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公開日 : 更新日 : 「OKR」って何?そのメリットと、導入に必要なこと

成果だけでなく成長にもフォーカスする目標管理手法、「OKR」。Googleなどの先進企業が導入したことが発端となり、いまや変化の激しいビジネス環境における強力なマネジメントツールとして導入が進んでいます。本記事では、OKRの基本的な構造やMBO・KPIとの違い、導入する際のメリット・注意点を整理。組織に定着させるために必要な考え方や運用のポイントについても解説します。

OKRの意味とその歴史

OKRとは「Objectives and Key Results」の頭文字を取った言葉で、Objectives(目標)とKey Results(主要な成果)をセットで設定し、組織や個人の行動を成果に向けてフォーカスさせるための目標管理手法です。1970年代にアメリカのインテル社によって開発されたと言われていて、現在では数多くの企業で採用されています。

OKRにはさまざまな特徴がありますが、その一つは、企業全体の目標が共有され、それに合わせて各自の目標や主要な成果を現場で決めるということです。手順としては、まず企業全体の目標と主要な成果が共有され、チームや部署はそれに応じて自分たちが達成すべき目標と主要な成果を設定します。さらにチームや部署の目標と主要や成果が個人に共有され、個人が自らの目標と主要な成果を設定することになります。

こうした性質から、OKRによる目標管理では、個人の成果が会社にどう貢献するかがより明確になります。そのため、すべての従業員が同じ方向を向いて業務を遂行することができ、従業員が企業への貢献度をより強く感じることができるとも言われています。

OKRの特徴とメリット

OKRの特徴と、そのことによるメリットには次のようなことが挙げられます。

目標と主要な成果が明確に分かれている

一般的に、Objective(目標)とKey Results(主要な成果)は次のように設定します。

  • Objective(目標)は「何を達成したいか」という定性的な方向性
  • Key Results(主要な成果)は「どのように達成したか」を測るための定量的で測定可能な指標

メリット:企業の目標と、それを実現するためになにへ取り組めばよいのかが明確になる。

シンプルである

各チーム・個人が持つOKRは一般的に、Objective(目標)が1~3個、そのそれぞれに2~5個程度のKey Results(主要な成果)を設定します。

メリット:優先順位が明確になり、本当に重要なことに集中する文化を醸成できる。

短期サイクルで運用する

多くの場合OKRは、1カ月~四半期単位と短いサイクルで設定し、その都度振り返りを行います。

メリット:変化の激しいビジネス環境にも柔軟に対応できる。

評価が目的ではない

報酬の増減に関わる評価のための目標設定では、個人は達成しやすい低めの目標を設定する傾向があります。しかしOKRは評価とは関係ないため、よりチャレンジングで野心的な目標を設定しやすくなります。

メリット:一人ひとりの挑戦を促すことになり、メンバーの成長が期待できる。

透明性が高い

OKRの目的は組織全体の生産性向上であり、多くの場合、全社・全員に公開されます。全体の目標も明瞭になります。

メリット:組織間の相互連携が促進されやすくなる。また、全体で数字が共有されることで、従業員は組織への貢献度を実感しやすくなりモチベーションが高まる。

なぜ今OKRが注目されているのか

OKRは当初、急成長を遂げたGoogleやFacebookのような著名企業が導入していたことで日本でも注目を浴びましたが、その後導入が進んできた背景には、現在のビジネス環境などさまざまな要因が影響しています。

変化に対応しやすい

現代のような変化の激しいビジネス環境では、従来のような年単位の目標よりも、短期的で再設定可能な目標のほうがよく機能します。OKRは基本的に短いスパンで運用するものなので、高頻度で目標設定や軌道修正が可能です。

制度疲労の解消が期待できる

成果主義を前提とした目標には、慢性的な業務過多や部署の分断を生むなど弊害もあります。そんな中で、OKRは評価ではなく成長のための仕組みとして導入されることが多く、制度疲労解消する手段としても期待されています。

グローバル環境など多様性のある職場でも共有しやすい

国籍や文化が異なる従業員が多く働いている環境では、すべての従業員が納得できる評価を下す必要があります。OKRは定性的な目標と定量的な進捗指標によって目標を管理できるため、こうした環境に合った手法といえます。

MBOやKPIとどう違う?

