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中途採用者の「オンボーディング」を成功させるには?(トレンドワード)

公開日:2023/06/15 更新日:2023/09/14

社員が早期離職してしまう、文化に馴染めずパフォーマンスを発揮できないという課題はどの企業にもあるものです。そこで、最近注目されている「オンボーディング」という取り組みについて解説し、とくに難しいとされる中途採用者への施策を効果的に進めるポイントを紹介します。

オンボーディングとは何か

人事分野でのオンボーディングとは、新卒入社、中途入社を問わず、新たに入社した社員が早期に活躍できるよう、組織全体でサポート活動や定着率を高める取り組みのことです。

オンボーディングが注目されているのは、転職が当たり前となった現在、社員の定着率に課題を抱える企業が増加しているからです。具体的には以下のような課題があります。

中途採用者への対応の遅れ

人材不足により企業は中途採用を強化していますが、現場に中途採用者をサポートする仕組みが整っていないため、中途採用者の定着や活躍の支援がうまくいっていないといったケースがあります。

リモート環境によるなじみにくさ

コロナ禍でリモート環境下での業務が増えたことで、気軽な雑談が減ったり、組織のメンバーの働く様子や人柄が見えづらくなったりと、新しい社員がなじみにくくなる状況が生まれています。

具体的にはどのような手段があるか

入社後にできるオンボーディングの手段には次のようなものがあります。

会社の全体像がわかる研修を行う

配属部署以外の業務についても知ることは、組織への帰属意識にもつながります。業種・職種によって研修内容の違いはありますが、自社の理念に沿った内容の研修を行うことがポイントです。

短期的な目標を設定する

採用者を即戦力化するためには、短期的な目標設定が有効です。入社して1か月、3か月、半年後までにどのようなスキルや成果をあげたいかを上司や人事と設定していきます。

メンターをつける

身近に相談役がいて気軽に話せる環境は、入社後の不安を解消します。業務以外のことも含めて相談できるよう、直属の上司ではない先輩社員が務めるほうがよいでしょう。

質問窓口を設ける 

メンターの不在時にも疑問や質問を解決できるように「質問窓口」を設け、サポート体制を整えるのも有効です。

業務日報の提出

日々どのような業務を行なっているか、どこまで動けているかを把握することで、いち早く改善のアドバイスができます。

オンボーディングプログラムを推進するメリット

こうしたオンボーディング施策に取り組むメリットを紹介します。

定着率アップ

入社後の早期離職の理由として、コミュニケーション不足による不安や悩みが解消できないこと、組織になじめないなどがあげられます。早い段階にサポートすることで、入社時に感じやすいミスマッチや不安を解消でき定着率がアップするでしょう。定着率アップは結果として、採用や研修などのコストの削減にもつながります。

社員のエンゲージメントの向上

オンボーディング施策によって社員が短期間で即戦力化し、実力発揮できるようになると、結果として組織の生産性アップが期待できます。貢献できているという実感は、社員のエンゲージメントの向上にも効果的です。

組織間のコミュニケーション活性化

他部署の社員がメンターになると、横のつながりができ、組織間のコミュニケーションが活発になり、互いの業務の理解促進や連携強化にもつながります。

中途採用者のオンボーディングがうまくいかない理由

新入社員のオンボーディングには問題がなくても、中途採用者についてはうまくいっていないという場合があります。理由としては次のようなことが考えられます。

新入社員と違って人事と現場が分断しやすい

新入社員に対しては、人事と現場が連携しながら支援する仕組みが整っていますが、中途採用者に対しては、その仕組みがない企業も多いようです。その結果、人事と現場が分断された状態となり、中途採用者が戸惑う原因になり得ます。

メンターとの相性まで考慮されていない

社員の定着や活躍にはメンターとの相性が関係します。しかしながら、企業ではメンターとの相性よりも、「メンターとなる既存社員の育成」や「人員不足の解消」を優先する傾向があり、相性まで考慮されていない場合もあるようです。 

本人と受け入れ組織の期待値にズレがある

以前の職場環境では活躍していた人でも、新しい環境ではすぐには実力を発揮できないケースがあります。一方で受け入れ組織側では、「中途採用者は即戦力」と認識をされているため、期待値とのギャップの差が大きくなってしまいがちです。中途採用者側もすぐに成果が出ないことで不安や戸惑いを感じ組織になじめなくなる原因にもなります。

成功のためにできること

以上のような課題を踏まえ、とくに中途採用者のオンボーディング成功のため、企業ができることを考えてみましょう。

既存社員にも育成方針を共有する

中途採用者の受け入れ準備として、中途採用者の育成方針や期待している役割などを既存社員にも共有します。配属前に共有しておくことで、お互いの意識のギャップを減らせます。

期待値のすり合わせを行う

期待値のズレを埋めるには、中途採用者と受け入れ組織が相互に理解を深めることが必要です。中途採用者側には、足りない知識やスキルを認めて補い、サポートを求める姿勢が、受け入れ組織側には中途採用者の足りない部分をサポートする姿勢が必要です。

 中途採用者同士の横のつながりを作る

中途採用者同士だからこそ理解できる悩みや不安があります。同じ時期に入社した人同士が横のつながりを作りやすいようなコミュニケーションの仕組みを作るとよいでしょう。

人事と中途採用者、人事と現場で1on1を行う

中途採用者のオンボーディング成功には人事と現場の連携が必須です。「人事と中途採用者」だけでなく、「人事と現場」でも1on1ミーティングを行うことで、状況を整理し、今後のサポートや必要なケアなど確認することができます。

メンターを育成する研修を行う

メンター制度がうまく機能させるためには、メンター側のスキルを高めるのも効果的です。

 

人材を確保するためには、採用だけでなく定着率を高めることも重要です。オンボーディングの成功はこれに加え、組織の生産性やエンゲージメントの向上にもつながります。人事と現場が連携しながら、意識してオンボーディングに取り組んでみてはいかがでしょうか。