失敗しない研修計画

コロナ時代に押さえておくべき「新入社員研修」のポイント(2022年度版)

公開日:2022/04/15 更新日:2023/09/14

コロナ禍以降の2020年、2021年で新入社員研修のあり方が変化してきています。集合型研修だけでなく、オンライン研修やeラーニングによる研修などさまざまな研修スタイルが普及しましたが、今後も時代に合った研修内容を作り上げることが重要と言えるでしょう、そこでコロナ禍の経験を踏まえ、今押さえておきたい新入社員研修のポイントを紹介します。

新入社員

新入社員研修で達成したいこと

企業によって内容の違いはありますが、新入社員研修で達成したいこととしては以下のようなことが挙げられます。

社会人として必要なスキル・知識の習得

業務を遂行するうえで必要な知識の習得は、配属後にスムーズに業務を実践し、力をつける基礎となります。研修でしっかり学んでおくことが新入社員本人の心理的負担の軽減にもなります。

自社への理解の向上

企業側の望む成果を挙げてもらうためにも、自社への理解は欠かせません。新入社員自身のモチベーションを上げるためにも有効です。

学生から社会人への意識改革

社会人としての自覚を持つことは、社員として責任ある行動を取るためにも不可欠です。新入社員研修の最も大きな目的の一つともいえるでしょう。

企業にとっては、新入社員研修によりこうした目標を達成することで、新人の早期戦力化はもちろん、早期離職の防止も目指すことができます。

最近の新入社員の特性から考えられる課題

近年の新入社員世代は、デジタルスキルが高い、情報収集が早いなどの強みもある一方、「ゆとり世代」や「さとり世代」などと呼ばれ、上司世代から見ると理解の難しい面があるかもしれません。たとえば、スキル面の課題としては以下のようなことがあると言われています。

  • デジタル慣れしているが、パソコンスキルについては不足気味
  • コミュニケーション能力については全体的に高いが、ビジネスマナーやビジネス文書、電話応対などの実践的なスキルには課題あり

このようなスキル面の研修は、新入社員にとっては欠かせないものといえるでしょう。

また、働くことへの価値観についても、上司世代とは異なる特徴が指摘されています。たとえば、人と比べて抜きん出るより周囲と足並みを揃える傾向や、ワークライフバランスを重視する姿勢、「成長」や「社会貢献」を重視する考え方などはその代表的なものです。

研修担当者は、こうしたスキル面の特性や価値観の変化を踏まえ、新入社員の特性に合わせた研修の進め方や、コミュニケーションの取り方・課題の与え方をする必要があるでしょう。研修を行う側と受ける側では異なる価値観や思考を持っているということを、とくに意識しておくべきともいえます。

ウィズコロナ時代の新入社員研修の課題

コロナ禍の影響で、新入社員研修においてもオンライン研修が数多く導入されました。しかし、同時に課題も浮き彫りになっています。

オンラインによる新入社員研修を実施した企業で、受講者側、人事担当者側が感じている具体的な課題としては以下のようなことが挙げられます。

  • アウトプットの機会が少なく、実践的に学べない
  • 社員同士のつながり、人事担当者とのコミュニケーションが生まれにくく受講者が不安になる
  • 学生から社会人への意識の切り替えがしづらい

とくに「意識の切り替え」は、新入社員研修ならではの大きな目標でもあり、達成できないままでは研修の意義が問われかねません。オンラインによる新入社員研修を実施する際には、上記のような課題をどう解消していくかという工夫が必要といえるでしょう。

新入社員研修のカリキュラムの作り方

新入社員研修で意識したいのは、一人ひとりの可能性を引き出すということです。研修に参加した結果、「わからないこともあるが、この職場でトライしていこうと思える」ことや、「学んだことが実務に活かせる」ようになることが重要であり、そのような場を作ることがカギになります。

具体的には、研修のゴールを入社から1年~3年後と長期的に考え、そこから逆算して考えるのがよいでしょう。「新人にどんなスキルや認識を持っていてほしいのか」という現場からの要望を把握し、人事部門の考える育成ステップとをすり合わせたうえで、ゴール達成に向けたカリキュラムの内容を組み立ててきます。