MBOやKPIはOKRと同様に、目標管理手法を表す用語ですが、それぞれ違った特性を持っています。それぞれの意味と違いについて見てみましょう。

MBO…「Management By Objectives(目標による管理)」

従業員に個人目標を決めてもらい、その進捗や達成度合いによって人事評価を決めるマネジメント方法のことです。人事評価や給与と結び付いているため、目標の達成水準は100%を目指すことになります。目標を振り返るスパンは約1年程度と長く、基本的に従業員と上司の間で目標の共有が行われます。

KPI…「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」

最終目標達成までのプロセスをチェックし、達成度合いを測るための中間指標です。プロジェクト単位で達成可能な現実的な目標を設定するため、100%の達成を目指します。頻度は毎月、毎週、毎日などプロジェクトによって異なりますが、比較的短期間での振り返りを行うのが特徴です。部門単位で共有します。

OKR

定性的な目標と定量的な進捗指標によって従業員の目標管理を行うマネジメント手法です。目標の共有範囲は全社に幅広く行われるため、会社と従業員が一体になりやすいことが特徴です。また、目標はよりチャレンジングなものとなり、達成水準は60~70%と低めに設定されるのが一般的です。振り返り頻度は毎月、四半期ごとなどと高めです。

OKRの導入方法

OKRを導入・運用するステップは次のようになります。

1.Objective(目標)の設定

「目標」「主要な成果」ともに会社→チーム・部署→個人の順番で設定します。誰かが決めたことを目標とするのではなく、「どうなりたいか」をチームで話し合い、現場の言葉で言語化することでモチベーションを高めることができます。基本となるのは次の3点です。

  • 非現実的でない目標であること(60~70%の達成が予想されること)
  • 誰が見ても理解できる目標であること
  • 期限が明確であること

2.Key Results(主要な成果)の設定

基本は1つの目標に対して2~5個程度を設定します。次のような条件を満たしている必要があります。

  • 数値で計測できること
  • 行動ではなく成果として客観的に評価できること
  • チャレンジングだが不可能ではないこと

3.成果の計測と評価

まずはOKRの内容を社内でオープンにし、誰もが確認できる状態にしましょう。成果を計測し、定期的に適切なフィードバックを行うことで、組織のコミュニケーションが活性化されます。評価する際には、目標が妥当であるか、企業の目標とのズレがないかを確認し、ズレが発生している場合は修正を行います。

OKRを導入する際の注意点

OKRがうまく機能しない場合にありがちな問題点から、導入の際の注意点を考えてみましょう。

Key Results(主要な成果)が現実と乖離していないか

Key Results(主要な成果)は「チャレンジングだが不可能ではない」ものでなければなりません。OKRがうまく機能していない場合、難しすぎる、または簡単すぎる数値が設定されている可能性がないか、客観的に検証する必要があります。

企業全体のObjective(目標)は適切か

チームや個人のObjective(目標)は、企業のObjective(目標)から決定されます。そのため、そもそも企業のObjective(目標)が環境の変化に即したものでないと、OKR本来のよさが発揮できません。

現場の意見を取り入れているか

OKRは現場が自ら決めることでコミュニケーションを生み、モチベーション高く達成を目指すことができます。経営陣が現場の実情を知らずに決めた目標では、OKRのメリットを引き出すことができません。

全社で共有できているか

設定したOKRが浸透していないと、OKR特有の全社的な一体感は生まれません。毎週のミーティングで共有したり、Key Results(主要な成果)の達成状況を定期的に確認したりすることで、浸透しやすくなるでしょう。

振り返りがきちんと行われているか

OKRの効果の一つに、個人が組織への貢献度を実感しやすいという特徴がありますが、こうした実感は適切な振り返りがあって初めて得られるものです。そのためにも、適切な頻度での振り返りとフィードバックが行われる必要があります。

目標の見直しが適切に行われているか

短いスパンで目標を見直すのがOKRの特徴ではありますが、振り返り前に勝手に変更してしまうと進むべき方向性を見失ってしまいます。OKRの見直しは振り返りのタイミングに合わせましょう。

報酬制度と連動させていないか

OKRは評価のためのものではありません。目標が報酬と結びついていると、人は無難な目標を設定するようになり、結果敵に成長が期待できなくなってしまいます。

おわりに

OKRを成功させるには、適切な目標設定と高頻度のフィードバックや適切な評価基準が欠かせません。設定したOKRが不適切だった場合、従業員のモチベーションも上がらず組織の成長の妨げにも繋がりかねません。適切なOKRを設定し運用するには、会社と従業員、上司と部下の間での円滑なコミュニケーションと、意見しやすい環境作りが必要です。こうした環境づくりとともに行うことで、OKRはよりいっそうの効果を発揮すると言えるでしょう。

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