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ベテラン講師が切り開いた新しい境地|相手に正対する人材育成 Vol.5

公開日:2015/12/02 更新日:2020/05/06

研修の最前線で活躍する講師へのインタビューを通じて、人材育成について考えるシリーズ。

階層別マネジメント、プロジェクトマネジメント、技術部門のリーダー育成等のテーマで活躍する関根利和講師が、技術部門にとっての”組織マネジメントの重要性”と”人材育成の意味”について語ります。

ベテラン人気講師が開いた、新しい境地とは

-関根さんが毎回の研修を“人生に1度きり”というつもりで全力投球されたり、参加者と「正対」するようになった、そのきっかけがこの1年にあったのでしょうか。

(関根)
一昨年、大きい病気に罹りました。そのときは人生の終わりだと感じました。もしかしたら亡くなっていたかと思うと、ラッキーだと思えます。だったら、「誰かのために役立たないといけない」と考えたのです。
もう1つは病気で弱気になって「もう仕事はそこそこでいいか」という思いがよぎったときに、自分の限界を決めるのは自分であることに気づきました。そのとき、私はずっと「残りの人生が少ないなら、少ないなりに頑張った方がいい」と思っていたことを思い出しました。

「くじけてもそこから立ち直ったら格好良くないか」とか、「そういう人生がいいな」とかね。自分の中で格好良い人生を歩もうと決めたわけです。儲けることとか有名になることではなく、決してくじけない、最後の最後まで成長し、頑張る人生が格好良いと感じました。冷静に考えて自分の人生の「格好良さ」を自分で定義するのは大事なことです。

その生き様を貫かなかったら、最後に死ぬとき、ほめられないと思いました。他人は誰もほめてくれなくてもいいですが、せめて自分でほめないとね。

-今の話は初めて伺いました。

(関根)
P1050043研修の受講者も「この講師は楽しくて明るくてオヤジギャグをいうけれど、他の人とはちょっと違う」みたいな感じで接してくれるようになったように思います。自分が思いを伝えることで人生を切り開ける人がいるのなら、その人に届けないのは自分の生き様として良くないと考えてやっているだけです。

全員が納得してくれているかどうかは分かりません。押しつけにならないよう言い方は気をつけています。人によって違いますが、気づく人は気づいてくれているはずですから。

だからレポートに「『教える』『教えない』のバランスを考えて、部下のことを考えてみたい」と書いていただけたら、それでいいかなと思っています。「人材育成はすごく悩むテーマだ」でもいいでしょう。

公開セミナーの受講者に受講レポートを書いていただいていますが、あるときから「頑張って書いてくれたのだから、頑張りに見合うぐらい応援しなければいけないな」と思い、まとめシートの大事な部分と思う所に線を引くようにしました。
そうしたら良いことが書いてあります。そこであらためて「私はこんなことを話しているのか」、「あれ、良い言葉だな」、「そういえばこんなことを言ったな」と思ったのです。

-他者に何が響くのか、それが分かると”学び合い”みたいになりますね。

(関根)
研修中はその場の直感で話していますから、実際に書いてもらった通りの言葉だったかどうかは確かめられません。ですが、その人にはそう届き、うまくまとめてくれたのだと思います。それで受講者と「正対する」ということがやっと分かりました。講師としての自分の成長にこのことが必要だったことも初めて気がつきました。

-関根さんはお客様の評価も高く人気で、研修では年間1,000人に近い方に会っていらっしゃいます。その数の人に正対するのはエネルギーが必要ですね。

(関根)
逆に受講者からもエネルギーをもらっています。相手に正対することも精神エネルギーのトレーニングになっているのではないでしょうか。集中しないといけませんからね。でも、今はそれができるようになっています。

-研修講師だけでなく、研修を提供するスタッフも、お客様や受講者に正対するということは共通していると思います。自分の役割を果たしているかどうかいつも問わなければならないと思います。

(関根)
最近お引き受けした仕事で、いろいろなことを注文され難易度が高かったのですが、「自分が飛躍するチャンスだ」と思い、正面から受け止めてやり上げました。

頑張っているうちに、いろんなことが分かってきて、元の専門以外の仕事までどんどん増えていくんですよね。
人材開発の方も、本当にその分野のプロになるのであれば、研修の現場に私たちと一緒に身を置いて、真剣に参加者やそこから新しく見える課題に立ち向かいましょう、とお伝えしたいですね。

~おわり(5/5)~

◆関根 利和(せきね としかず)プロフィール◆

1954年生まれ。1977年埼玉大学理工学部 卒業
外資系自動車部品メーカー勤務を経て現職。数多くの企業において、人材育成、目標管理制度、業務分析、プロジェクト支援、ネットワークの構築・運用管理等のコンサルティングを手掛ける。特に人材育成では、経営幹部から管理職、中堅層まで幅広く対象としている。豊かな経験を踏まえた実践的で明快な指導には定評がある。”難しい話をわかりやすく”がモットー。