)」もあります。これも良い性格検査です。マイヤーズとブリッグスという2人のお母さんが作ったものですが、子供達のマインドにあった教育をどのようにしたらいいかというところから生まれたもので、ユングやハイデッガーの考え方をベースにしています。これは調査データがたくさんありますので、パワフルですね。アメリカではMBTIは、広く用いられるようになってきています。
他にはケン・ブランチャードさんのシチュエーショナル・リーダーシップ理論(SL理論 Situational Leadership Theory)もあります。リーダーシップとは、相手の成長に合わせるべきものだという考え方ですね。私もそのとおりだと思います。部下達がリーダーである私のスタイルに合わせるのではなくて、自分の部下やチームメンバーの成長度合いに柔軟に合わせていくのがリーダーだという考え方ですね。これもとても良いツールですね。
今の時代は、めまぐるしく変化する時代です。会社の中のリーダーが、自社の「健康状態」をつかみ、どのような「処方」が必要なのかを掴む必要があります。ですから、その対処方法、処方をできるだけたくさん持っているほうが、柔軟に対応できますよね。
いろいろな種類の処方がありますから、おもしろい時代だと思いますね。ひとつのやり方だけではなくて、柔軟に自分たちの作り出したい目的に沿った方法で、社内のスタッフを導くと良いと思います。
~おわり5/5~
第2回 企業が直面する課題
第3回 「変革」には「認識」から