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5つのポイントを押さえてレジリエンスを高める
「回復力や弾性」を意味するレジリエンス。ビジネスパーソンが困難な状況に直面しても、心が折れずに適応しながら成長する力を指します。レジリエンスは日々の訓練で高めることができます。今回はそのポイントをご紹介しましょう。
レジリエンスとは何か
レジリエンス(resilience)は、「回復力・弾性(しなやかさ)」などを表す言葉です。もとは心理学において、精神的な強さの指標の一つとして使われはじめ、現在はビジネスや教育、政治などにおいても、「困難な状況の時に、逆境をはねのけて回復する力」などという意味で広く浸透しています。
ビジネスにおけるレジリエンスという語は、「組織」と「個人」の2つの場面で使われます。組織の場合は危機管理力やリスク対応力などがある状態、個人の場合は困難な状況でもしなやかに適応できる力などがある状態を指す語として使われます。
企業では、予測不能なVUCAの事業環境のなかで事業を継続するため、レジリエンスの考え方を採用して組織の強化を図ろうとしています。個人については、ストレスの多い労働環境において、メンタル不調を起こす従業員が増えている実情を踏まえ、その防止策として人材育成にレジリエンスの強化を取り入れる例が増えています。
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それぞれの立場で身につける意義がある
レジリエンスは仕事人生を豊かにするための土台となるもので、働くすべての人に必要な力だと言えます。それぞれの立場の人が身につける意義を見ていきましょう。
1)若手が身につけるべき理由
たった一度の失敗で心が折れてしまい、貴重な成長のチャンスを掴めずに離職したり、メンタル不調を起こしてしまう若手従業員が一部存在します。
若いうちからレジリエンスを身につける機会を与えることで、仕事の量、質、人間関係によるストレスへの抵抗力がつくことが期待できます。また、早期離職やメンタル不調の防止にもつながるでしょう。
2)管理職が身につけるべき理由
管理職になると、目標達成や膨大な業務量、部下の指導や育成など、乗り越えるべき壁やプレッシャーが多くなります。レジリエンスの低い部下への配慮や指導も必要です。幅広い視野を持って組織全体を見るためにも、管理職自身がレジリエンスを高めることが重要です。
レジリエンスが身につけば、メンタル面での安定が図られ、数々のストレスから自分を守り、困難な仕事をタフにこなせる土台が作れます。
3)役員が身につけるべき理由
VUCAの時代、役員に必要なものは「ネガティブ・ケイパビリティ」だと言われています。正解がない状態に耐え抜き、自ら考え抜く胆力と、時間がかかっても解決の糸口を見出す力のことを指し、レジリエンスと重なる部分があります。
予測不能ななかで事業を継続させるという難しい舵取りを担う役員がレジリエンスを身につけることで、周囲から早い決断を求められるプレッシャーにも耐え抜く力となるでしょう。
4)ストレスを溜めやすい人が身につけるべき理由
“真面目で頑張り屋”の人は、ストレスを溜めやすい傾向にあります。とはいえ、本人にその自覚はありません。こういうタイプの人には、レジリエンスの考え方を教えることで、メンタルの不調を防ぐことが期待できます。
その他、金融、化粧品、衣料、家電など消費者のニーズの変化が早い業界で働く人なども、レジリエンスを身につけておくことで、変化に柔軟に対応できると考えられます。
研修で学ぶ意義
レジリエンスの高さには個人差はありますが、誰もが持つことのできる力であり、訓練で身につけることができます。ここではレジリエンスを身につけると、どのような効果があるのかをご紹介します。
集中力やパフォーマンスの向上が期待できる
レジリエンスが身についていると、強い怒りや不安によって動揺しても、感情をコントロールする力が発揮でき、気持ちの切り替えがうまくできます。冷静になって「今」に集中できるので、集中力やパフォーマンスの向上が期待できます。
ストレスを糧にして成長できる
レジリエンスの訓練では、自分を支える信念や価値観を明確にします。信念は行動の指針になるので、強いストレスに遭った時、それに立ち向かい、意思決定が出来るようになります。こうしてレジリエンスが身につくと、困難な状況に遭うたび、ストレスを糧にして成長できるようになります。
ネガティブな状況に対しても、柔軟に対応できるようになる
レジリエンスを身につけると、ネガティブな状況に対しても、柔軟な思考で「未来をよくすることができる」と捉えて行動することができるようになるでしょう。一つの考え方に捉われず、多角的に考える思考の柔軟さや、適度な楽観主義が修得でき、過酷な状況にも適応する力がつくからです。
対人関係の改善につながる
職場のストレスの要因で最も多いのが対人関係です。レジリエンスが身につくと、対人関係の改善につながります。凝り固まった考え方に執着しなくなるので、周りの人と協力や信頼関係を築きやすくなります。そうなると職場での孤立を防ぐことができ、一人では乗り越えられない困難に直面しても、協力してくれる人が現れ、困難を乗り越えられるでしょう。
自己評価力の強化につながる
レジリエンスを鍛えると、適切な自己評価ができるようになります。つまり、自分の強みを再確認して、自信を持つこともできるということで、これにより、ひるまずにものごとに挑戦を続けることが可能になります。
個人のレジリエンスを高めるために押さえるべき5つのポイント
ポイント1)感情をコントロールする
「今」に集中して、平常心を保つ「感情のコントロール」を心がけることが大切です。喜怒哀楽が激しかったり、物事に一喜一憂しがちな人は、特にこの点を押さえておきましょう。精神疲労が最小限に抑えられ、仕事のパフォーマンスを下げることなく、自分の力を発揮することができます。
ポイント2)自分を支える軸を明確にする
自分を支える軸(信念や価値観)を考え、明確にしておきましょう。強いストレスや困難な状況に陥った時、信念や価値観を持っていると行動する指針になり、自分を見失うことなく適切な対応がとれます。
ポイント3)柔軟性と楽観主義を身につける
レジリエンスの強化には、柔軟性と楽観主義を身につけることも大事です。柔軟性は、一つの考え方にこだわらず、物事を広い視点で捉えること。楽観主義とは「困難な状況でも未来をよりよくすることができる」と捉え、それに向けて柔軟に行動できることです。ともにビジネスには必要不可欠なスキルと言えます。
ポイント4)対人関係のスキルを磨く
対人関係のスキルを磨き、人とのつながりを構築することも重要です。いざという場面でサポートしてくれる仲間がいると、障害や問題が起きた時に協力してもらうことができ、問題を最小限に抑えることが期待できます。
ポイント5)自己肯定感を高める
レジリエンスを高めるためには、自分の強みを再認識して、「自己肯定感」を高めることを習慣づけましょう。「さっきよりうまくできたから、次は大丈夫かもしれない」と、失敗に価値を見つけ出すのがコツです。この習慣を続けていくと、物事に挑戦した時、失敗しても早く立ち直ることができるでしょう。
以上のようなポイントは、専門の研修プログラムでも学ぶことができます。レジリエンスというまだ馴染みのない概念の基礎知識を踏まえたうえで、自分の強みや信念・価値観を明らかにする作業、対人関係を高める方法などをワークで学びます。実際に複数の人たちとで体験しながら学ぶ方がより効果的に身につくので、研修で扱うテーマとしておすすめです。
レジリエンス向上:折れない心をつくる
https://solution.jma.or.jp/service/training/theme/skill/skill6_4/
まとめ
レジリエンスを鍛えるタイミングとしては、入社した時や、異動・昇格で環境・役割が変わった時がベストだと言えます。新しい年度を迎えるにあたり、レジリエンスの研修を検討してみてはいかがでしょうか。
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