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ダイバーシティ推進のカギとして注目される「ビロンギング」とは

公開日:2023/12/08 更新日:2023/12/08

ダイバーシティ推進には取り組んでいるものの、具体的な成果が感じられないという声も耳にします。そんな中、ダイバーシティ推進の鍵として浮上してきたのが「ビロンギング」という概念。ここではビロンギングの定義やダイバーシティとの関係を解説します。

ビロンギングという言葉の定義

ビロンギングは、所属を意味するbelongという単語からできた用語です。従業員一人ひとりが所属している職場に対して、「帰属意識」や「自分の居場所がここにある」と安心感を得られている状態を示す言葉として使われています。

昨今ではダイバーシティに関連するDE &Iの考え方に「ビロンギング」が加わり、DEI&Bと呼ばれることもあります。多様性のある職場で従業員一人ひとりが自分自身の能力を発揮するには、所属している職場に心理的安全性を感じられる状態が不可欠とされますが、そうした心理的安全性に関わる要素の一つとして注目されるようになったのがビロンギングという概念なのです。

ビロンギングとエンゲージメントの違い

「ビロンギング」と似た概念として、「エンゲージメント」を思い浮かべる方もいるかもしれません。両者の違いについて考えてみましょう。 

エンゲージメントには「約束」「契約」などの意味があり、企業と従業員の間の「信頼関係」と捉えることができます。従業員は企業に対して貢献し、企業は従業員の貢献に労うことを約束する、この「約束」に当てはまるのがエンゲージメントとも言えるでしょう。エンゲージメントが高いと生産性が高まったり、離職率が下がったりするのはこのためです。 

一方ビロンギングには、従業員が企業や組織に対して持っている「感情や感覚」が含まれると考えるとよさそうです。組織に対して「自分の居場所はここだと心地よく感じている状態」「組織に愛着があり、組織の一員であるという自覚を持っている感覚」というような、より個人的な感覚が含まれるともいえます。

ちなみに、従業員が企業に抱くエンゲージメントを「従業員エンゲージメント」とも言いますが、顧客が企業に対して抱く「顧客エンゲージメント」も成立します。一方でビロンギングについては、顧客ビロンギングという概念はありません。

なお、ビロンギングとエンゲージメントの間には、ビロンギングが高い従業員ほどエンゲージメントも高いという相関関係が指摘されています。

なぜビロンギングが注目されるようになったか

ビロンギングが注目されるようになった理由は大きく3つあります。

コロナ禍によるエンゲージメントの低下

コロナ禍でのテレワークの普及により、上司と部下間、組織内でのコミュニケーションが減り、エンゲージメントの低下による退職者が増加しています。ビロンギングの概念は、こうした状況を解決するヒントとしても注目されるようになりました。

人材の流動化

雇用形態の多様化や転職による人材の流動化によって、従業員の「組織に所属する安心感」が減少し、職場に心理的安全性が生まれにくい状況になっています。副業などで個人の所属先が増えたことも「所属する」意識が低下する原因の一つとなっています。

 DEIに向けた取り組みの広がり

企業のDEIの取り組みとして、女性管理職や障害者雇用の割合など多様性の実現に注目が集まっています。そうした多様なメンバーが一体感を持つため、帰属意識を感じるためにビロンギング施策の必要性が高まっています。

ビロンギングが生まれることのメリット

終身雇用の名残もあって日本人は「企業への帰属意識や忠誠心が高い」というイメージがありますが、「従業員エンゲージメント」という観点で見ると、125カ国中124位という調査結果もあり、かなり低いことが分かっています。

従業員エンゲージメントの向上は、生産性の向上や離職率の低減などさまざまな効果をもたらすとされ、企業にとって大きなテーマとなっています。先ほども触れたように、ビロンギングとエンゲージメントには相関関係があるとされ、ビロンギング向上を図ることで、エンゲージメントが高まることが期待できます。

自社への帰属意識を高めるために企業ができること

では、企業が従業員の帰属意識を高めるためには何ができるでしょうか。たとえば以下のような施策が役に立つかもしれません。

 インナーブランディング

インナーブランディングとは、企業が従業員に対して自社の企業理念やビジョン、ゴールを伝えて浸透させる啓蒙活動のことです。会社として目指すべきゴールが明確となることで、従業員も同じ方向に向かって進めるため、モチベーションアップや帰属意識の向上が期待できます。 

社内の円滑なコミュニケーション

社内コミュニケーションの活性化は帰属意識の向上につながります。部署を跨いだシャッフルランチや「部活」を導入するなど、企業が主導する形で、従業員同士が適度なコミュニケーションを取るための機会を提供するのもよいでしょう。

福利厚生の充実

資格手当や食事手当、健康診断の充実など給与以外の取り組みに対して魅力を感じる従業員もいます。企業と従業員の良好な信頼関係も築くためにも、福利厚生の充実は有効と言えるでしょう。

社内報やクレドカードの作成・配布

従業員インタビューや部署紹介など社内の情報を載せた社内報や、企業の信条や行動指針が載っているクレドカードを従業員に配布することは。従業員一人ひとりが組織について意識する機会となり、どのように組織へ貢献できるのかを考えるきっかけになります。

 

ダイバーシティ推進の成功には、DEIの先に「ビロンギング」を加えて、従業員が「組織に受け入れられている心地よさ」を感じられる状態にするのが効果的です。今後のDEIは、ビロンギングとセットと考え、従業員の帰属意識の醸成も含めて取り組んでみるとよいかもしれません。