今どき研修テーマ&メソッド図鑑
オンライン時代に改めて考える「オンデマンド研修」活用法
2000年代から企業内のネットワークの広がりによって活用されはじめたオンデマンド研修ですが、コロナ禍でさらに導入する企業も増えてきているのではないでしょうか。そこで改めて、オンデマンド研修のメリット、デメリット、効果的に活用する方法を考えてみましょう。
オンデマンド研修とは?
オンデマンド(On-Demand)は「要求に応じて」という意味です。つまりオンデマンド研修とは学習者の都合のよい時間に学べる研修を指します。一般的には、あらかじめ撮影しておいた動画や資料などをサーバーにアップロードしておくことで、学習者はパソコンやスマホで「いつでもどこでも」研修を受けることができます。
オンデマンド研修に向く内容
研修には、参加者が1カ所に集まって行う集合研修、ライブ配信で行うオンライン研修などさまざまな形式がありますが、なかでもオンデマンド研修に向いている内容を紹介します。
・知識習得を目的とするもの
法務、会計、戦略マーケティングの基礎理論や新製品の情報等、知識のインプットに重きを置くものはオンデマンド研修に向いています。
・内容が変わりにくく、定期的に提供するもの
企業理念や、各階層における役割、責任など、内容が変わりにくく定期的に提供するものはオンデマンド研修に向いています。
・個人が自発的に学ぶために、個々にテーマを選択できるもの
自発的な学びを求めている従業員に対し、さまざまなテーマや内容を用意する方法はオンデマンド研修向けと言えます。
オンデマンド研修のコンテンツをどう用意するか
オンデマンド研修のコンテンツをどう用意するかという点について、4つの準備方法をご紹介します。
・既存コンテンツを購入する
オンデマンド研修を開発している業者から、すでにある研修コンテンツを購入して導入します。オンデマンド研修では一般的にLMS(Learning Management System)という学習管理システムで学習教材の配信や成績などを統合して管理しますが、社内に研修コンテンツと規格の合ったLMSがない場合、は研修コンテンツを提供している業者から提供を受けるのが一般的です。
・既存コンテンツをカスタマイズする
既存の研修コンテンツの一部を自社に合わせた内容にカスタマイズする方法です。提供元の協力を得ながら、必要のない部分を削除したり、内容を追加したり、業界の専門用語に合うようにカスタマイズしてもらったりします。研修担当者は、より効果的な内容になるように内容を考える必要があります。
・コンテンツをオーダーメイドする
自社に合った内容にするため、専門業者にオーダーメイドでコンテンツ開発を依頼する方法です。研修担当者は「どんな目的で、どんな研修教材を作るのか」という企画・設計の段階から関わり、情報収集、概要仕様の決定、詳細仕様の決定という流れでコンテンツ制作を進めていきます。コンテンツの開発は専門業者が、中身の原稿作成は社内で行う場合もあります。自社の必要とする内容に近づきますが、工数とコストは上がります。
・コンテンツを自社で制作する
外部委託せず自社ですべて制作します。教材作成ツールを使って、エクセルやパワーポイント、動画・音声ファイルを組み合わせて作ります。同時にLMSや教材作成ツールの導入が必要です。
オンデマンド研修のメリット・デメリット
オンデマンド研修を取り入れた際、学ぶ側と提供する側それぞれにどのようなメリット・デメリットがあるでしょうか。
学ぶ側のメリット
- 時間や場所を選ばず学習できる(移動中のモバイル利用等を含む)
- 自分のペースや達成度に応じて、自由に学習を進めることができる
- 進捗状況やテスト結果などのフィードバックを即座に確認できる
- 研修内容を何度も復習でき、理解度の向上が見込める
提供側のメリット
- 多くの学習者に一斉に一律に提供できる
- 集合研修に比べてテキスト費や受講者の交通費、会場費等のコストを抑えられる
- 学習者の個々の成績情報や学習履歴を簡単に管理できる
- 一度制作した教材は繰り返し利用できる
- 変化に応じて素早く教材を修正できる
- 講義内容にブレがなく、皆同じ内容を受講できる
学ぶ側のデメリット
- モチベーションの持続が難しい
- 受講するための環境を用意する必要がある
- いつでもどこでも受講できるため、業務時間内外との境目が曖昧になる
- わからないことがあってもその場で質問できない
提供側のデメリット
- 自社制作の場合は、導入・制作にITの知識が必要であり、制作の手間やコストがかかる
- ディスカッションや受講者同士の交流等は期待できない
- 自律的に学んでもらうための工夫が必要になる
オンデマンド研修の効果を上げるために提供側ができること
オンデマンド研修をより効果的にするためには、提供側は以下のような工夫をしてみましょう。
・「ゴール」を設ける
受講して終わりではなく、受講後の認定テストを設けたり、レポート提出や課題提出を義務付けたり、面接の場を設けるなど、受講後のゴールを設けましょう。ゴールがあることで受講生は目的意識を持って取り組むことができ、あとから理解度を測ることもできます。
・オンデマンド研修のための時間を業務時間内に設ける
業務時間外だと義務ではないからとやらなかったり、惰性で行なったりする人も出てきますが、業務時間内であれば、必ずやるべきことという意識を持って向き合う人が増えるでしょう。
・惹きつけられるコンテンツを作る
単に講師が喋り、文字が表示されるというような内容ではなく、途中に確認テストなどを入れることで学習者のモチベーションを維持できます。
・マイクロラーニングができるよう工夫する
1時間などのまとまった内容ではなく、5分や10分単位で細切れに学べる形式にしておくと、スキマ時間を活用して学んでもらいやすくなり、学習者のモチベーションを保つことにも効果的です。
オンデマンド研修のデメリットを解決するブレンデッドラーニング
オンデマンド研修には弱点もありますが、デメリットを解消する方法として注目されているのがブレンデッドラーニングという手法です。ブレンデッドラーニングとは、オンデマンド研修と集合研修を組み合わせた研修スタイルのことです。オンデマンド研修の後に集合研修が組み合わされているので、オンデマンド研修の「ディスカッション、受講者同士の交流等ができない」「わからないことをその場で質問できない」などのデメリットを解消できます。コロナ禍で研修をオンライン化した企業も増えましたが、ブレンデッドラーニングで弱点をカバーしている例も見られます。
ブレンデッドラーニングをより効率的に進めるためには、オンデマンド研修と集合研修のテーマに連動性を持たせる、集合研修前にオンデマンド研修の受講を完了させるよう管理する、オンデマンド研修の結果をもとに集合研修のグルーピングをするなどの工夫をしてみましょう。
このように、オンライン学習コンテンツの配信やLMSを活用したブレンデッドラーニングの導入は、まさに研修のDX化ともいえます。
すでにオンデマンド研修やブレンデッドラーニングを取り入れている場合は、効率をあげるための工夫を進め、これから導入を検討されている場合は、ぜひ今回の内容も参考にしてみてください。
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