5分でわかるビジネストレンドワード

インポスター症候群とは何か?どう対策するか?

公開日:2024/07/11 更新日:2024/07/10

挑戦や昇格のチャンスを目の前にして「自分には無理だ」と躊躇してしまう理由の一つに、「インポスター症候群」が考えられます。従業員が高いパフォーマンスを発揮できる状態にするためにも、「インポスター症候群」とは何かを知り、対策に取り組む必要があるかもしれません。

インポスター症候群とは何か?

インポスター症候群とは、十分に能力があり、周りから認められているにもかかわらず、自分の能力や実績を過小評価してしまう心理状態を指します。自分のことを「運がいいだけで、仕事ができないのに周りを騙して高い評価を得ている詐欺師」のように考えてしまうことから、「詐欺師症候群」とも呼ばれ1978年に心理学者のポーリン・R・クランス(Pauline Rose Clance)とスザンヌ・アイムス(Suzanne Imes)によって提唱されました。

インポスター症候群の人の特徴

インポスター症候群の人には、以下のような特徴があります。有能な人材が存分に力を発揮できない精神状態となるため、企業にとっては見逃せない問題と言えます。

新しいことにチャレンジしない

インポスター症候群の人は、失敗を恐れ、チャレンジを避ける傾向にあります。上司から背中を押されても「自分には無理だから」と前向きになれません。また、失敗を自分のせいにならないように言い訳を用意しながら進め、本来の実力を発揮できずに終わってしまうこともあります。

必要以上に卑下して積極性がない

仕事で何か成功を収めたとしても、「自分は運がよかっただけ」と自分の実力を認めようとしません。自分の成功によって周りから「嫌われてしまうのではないか」とも考え、変化を嫌う傾向もあります。

日本では女性に多い傾向がある

企業で管理職に女性登用の動きが高まったことで、女性にインポスター症候群の症状が出やすいといわれています。クオータ制等により女性登用されると、本人が自分の能力による登用ではないと捉えてしまうというわけです。女性に管理職を打診しても断られてしまう原因の一つとも考えられます。

インポスター症候群の原因

インポスター症候群は、「自分が思う自分」と「周囲が思う自分(または理想の自分)」の大きさのギャップから生まれるとされますが、これは特別なことではなく、誰もが陥ってしまう可能性があるとも言えます。ここでは主な原因となる3点を紹介します。

 心理的要因

仕事で成功したり失敗したりすることで周囲からの評価が変わり、嫌われてしまうことを恐れるあまり、「変わってはいけない」と考えます。

人間関係

周りから褒められることや期待されることの裏側にある責任の重さを負担に感じ、プレッシャーなどをより感じてしまいます。プレッシャーから、失敗を恐れる気持ちが高まったり、たとえ成功しても「運がよかっただけ」と考えるようになります。

家庭環境

家庭環境が原因となることもあります。兄弟や姉妹と優劣を比較されて育ってきた場合は、親や周囲の目を伺ってしまうため、自己肯定感が低くなり、能力を信じられなくなります。逆に「素晴らしい子」と言われて育った人が失敗に直面したとき、自分の能力は「偽物ではないか」と疑うようになるケースもあります。

インポスター症候群をどう防ぐか?~本人にできること

インポスター症候群は、本人の気持ちの持ちようや行動によって防ぐことが可能です。

メタ認知行動を意識する

1日の振り返りをして自分自身のよかった点、頑張った点など紙やノートに書き出します。過去の経験を振り返って自分の能力や実力を客観的に分析することで自分を認めることができ、自己肯定感につながります。

今するべきことに気持ちを集中する

将来への不安は、心身疲労の原因となります。まだ起きていないことを心配しすぎても不安は解消しないため、仕事でもプライベートでも「今するべきこと」に気持ちを集中して取り組むのがよいとされます。 

<関連URL>

周囲に頼りやすい環境をつくる

優秀なメンバーの中に身を置き周囲に頼りやすい環境をつくることで、周囲に助けてもらいやすくなります。過度の期待や責任などに対する心理的負担も軽減しやすくなります。

インポスター症候群をどう防ぐか?~周りの接し方、対応方法

企業が従業員のインポスター症候群に対して適切な対処をすることで、従業員のパフォーマンスの改善につながります。対応方法を理解し、周りのサポート体制を整えることが重要です。

 相手を肯定する

インポスター症候群に陥っている人は、自分のことを卑下しがちです。周囲は相手を肯定し「理解しようとしている」姿勢を見せることが重要です。「相手を否定しない」という心持ちを意識してみましょう。

11での対話を心掛ける

インポスター症候群の人は周りの目を気にする傾向にあるため、対話は11で行うのがおすすめです。他の人に聞かれる心配がない状態であれば本心を打ち明けやすくなります。この場合、対象者だけに特別な対応をするのではなく、会社全体でも同様に取り組むと不自然さがなくより効果的です。 

能力に見合った業務を与える

インポスター症候群に陥っている人は失敗を過度に恐れます。過大評価にならないよう能力に見合った業務を与え、そこから成功体験を積み上げながら自信を取り戻してもらえるようにサポートすることが有効です。 

周囲に頼りやすい環境をつくる

周りを気にしやすく、自ら新しい環境に飛び込めない人もいます。企業は、対象者が「優秀な他のメンバーがそばにいる環境」を提供することや、溶け込みやすいようにサポートするとよいでしょう。

失敗を許容する文化をつくる

自分に厳しいインポスター症候群の人は、失敗を過度に恐れ挑戦を避けます。組織全体で失敗を許容する文化をつくることで、心的負担の軽減が期待できます。

<関連URL>