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「OKR」って何?導入するにはどうすればいいのか?
GoogleやFacebookが業績評価のために導入しているOKRという手法が日本企業でも注目を集めています。「名前を聞いたことはあるけれど内容はよくわからない」「MBOやKPIとの違いがわからない」などの疑問を持たれている方のため、OKRの概要や導入のポイントを紹介します。
OKRの意味とその歴史
OKRとは「Objectives and Key Results」の略称です。Objectives(目標)とKey Results(主要な成果)によって、高い目標を達成するための目標管理法のことを指します。1970年代にアメリカのインテル社によって開発されたと言われており、現在では数多くの企業で採用されています。
OKRでは、こうした目標と主要な成果を、会社→チーム・部署→個人の順番で設定して評価するため、個人の成果が会社にどう貢献するかがより明確になります。そのため、従業員に企業への貢献度をより強く感じてもらえる手法とも言われています。
なぜ今OKRが注目されているのか
OKR は急成長を遂げたGoogleやFacebookのような著名企業が導入していることもあり、日本でも注目を浴びていますが、導入が進む背景としては、高頻度で目標設定や軌道修正を行うOKRの手法が、ビジネス環境の変化にマッチしていることが挙げられます。
また、日本でもグローバル化や働き方の多様化が進んでいますが、国籍や文化が異なる従業員が多く働いている環境では、すべての従業員が納得できる評価を下す必要があります。OKRは定性的な目標と定量的な進捗指標によって従業員を評価できるため、こうした環境に合った手法といえます。
MBOやKPIとどう違う?
MBOやKPIはOKRと同様に、目標管理手法を表す用語ですが、それぞれ違った特性を持っています。それぞれの意味と違いについて見てみましょう。
MBO…「Management By Objectives(目標による管理)」
従業員に個人目標を決めてもらい、その進捗や達成度合いによって人事評価を決めるマネジメント方法のことです。評価の目的が人事評価や給与と結び付いているため、目標の達成水準は100%を目指すことになります。目標を振り返るスパンは約1年程度と長く、基本的に従業員と上司の間で目標の共有が行われます。
KPI…「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」
最終目標達成までのプロセスをチェックし、達成度合いを測るための中間指標です。プロジェクト単位で達成可能な現実的な目標を設定するため、100%の達成を目指します。頻度は毎月、毎週、毎日などプロジェクトによって異なりますが、比較的短期間での振り返りを行うのが特徴です。部門単位で共有します。
OKR
定性的な目標と定量的な進捗指標によって従業員の目標管理を行うマネジメント手法です。OKRの場合、従業員を客観的に評価しながら、組織の生産性向上を目指します。目標の共有範囲は全社に幅広く行われるため、会社と従業員が一体になりやすいことが特徴です。また、目標はよりチャレンジングなものとなり、達成水準は60〜70%と低めに設定されます。変化の激しいビジネス環境に対処するには高頻度での目標設定や軌道修正が必要なため、振り返り頻度は毎月、四半期ごとなどと高めです。
OKRの特徴と、設定するメリット
OKRの特徴と設定するメリットを紹介します。
1. 振り返り頻度が高い
OKRは四半期ごとや毎月というように、短いスパンで振り返りを行います。変化の激しいビジネス環境にも対応しやすいことがメリットです。
2. 達成度の測定基準が具体的
Specific(明確な)
共通認識をもつために誰が読んでも理解できる、明確で具体的な目標にします。
Measurable(測定可能な)
目標を測定可能な状態にするには指標による可視化は欠かせません。そこで、達成度合いが客観的に判断できるよう、数値で表せる目標にします。
Achievable(達成可能な)
達成が不可能だと明確な場合、従業員のモチベーションを下げてしまいます。そこで、現実的な目標にします。
Related(経営目標に関連した)
個人の目標と会社の目標に関連性を持たせることはOKRにとって重要なことです。一体感を持って目標に向かえるように組織にとって意味のある目標にします。
Time-bound(期限がある)
目標達成には欠かせない要素です。具体的な期限を設け、締め切りのある目標にします。
3. 共有範囲が広い
MBOやKPIと比べて共有範囲が広いことが特徴です。OKRの目的は組織全体の生産性向上です。全体の目標が明瞭になることで組織間の相互連携が促進されやすくなります。全体で数字が共有されると、従業員は組織への貢献度を実感しやすくなりモチベーションが高まります。従業員が達成感を得やすいことがメリットです。
4. 報酬の増減とは関係ない
報酬に直結する目標では、個人は達成しやすい低めの目標を設定する傾向があります。しかしOKRは報酬の増減とは関係がないため、よりチャレンジングで野心的な目標を設定しやすくなります。
5. 達成水準が低い
OKRでは「チャレンジングで困難だけど実現不可能ではない」目標、つまり自分が可能と考える設定値よりも高い目標を設定することがあります。また、目標を60〜70%達成できれば成功である、と言えるようなOKRを設定することが成果につながるポイントです。実現が難しいほどのハードな挑戦は限界の突破の後押しとなり、個人の成長にもつながりやすいと言えるでしょう。
その他、「組織の目標と個人の目標が紐づきやすく企業の目標が浸透しやすい」「従業員のモチベーションが上がりエンゲージメントの向上につながる」「ゴールが明確になり優先順位が明確化しやすい」などのメリットもあります。
OKRの導入方法
OKRを導入・運用するために必要なポイントを押さえておきましょう。導入に必要な「目標」の設定、「主要な成果」の設定、成果の測定と評価について説明します。
「目標」の設定
「目標」「主要な成果」ともに会社→チーム・部署→個人の順番で設定します。目標設定の基本は大きく次の3点です。
1. 非現実的でない目標であること(60〜70%の達成が予想されること)
2. 誰が見ても理解できる目標であること
3. 期限が明確であること
「主要な成果」の設定
主要な成果の設定は主に以下の3つです。基本は1つの目標に対して3つ程度の設定とします。
1. 数値で計測できること
2. 行動ではなく成果として客観的に評価できること
3. チャレンジングだが不可能ではないこと
成果の測定と評価
まずはOKRの内容を社内でオープンにし、誰もが確認できる状態にしましょう。成果の測定を行い定期的に適切なフィードバックを行うことで、組織のコミュニケーションが活性化されます。評価する際には、目標が妥当であるか、企業の目標とのズレがないかを確認し、ズレが発生している場合は修正を行います。
OKRを導入する際の注意点
「目標」と「主要な成果」を設定しても、うまく運用が行われなければ失敗する可能性もあります。OKRがうまくいかない理由のひとつに「設定したOKRが浸透していないこと」があります。毎週のミーティングで共有したり、「主要な成果」の達成状況を定期的に確認したりすることで、浸透しやすくなるでしょう。
また、立てた目標を振り返り前に勝手に変更してしまうと、従業員が進むべき方向性を見失ってしまいます。OKRの見直しは振り返りのタイミングに合わせましょう。
OKRを成功させるには、適切な目標設定と高頻度のフィードバックや適切な評価基準が必須です。設定したOKRが不適切だった場合、従業員のモチベーションも上がらず組織の成長の妨げにも繋がりかねません。適切なOKRを設定し運用するには、会社と従業員、上司と部下の間で円滑なコミュニケーションや、意見しやすい環境作りがポイントといえるでしょう。
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