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    JMAの経営幹部育成プログラム③
    経営層の育成はどうあるべきか

公開日 : 更新日 : 長期的、計画的なサクセッションプランのために
JMAの経営幹部育成プログラム③
経営層の育成はどうあるべきか

ここまで、現代の経営幹部育成をめぐる課題と、次世代幹部の育成方法について聞いてきた本シリーズ。本稿ではその総仕上げとしての、役員研修について取り上げます。「JMAトップマネジメント研修」として展開しているJMAの役員研修の特色と狙いは何なのか?そこに込められた思いとともに聞いてみました。

現代の日本企業で経営幹部に求められる能力とは何か?

――現代の役員に求められる能力とはどのようなものであり、どのようなところに課題があると思いますか?

田中 「役員に何が求められるか」というポイントは、コロナ禍を経て変わってきています。ポストコロナの時代の役員にまず求められるのは、経営ビジョンや戦略のバージョンアップ。たとえばビール会社がバイオ分野に進出するように、単一事業による経営リスクを低減するような変化に向けた対応力も必要です。ESGやサステイナブル経営の維持も現代的なテーマです。

しかし現実的なところで、社外取締役の方などからご相談を受けるのは、「経営課題について具体的な指示を出せる経営者に変革してほしい」といった点です。たとえばDXについてであれば、ただ「大事なのでやっておいて」と言うのではなく、「どのセグメントで」「いつまでに」「どれくらいの予算で」「どういう結果を導き出してくれ」というところまで、ある程度経営者が勉強して落とし込む必要があります。ご相談の傾向から感じるのは、喫緊の課題に大してそういうことができていない経営者が多いということでもあります。

JMAでは、約40年前から役員研修を実施しており、1万1000人を超える卒業生を輩出しています。現在、募集型の公開研修は年35コースほど実施していますが、コロナ前と比較して20%ほど受講者が増えている状況で、多くのニーズがあることを感じています。

一般的な役員研修としては、いわゆるMBAのカリキュラム、つまり、戦略、アカウンティング、マーケティング、ファイナンスなど経営学の基本を踏まえた良質なプロクラムが数多くあり、人気もあると感じます。一方でJMAトップマネジメント研修は、「未踏課題の解決」や「日々の意思決定」を前提とした内容であることが特徴。MBAが蓄積された知識のインプットだとすれば、JMAの役員研修は「この先どうするか」を考えるという意味で、「未来志向の学び」だと思っています。

「JMAトップマネジメント研修」の特色とは?

――JMAの役員研修、「JMAトップマネジメント研修」の特徴的なポイントを教えてください。

田中 重要な要素の一つは「異業種交流」です。公開研修として実施しているJMAトップマネジメント研修には、さまざま業界の方が集まります。研修の場で出会った異業種の方との情報交換で得られる気づきは、自己変革につながり、経営者としての今後の道筋を作っていく大きなヒントとなります。

もう一つは、「実務経験者による講義」です。本物の経営実務を交えながら話ができる人の話は、目の前の課題解決や意思決定のためには大きな力となります。そのために、実に幅広い業界の経営者の皆様にご協力をいただいていますが、それが可能なのは、役員研修で40年の歴史をもち、ビジネス界に広範なネットワークを持つJMAだからこそ。数ある役員研修の中でも、ここまで実務者にこだわった例は他にあまりないのではないかと思っています。

「リベラルアーツ」を含んだ学びであることも重視しています。ここまでにもお話してきたように、現代は、ただ事業を行って業績を上げればよいという時代ではありません。そんな中で問われるのは、リーダーとして、また人間としての軸。それを形成するのがリベラルアーツだからです。

全体として、経営知識はカバーしつつも、むしろプラスアルファの部分、つまり、経営者に必要な人間力やリーダーシップ、求心力のような部分を重視しているところに特色があると言えるでしょう。こうした価値は財務価値と比べると可視化しづらい部分ですが、今の世の中で求められるのはまさにこうした部分であり、そこに濃密に取り組んでいるところこそ、長きにわたって日本の経営を考えてきたJMAならではの部分だと思っています。

役員研修で得られる本当の価値とは何なのか

——多忙な役員の皆さんが研修を受けるのはハードルが高いという声もあります。それでも役員研修を受けるべきなのでしょうか。またその理由は何でしょうか。

田中 JMAトップマネジメントの公開研修は、多忙な役員の方でも受けやすいよう、1回は基本的に2日~3日で設定されています。年間で日程が決まっていてできるだけスケジュールしていただきやすいようになっています。それでも、「忙しい中でなぜわざわざ経営戦略の勉強をしなければならないのか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、とくに新任役員の方にお伝えしたいのは、「部長時代の延長線上で仕事をされていませんか?」ということです。ご本人は変わらないつもりでも、周りの見る目は変わります。役員の発言は、さまざまなステークホルダーから厳しく見られています。そこをきちんと意識されているでしょうか。

こういうことは、一度外に出て自分の立ち位置を見つめ直さないことにはなかなか気づく機会がありません。「役員かくあるべき」などということは、誰も教えてくれないのです。そうした状態で社内に居続ければ、気づかないうちに硬直化した同質性の中で生きることになってしまいます。

JMAの役員研修を受けられる方は意識の高い方が多いので、そういうところに危機感を持ち、課題を持ち帰って変えていこうとされる方が多いと感じます。役員ご本人にはもちろん、自社の役員に研修を受けてほしいとお考えの社外取締役や育成担当者の皆様に向けても、さまざまなご提案の用意があります。社会から求められる企業、求められる経営者であるために、ぜひご相談をいただきたいと思っています。