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コンセプチュアル・スキルをどう高めるか

公開日:2022/07/05 更新日:2023/09/14

マネジメント層の能力開発を中心に、コンセプチュアル・スキルというキーワードを耳にすることはよくあります。今回はコンセプチュアル・スキルの概要とその高め方をご紹介します。

コンセプチュアル・スキルとは

コンセプチュアル・スキルとは、物事を抽象化して体系的に整理する能力、あるいは、物事の奥にひそむ本質を抜き出し、物事が何であるかを捉えることができる能力です。日本語では「概念化能力」と呼びます。

コンセプチュアル・スキルは10950年代、アメリカの経済学者ロバート・リー・カッツ氏が提唱しました。カッツ氏は、コンセプチュアル・スキルを管理職に必要な3つのスキルのうちの一つと説きます(「カッツモデル」)。3つのスキルとは「テクニカル・スキル」「ヒューマン・スキル」「コンセプチュアル・スキル」になります。そして「カッツモデル」では、管理者としての責任が高まれば高まるほど、コンセプチュアル・スキルを高める必要があると主張します。

コンセプチュアル・スキルが身につくと、物事の本質をつかめるようになり、曖昧で抽象的な、答えのない問題や課題に対して、周囲が納得できる答えを導き出すことができるようになります。現代は”VUCA”と呼ばれるように、変化が大きく「正解」が一つではない時代ですが、それだけに現場メンバーによるスピーディーな問題解決や、自由な発想・発案がより一層期待されるようになっています。カッツが提唱した時代には管理者のスキルとされていたコンセプチュアル・スキルも、中堅層・若年層にも求められるように変化してきています。 

コンセプチュアルに考えるとは

コンセプチュアル・スキルを発揮するためには、コンセプチュアルに考えられることが前提です。そのためには5つの思考力がベースになっていると言われます。それぞれの思考力をご紹介します。

  • 定義化…物事の本質をつかみ、自分の言葉で明確に表すことができる。
  • モデル化…物事の仕組みを必要な部分だけを抜き出し、それを単純化して図化できる。
  • 類推…物事の核心をとらえ、他の物事に適用することができる。
  • 精錬…物事を鋭くとらえることができる。
  • 意味化…物事から意味を見いだしたり、共有できるビジョンを描くことができる。

これら5つの思考力が備わることでコンセプチュアル・スキルが発揮できると言えます。

コンセプチュアル・スキルを研修でどう身につけるか

研修でコンセプチュアル・スキルを強化する場合、以下のことに留意しながら行うとよいでしょう。

長期的な視野で磨く

コンセプチュアル・スキルは、先天的な要素、地頭の良さが影響するとも考えられていますが、トレーニングで後天的に伸ばすことは可能です。しかし一日で身につくスキルではないので、実践の中で、長期的な視野で磨くとよいでしょう。

コンセプチュアル・スキルを構成する能力を理解する

コンセプチュアル・スキルは、コンセプチュアルに考えられる思考力のほかにも、幅広い能力や資質を含んでいます。育成対象者が持っている能力の現状、組織として期待する姿を明らかにしたうえで、トレーニングの具体的なテーマ設定を行うとよいでしょう 

コンセプチュアル・スキルを構成する能力としては、次のようなものが挙げられます。 

  • ロジカルシンキング(物事を主観的にではなく、冷静かつ論理的に考える能力)
  • ラテラルシンキング(経験や常識に縛られず、自由な発想ができる能力)
  • クリティカルシンキング(批判的に分析して解決策を見つける能力)
  • 多面的視野(目の前の事象を複眼的に見る能力)
  • 受容性(未知の価値観に直面しても拒絶せずに受け入れる能力)
  • 柔軟性(物事に対し臨機応変に着手する能力)
  • 知的好奇心(新しいものを楽しみながら取り入れる能力)
  • 探求心(「どうしてこの結果になるのか」を考えながら研究・分析を行う能力)
  • チャレンジ精神(失敗を恐れず挑戦する能力)
  • 俯瞰力(広い視点で物事を捉え、どの位置にあるか把握する能力)
  • 応用(技術や能力を工夫し、別の物事に役立てる能力)
  • 洞察力(物事の本質を見極め、将来の展望について分析する能力)
  • 直観力(直観的なひらめきをいかす能力)
  • 先見性(数十年後におけるニーズを予測できる能力)

コンセプチュアル・スキルを日常のなかで高めるには

日頃の実務のなかでコンセプチュアル・スキルを高めるには、以下のことを意識して行ってみましょう。

自由闊達な議論が行える環境をつくる

コンセプチュアル・スキルが高い傾向にある人は、論理的に前提を疑う姿勢や柔軟な発想力をもち、会議などで提言や指摘をためらうことなく発言できます。一方、そうした人に対して、否定的な会社があるのも実情です。しかし否定的な環境下では、コンセプチュアル・スキルを備えている人の能力発揮・活躍のチャンスが失われます。会社やマネジメント層は、どんな提言や指摘も受け入れ、本質的でチャレンジも含む議論ができる環境をつくることで、社員のコンセプチュアル・スキルを高めやすくなります。

日常的に仕事の基本行動の中で習慣化する

コンセプチュアル・スキルを高めるためには、日常的に以下の3つを意識するとよいでしょう。

1)物事を抽象化する

検討している課題や起こっている事象について、「構造」や「主要な要素」を抜き出し、ディテールにあたる要素を取り除きますこうすることで物事の本質が見いだしやすくなります。

 抽象化するトレーニング例)

  • 「要するに」というポイントを考える
  • 物事の構造を考える
  • 物事を図に書いて整理する、あるいは説明する

2)物事を定義づけする

物事の「構造」や「要素」に注目して、自分の言葉で定義します。

定義づけするトレーニング例)

  • 「商談の成功とは?」「マネジメントとは?」など、「とは?」を使って、自分の言葉で定義してみる

3)物事を具体化する

1)2)で抽象化し、定義づけしたことを、「具体的にはこういうこと」と、相手がイメージできるように事例を挙げて伝えたり、実践に活かします。この「抽象化」と「具体化」を行き来する能力が、コンセプチュアル・スキルとも言えます。

具体化するトレーニング例)

  • たとえ話や事例を意識して活用する

まとめ

コンセプチュアル・スキルは組織全体の生産性を高めるうえで必須のものと言えます。また、コンセプチュアル・スキルを発揮できるような職場風土・環境という土壌があることは、若手従業員によい影響を与え、未来のリーダー育成につながる可能性もあるでしょう。

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