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研修講師の本当の役割とは?|相手に正対する人材育成 Vol.4

公開日:2015/11/27 更新日:2020/05/06

研修の最前線で活躍する講師へのインタビューを通じて、人材育成について考えるシリーズ。

階層別マネジメント、プロジェクトマネジメント、技術部門のリーダー育成等のテーマで活躍する関根利和講師が、技術部門にとっての”組織マネジメントの重要性”と”人材育成の意味”について語ります。

研修という場の迫力

―「この研修の機会をあなたはどう捉えますか」「今日という日をどう生きますか」といったメッセージは、面と向かってだからこそ迫力をもって伝わるように思います。

(関根)
研修とは「教える」だけの場ではありません。これからどうやって生きていくのかを、受講者と一緒に考える場所なのです。セミナーの場自体が、かけがえのない人材育成の場だと思っています。
「教える」ことと「見守る・育てる」ことの両方で人材を育てている数時間なのです。軽く見ている人がいたら「あなたはやったことがありますか」と聞きたいです。「あなたは人に向かって7時間全力投球したことがありますか」とね。
そういうことを軽く考えている人がいるのです。人材育成に正面から向き合っていない人の特徴です。そう考えると、研修というのはすごく重いことですよ。

―それで、受講者に研修冒頭から”先制パンチ”を出しているんですね。

(関根)
P1050047「人生においてあなたは成長したいと思いますか」と、1発かましていますよ。少しは反応が変わります。
技術系の人には、同様の仕事をやってきた経験のある人のセリフの方が、説得力を増します。仕事や組織の構造が分かり、想像がつき、引っかかる部分も知っているからでしょう。
技術系でない人が言う言葉よりは、受け取ろうと思ってくれるのではないでしょうか。私は場を共有し、受講者と「正対」して育成しようと思っていますよ。一生に1回の出会いでお互いに最高のパフォーマンス、最大のパワーを出すということになろうかと思います。

研修講師の本当の役割とは?

―研修講師の中でも、”今の受講者その人に伝わるものだけ伝わればいい”、と考えている方もいると思います。

(関根)
以前の私もそうでした。何が変わったかというと、繰り返しますが受講者に「正対」するようになったのです。「何を言われても、どんな質問が来ても良い」と思えるようになりました。答えられないときは、素直に「答えられない」と言えます。
以前はそうではなかったですね。「こんなこと聞かれたら嫌だな」と心の中で思っていました。
「こんな上司がいて、本国からこんなことを言ってくるけど、どうしたらいいですか」と尋ねられたら、今は「自分で考えたらどう?」と言えます。

研修を提供する、とはそういうことですよね。知識を切り売りするのとは違います。そう思って受講者に向き合っているから、響いてくるものも違うのでしょう。

―教え方の力量とは違う軸があり、使命感に近いのかもしれません。

(関根)
まさにそういう感じですね。

―企業の人事の方でも、人材育成は社員に人生の転機を提供している仕事かもしれない、その重さと使命を感じているというお話を伺ったことがあります。

(関根)
人材育成の仕事の使命を分かっている人は、短期的な見えやすい成果ばかりに囚われないと思います。
私の研修は面白い話を盛り込んだり、柔らかいタッチで進めたりしていますが、自分としては“人生に1度きりの工作”をしているつもりです。
講師も受講者もお互いにこの場を共に過ごせて「良かったね」と言えるようにするのが、私の役割だと思い直しました。
最近になって「こういう仕事をしていたのか」と思えるようになりました。

~つづく(4/5)~

◆関根 利和(せきね としかず)プロフィール◆

1954年生まれ。1977年埼玉大学理工学部 卒業
外資系自動車部品メーカー勤務を経て現職。数多くの企業において、人材育成、目標管理制度、業務分析、プロジェクト支援、ネットワークの構築・運用管理等のコンサルティングを手掛ける。特に人材育成では、経営幹部から管理職、中堅層まで幅広く対象としている。豊かな経験を踏まえた実践的で明快な指導には定評がある。”難しい話をわかりやすく”がモットー。