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課題解決しながら学ぶアクションラーニング

公開日:2024/11/19 更新日:2024/11/19

企業を取り巻く環境の変化の中で、予測しにくい課題への対処法を学ぶ方法の1つに、アクションラーニングという手法があります。企業がアクションラーニングを取り入れるメリットや学習の仕方などを解説します。

アクションラーニングとは何か

アクションラーニングとは、チームで問題解決に取り組みながら学ぶ手法です。組織で実際に起きている問題を取り上げ、その解決法をチームで議論し、立案、実施、振り返りを行いながら進めるのが特徴です。

この手法は、イギリスの物理学者レグ・レバンス(Reg Revans)が炭鉱労働者の教育に携わった際、「人はチームで何かを行う時に効果的に学習できる」と気づいた体験をもとに考案されました。その後、196070年代には、イギリスやヨーロッパ各地で主にミドルマネージャーの人材能力開発の手法として用いられるようになり、1980年代にはアメリカでもリーダーシップ開発手法として注目を集めるようになりました。欧米のビジネススクールでは現在でも、ケーススタディと並ぶ代表的なプログラムとしてアクションラーニングが導入されています。

アクションラーニングによって得られること

アクションラーニングの特色とそれによって得られるメリットには次のようなことがあります。

リアルな課題をテーマに学ぶことでモチベーションが持続できる

実際に業務の現場で課題となっていることを取り上げ、解決のために実践すべきことが学べるため、参加者のモチベーションが自然と維持できます。

従業員一人ひとりの能力開発ができる

現実の問題解決に向け、参加者が繰り返し自問自答しながら深い理解を目指すため、従業員個々の学ぶ力が開発されます。質問力や傾聴力、共感力だけでなく、EQなどのソフトスキルも鍛えられます。

現場での対応力やリーダーシップが身に付く

アクションラーニングでは、問題解決に向けて全員で考えながら、相手の思考を理解しようと努めたり、自発的に動くことを目指します。そのため、現場での対応力やリーダーシップを主体的に鍛えることができます。チームの学びと成長を促し、チームの力を引き出すようなリーダーシップの開発も期待できます。

組織の活性化につながる

アクションラーニングによって、個人の学習能力が向上することで、個人だけでなく自発的に課題解決に向けて取り組める組織に変化します。また、ひとつの課題に関してさまざまな立場のメンバーを集めて実施することで、部署内だけでなく部署間での積極的なコミュニケーションが習慣化し、企業全体が活性化する効果もあります。

 企業の抱えている課題が解決できる

アクションラーニングでは、実際に企業が抱えている課題を題材にして学習が行われるため、学ぶだけでなく、実際の課題解決につながります。

アクションラーニングの基本のルール

アクションラーニングは基本のルールを守って進めることで効果を発揮します。具体的には次のようなポイントがあります。

セッションの進め方

アクションラーニングの議論の場は「セッション」と呼ばれ、質問を中心に進め、参加者が意見を述べる時には質問に対して回答する形をとります。このルールを守ることで、決まった人がその場を独占するのを防ぎ、質問によってリフレクション(振り返り)ができ、より有意義な話し合いにつながります。

コーチの役割

アクションラーニングでは、参加者とは別にセッションを円滑に進める役のコーチが1人参加します。コーチは、議論の方向性を調整したり、参加者に対して質問や回答を促したりと、要点をまとめて参加者の認識を合わせるための介入をします。そのためコーチには、セッション全体を見渡せるファシリテーション能力が必要です。

チームの編成

全員がセッションに参加し、発言できる人数で行うのが望ましく、48人のチームが理想とされています。取り上げる課題についての専門家に特化するのではなく、社内からさまざまな立場のメンバーを集めることで議論の幅が広がります。

取り上げる課題

チームで取り組める課題を選定することが重要なため、組織内において緊急性や重要度の高い問題を取り上げます。

アクションラーニングの流れ

実際のセッションは一般的に次のように進みます。

(1)問題を明確にし、全員で共有する

チーム内で困っていることや問題を出し合い、解決したい課題を決めます。問題提示者が取り上げられた題材について簡潔な説明をします。各メンバーは、答えが広がるように質問していきながら、問題を明確にしていきます。 

(2)目標を設定する

質問と回答を繰り返し、課題が明確になったら問題を再定義します。その再定義された問題について、再びセッションを重ねて目標となるゴールの設定を行います。

(3)行動計画を作成する

設定した目標を達成するために、具体的に行動に落とし込んだ行動計画を作成します。

(4)セッション全体を振り返る

①〜③までのセッション全体について「今回のセッションはどう役に立ったか」「質問の仕方はどうだったか」など振り返り(リフレクション)を行います。

 (5)問題の解決策を実行する

セッションを通じて建てた行動計画を業務の現場で実行します。

(6)行動結果の振り返り

後日、再び同じチームで集まって行動結果を振り返ります。さらに再び①に戻ってブラッシュアップしていきます。

 

従業員が問題解決力を高め続けることは組織にとっての大きな力となります。一人ひとりの学ぶ力が問われる今、改めてアクションラーニングという学び方は注目に値すると言えそうです。