5分でわかるビジネストレンドワード
人生100年時代に欠かせない「キャリアオーナーシップ」という考え方
人生100年時代において自分らしく生き生きと働き続けるためには、社内外に目を向けながら自らキャリアを開発していく「働くことへの主体的な姿勢」が重要です。
さらに、終身雇用の崩壊によって、柔軟な働き方を選択することが必要になった昨今、「自分にはどんなスキルが必要か」「自分のこれまでの経験がどう活かせるか」と自分を軸にキャリア考える機会はますます増えているといえるでしょう。
このような時代観を反映し、「キャリアオーナーシップ」という考え方が、社員にとっても企業にとっても大切になっています。
キャリアオーナーシップとは?
キャリアオーナーシップとは「自らのキャリアについて、どうしたいのか、どうなりたいのか、どうあるべきなのかを主体的に考える」ことです。背景には、終身雇用の崩壊や高齢化社会によって、働き方が多様化したこと、定年後も働き続けなければならない時代になったことがあります。企業の雇用形態や個人の働き方が変わりつつある日本で生まれた、比較的新しい造語として使用されていて、ほぼ同じ意味で「キャリア自律」とも言われています。
また、2017年に経済産業省の中で発足した「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」では、人材像ワーキンググループにおける検討結果の中で、キャリアオーナーシップの意味を「個人一人ひとりが『自らのキャリアはどうありたいか、如何に自己実現したいか』を意識し、納得のいくキャリアを築くための行動をとっていくこと」と説明しています。
企業はどのように考えるべきか
これまでの終身雇用を前提とした働き方では「企業が定年まで社員を雇い続けることで社員を守る」「社員のキャリアは企業が作るもの」という考え方が一般的でした。しかし現在は、企業の雇用形態も変化しつつあります。経団連(一般社団法人 日本経済団体連合会)が、2018年に新卒就活ルールの廃止を、2019年にはスペシャリストを求めるジョブ型雇用の推奨を発表したことも、企業の雇用形態の変化を後押しする形となっています。
こうした流れにより、企業には、これまでのように雇用し続けることで社員を守りながら囲い込むのではなく、個人がどんな時代の変化にも対応ができ、社外でも活躍できるよう自律的なキャリア形成を支援するという考え方が求められるようになっています。
個人がキャリアオーナーシップを持つことで、個人は主体性を向上させ、キャリアを切りひらいていくことができます。また、企業は優秀な人材を確保し、その多様な人材がより活躍できる場や能力を伸ばす場を提供することで、競争力の向上が可能になります。このように、個人の成長と企業の成長のベクトルを合わせることで、はじめて生産性の向上につながるのです。
企業が具体的に取り組むべきことは?
「キャリアオーナーシップ」に向けて企業が取り組むべき3つのポイントを紹介します。
社員のキャリア開発支援
社員が自らのキャリアと向き合うためにキャリアカウンセリングや「社内外での研修」などの機会を提供することが必要です。また、社内公募制度、社内外インターンシップなどの人材制度の整備や、ジョブ型雇用の導入、副業・兼業の解禁によって、社員のキャリアの選択肢を広げることができます。
リテンションの強化
社員がモチベーションを維持するためには、自らのキャリアを具体的にイメージさせることが必要です。そのためには企業が多様なポジションを用意し、職場や働き手の意識改革を行うための整備をしていかなくてはいけません。そうすることで、企業にとっても必要な人材の確保ができていきます。
キャリアカウンセラーとの面談で、仕事以外も含めた課題の解決を図るのも有効でしょう。これから急増するシニア人材の活躍のためには、新たなマインドセットに向けた面接や研修も効果的です。
企業と社員の新たな関係性の構築
旧来の会社と社員の関係の中でキャリアを積んできたシニア層社員には、新たな関係づくりに向けた処遇の整備や支援も必要かもしれません。例えば以下のようなことが挙げられます。
1.転職・起業準備を見据えた制度の導入
早期退職者への退職金上積み、キャリア転換の準備のための休暇制度や支援金の支給などを設けることで、社員はより幅広く主体的なキャリア選択が可能になります。
2.「転身先の紹介・マッチング」や「業界横断での環境・ネットワーク整備」
希望者には転身先の紹介や同業他社の求人案件を共有します。これにより、社内の新陳代謝を促し、より広いネットワーク形成による事業拡大が目指せます。将来的には、社内だけでなく社会全体での人材の最適配置も可能になっていくでしょう。
3.定年退職者への業務委託契約
「再雇用」ではなく「業務委託」とすることで、社員にとっては勤務地や勤務時間等の自由度が増し、より望ましい働き方を選べることになります。厚生労働省でも、定年後にフリーランスや起業を検討する社員に対し、継続的に業務委託契約を結ぶための制度の創設を検討中です。
ここまで見てきたように、キャリアオーナーシップの形成に取り組むことは、企業にとっても個人にとっても大きなメリットがあります。キャリアオーナーシップを念頭においた取り組みは、企業の生産性と個人の望む生き方をともに実現するためにも、大きな意義を持つことでしょう。
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