ウィズコロナ時代に求められる能力も踏まえつつ、以下のような力を高めるカリキュラムを組み込むとよいでしょう。

コミュニケーションスキル(相手に伝わる話し方・聞き方)

学生と社会人との違いを再確認しながら、社会人として円滑に仕事が進められるように、ビジネスでのコミュニケーション力を身に付けます。相手や目的に応じた関係構築・聞き方・相手に伝わる話し方のポイントについて、ワークを組み込みながら実践的に学ぶ形が理想的です。

自分で考える力(論理的に考える力・柔軟に発想する力)

自分で考える力はあらゆる思考の土台となります。中でも論理的に考える力・柔軟に発想する力を身につけることで、根拠と自信を持った言動にもつながることが期待されます。グループワークなどで実践的に学びます。

仕事に向き合う意識(ビジネスマインド)

社会人1年目の生活を軌道に乗せ、自信を持って仕事に向き合えるように、新入社員の心得や常識、現場で求められる行動について学びます。会社と仕事について理解し、給与など対価が発生する仕組みを考えることを通じてビジネスマインドを獲得します。

自社・自社事業について知る

研修であらためて経営理念や自社の事業を掘り下げて学ぶことで、事業内容への理解を深めます。
さらに、プラスアルファで学んでおきたい内容としては次のようなことも挙げられます。

チームビルディング

チームビルディングは、新入社員研修後、部門に配属される前に経験しておきたい研修です。実務に向き合うにあたり、職場に貢献する方法や人間関係のあり方を探ることと、同期とのつながりを強化・維持することを目記憶に残りやすいように「体感ワーク」を通して「一体感」づくりを学びます。的とします。

メンタルヘルス(セルフマネジメント)

配属後、具体的な悩みや不安などが潜在しているタイミングで、メンタルのセルフケアを学ぶ研修です。今まで経験したことの振り返りやシェア、不安解消に向けた相談の仕方などを演習で学びます。

自ら学びチャレンジしようとする姿勢を引き出す実務者講演

ある程度実務を経験したタイミング、具体的には入社から1年経った頃に行いたい研修です。仕事を通じて自己開発、チャレンジする姿勢を引き出すなどの効果が期待できます。これまでに新しいプロジェクトの推進・実現した人の経験談を聞き、気づきや自身のチャレンジしたい方向性について参加者同士でディスカッションするとよいでしょう。

ウィズコロナ時代ならではの課題の解決法

ウィズコロナ時代に欠かせないオンライン研修やeラーニングには、「コミュニケーションが生まれにくい」「モチベーションが上がらない」などの課題があることは先ほどご紹介しました。そこで、こうした研修を取り入れる際にできる解決策をご紹介しておきましょう。

  • ただ受け身で見て学ぶ、聞いて学ぶのではなく、本人に話させるなど「考える」「振り返る」しかけを作る
    eラーニングを活用する際も、報告書の提出とセットにするなど、アウトプットの場を設けるようにしましょう。
  • オンライン研修では、休憩中にグループをシャッフルする
    →より多くの人とコミュニケーションが取れるよう意図的にコミュニケーションの場を作りましょう。
  • オンライン研修では講師以外にファシリテーターを参加させる。
    →講師1人では目の届きにくいところまで目を行き届かせ、平等に参加者に発言の機会を作ることができます。
  • 新入社員+人事のSNSをつくる
    →研修外でもコミュケーションを取ることで、不安感の解消につながります。特に、社内の誰に何を聞けば良いか分からない新入社員にとって、すぐに質問できる場は重要といえるでしょう。

新入社員研修は、新入社員が企業で働いていく上での土台となります。研修担当者は、研修の目的を明確にしたうえで研修を企画・実施する必要があります。また、新入社員研修を実施するだけでなく、その後のフォローも重要です。新入社員の価値観を受け止めながら研修を進め、より一層の可能性を引き出す内容としていきましょう。