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【シリーズ:変革リーダー育成のススメ】
第2回 変革リーダーをどう育成するのか?アセスメントの重要性

公開日:2024/02/15 更新日:2024/02/20

1回でご紹介したように、企業が変革を実現するには、その変革を牽引できる人材が不可欠です。しかし多くの企業では、社内における人材ウエイトが従来のままであり、変革を推進するための構成になっていないのが実情です。必要なスピード感をもって変革を目指すには、育成方法についても見直しが必要。今回は、その要となる「アセスメント」の意義を考えます。

1回:変革が求められる今、必要な人材/育成の考え方

今後あるべき人材育成とは?~従来型の体系を見直す

現状の企業における人材開発は、次のような構成になっていることが多いのではないでしょうか。 

  • ①階層別研修(課長就任時の新任研修など)
  • ②各種スキル別研修(リーダーシップ、コミュニケーション、ダイバーシティなど)

 もちろんこうした研修にはそれぞれに意義があります。しかし、変革牽引人材の育成に向けて内容をアップデートするのであれば、次のような点についても意識していくのが望ましいでしょう。

  • ①階層ごとに一律の研修→個人の現状・キャリアに合わせた人材開発へ
  • ②単品メニュー的なスキル別研修→育成の全体像を設計して行う人材開発へ

変革リーダーに必要な力とは何か

企業の変革を実現するにはどのような力が必要なのかを考えてみると、次のような力に分解することができます。

①変革のリーダーシップ

変革には多様な利害関係者が存在するため、さまざまな立場の人を牽引しながら変革を断行する強いリーダーシップが欠かせません。

②変革思考力(考える力)

従来の延長線上にはない方向に進むためには、適切な変革方向を示し、変革実現のための方法を見出すための思考力が求められます。

③障壁突破力(行動力)

企業の変革にはさまざまな障壁があります。そうした障壁に立ち向かい、打開、突破する行動力も欠かせません。

④変革への意志、意欲

失敗したり、反対意見が出たりしても屈することなく、目的に向かって挑み続ける強い意志が変革を支えます。

リーダーシップは重要ですが、進むべき道を示し、実現していくためには、考える力と行動力が伴っていなければなりません。そしてこれらの能力は、それを支える本人の強い意志、意欲があって初めて育ちます。さらにこうした意志や意欲を育むためには、それを促す「場」づくりや周囲の支援も重要と言えるでしょう。

アセスメントによる現状把握が有効な理由

意志や意欲に支えられた能力を育成するには、候補者個人の主体的な姿勢が欠かせません。また、候補者それぞれの現状の能力を踏まえた上で目指す人材像に近づけていくには、画一的な研修ではなく、個人別のブログラムが必要です。

こうした育成に向けて欠かせないのが、一人ひとりの現状を把握することです。事前のアセスメントによって個人別に現状を把握した上で、個別のプログラムを用意することで、本人は主体的に学ぶことができ、組織にとっても本当に必要な育成を実行することができるでしょう。

変革リーダー育成の理想的なステップ

具体的には、次のようなステップで育成を行うのが理想と言えます。

①アセスメント(自己認識)

個人が認識している自分の意識・思考・発言・行動と、他者から見たそれとのギャップを深く認識します。

②インプット(知識習得)

事業戦略、リーダーシップ、マネジメントなど、管理職が役割を発揮するための必要知識を習得します。事前にアセスメントを行うことで、個別の苦手分野を中心に、効率的に行うことができます。 

③チャレンジ(修羅場)

習得した知識を活用し、実践の場で今まで体験したことのない困難に身を投じる。さまざまな障壁を自らの力で乗り越えることが、自分なりのリーダーシップのあり方を身につけることにつながります。

④サポート(限界打破支援)

困難な場面では閉塞的な思考や行動に陥りがちなので、第三者からのサポートやきっかけの提供により、思考や行動を拡張、転換、深耕することができます。

 従来の人材開発は、②のインプットに重点が置かれがちでしたが、変革リーダーとしての実力をつけるために重要なのは③のチャレンジです。チャレンジに時間をかけるためにも、インプットはできるだけ効率的に行うべきであり、そのために事前のアセスメントが大きな意味を持つと言えるのです。④のサポートもまた、チャレンジを充実させる助けとなるでしょう。

こうして一通りのプロセスを完了したら、再度アセスメントを実施することで成果を測定することができます。必要に応じて次の育成プロセスに進むのもよいでしょう。

他にもあるアセスメントの活用例

このように、アセスメントは育成前の自己認識、研修成果の測定で大きな効果を発揮しますが、その他にもさまざまな人材開発の場面で活用することができます。参考までに、下記にアセスメントの活用例をご紹介しましょう。

①自己変革課題の設定

研修実施前に自己の現状レベルを認識し、自己成長に向けた変革課題を個人別に設定する。

②研修成果の測定

研修等の取組み前後に能力レベルを測定して前後の判定結果を比較することで研修等の成果を測定する。

③育成対象者の選定

サクセッションプランの対象となる次世代リーダー候補や管理者候補等の隠れた人材を発掘する。

④研修の企画

組織全体のレベルの傾向を測定して能力開発方法(研修等)の企画をする。

⑤組織開発課題の設定

組織全体のレベルの傾向を測定して組織開発における課題を設定する。

⑥中途採用者の課題設定

中途採用時に本人の強み、弱みを自己認識し、自己変革を促すことで入社後のスムーズな業務移行を実現する。

※その他、採用可否判断、昇格可否判断の材料としても活用可能

  

本稿では、変革リーダーに求められる能力と、その育成のために有効な個人別のプログラムをどう組み立てるかをご紹介しました。第3回では、アセスメントを活用することで何ができるのか、それを生かした具体的な人材育成プランについてもご紹介します。

関連リンク

シリーズ:変革リーダー育成のススメ

▶第1回:変革が求められる今、必要な人材育成の考え方
▶第3回:企業変革に必要な2種類の変革リーダーと具体的な育成方法