今どき研修テーマ&メソッド図鑑

Z世代の新卒入社組を迎えて行う新入社員研修のポイント

公開日:2024/12/26 更新日:2024/12/26

新入社員研修は、階層別研修の中でもとくに実施率の高い研修です。押さえるべき内容は決まっている部分も多いですが、時代や社員の気質に合わせて実施することでより高い効果を上げることができます。今押さえておきたい新入社員研修のポイントは何かを考えてみましょう

新入社員研修で達成したいことの基本

最初に、新入社員研修で達成したいことは何かを押さえておきましょう。企業によって異なるものの、概ね以下のような点が挙げられます。

学生から社会人への意識改革

社会人としての自覚を持つことは、社員として責任ある行動を取るためにも不可欠です。新入社員研修の最も大きな目的の一つともいえるでしょう。

 社会人として必要なスキル・知識の習得

業務を遂行するうえで必要な知識の習得は、配属後にスムーズに業務を実践し、力をつけていく基礎となります。研修でしっかり学んでおくことが新入社員本人の心理的負担の軽減にもなります。

 自社への理解の向上

企業側の望む成果を挙げてもらうためにも、自社への理解は欠かせません。新入社員自身のモチベーションを上げるためにも有効です。

新入社員研修によりこうした目標を達成することは、仕事の基礎を覚えてもらうだけでなく、新人が自信をつけたり、安心感を持ったりすることにもつながります。つまり新入社員研修は、新人の早期戦力化につながるだけでなく、早期離職の防止のためにも有効です。

最近の新入社員の特性から考えられる課題

現在、新卒で入社してくる新入社員は、いわゆるZ世代と呼ばれる世代に当たり、働くことへの価値観についても、上司世代とは異なるさまざまな特徴があります。たとえば次のような点はその代表的なものと言えるでしょう。

  • 変化より安定を好み、挑戦が得意ではない
  • 多様性に慣れていて、「個」として見られることを好む
  • 承認欲求が強い
  • フラットなコミュニケーションを望む
  • 個人プレーよりチームワークを重視する
  • 効率性を重視する
  • 社会問題に関心がある
  • ワークライフバランスを重視する

一方で、業務スキルという視点で見ると、次のようなことが言えるようです。

  • デジタル慣れしているが、パソコンスキルについては不足気味
  • コミュニケーション能力は高いが、ビジネスコミュニケーションスキルとなると話が別
  • 自律性、主体性にはやや欠ける

研修担当者は、こうした価値観の変化やスキル面の傾向を踏まえ、新入社員の特性に合わせた研修の進め方や、コミュニケーションの取り方・課題の与え方をする必要があります。研修を行う側と受ける側では異なる価値観や思考を持っているということを、他の階層別研修以上に、とくに意識しておくべきだと言えるでしょう。

リモート?出社?研修方式に関する検討ポイント

新型コロナの流行期の出社自粛期間を機に、新入社員研修においてもオンライン研修(eラーニングを含む)が導入され、現在も引き続き実施しているという企業もあるはずです。たしかにオンライン研修には、遠隔地からも参加しやすいなどメリットがありますが、コロナ期の経験から課題も浮き彫りになっています。以下はその一例です。

  • アウトプットの機会が少なく、実践的に学べない
  • 社員同士のつながり、人事担当者とのコミュニケーションが生まれにくく受講者が不安になる
  • 学生から社会人への意識の切り替えがしづらい

とくに「意識の切り替え」については、新入社員研修の大きな目標でもあり、達成できないままでは研修の意義が問われかねません。オンラインによる新入社員研修を実施する際には、上記のような課題をどう解決するかを考える必要があります。

例えば、「オンラインであっても少人数でしっかり語り合う時間を作る」「アウトプットを含む内容については出社で実施する」などの方法が考えられるでしょう。

新入社員研修のカリキュラムの作り方

新入社員研修で意識したいのは、一人ひとりの可能性を引き出すということです。研修に参加した結果、「わからないこともあるが、この職場でトライしていこうと思える」ことや、「学んだことが実務に活かせる」ようになることが重要であり、そのような場を作ることが成功のカギになります。

新入社員研修の基本として押さえるべき内容については、以下のように意識して組み立てるとよいでしょう。

 ビジネスコミュニケーションスキル(相手に伝わる話し方・聞き方)

ビジネスでのコミュニケーション力とは、相手や目的に応じた関係構築・聞き方・相手に伝わる話し方ができることです。学生と社会人との違いを再確認しながら、社会人として円滑に仕事が進められることを意識しながら学べるようにしましょう。ワークを組み込みながら実践的に学ぶ形が理想的です。

自分で考える力(論理的に考える力・柔軟に発想する力)

自分で考える力はあらゆる思考の土台となりますが、Z世代が苦手とする領域でもあります。論理的に考える力・柔軟に発想する力を身につけることは、根拠を伴う言動につながり、ひいては本人の自信にもつながります。

仕事に向き合う意識(ビジネスマインド)

社会人1年目の生活を軌道に乗せ、自信を持って仕事に向き合えるように、新入社員の心得や常識、現場で求められる行動についてインプットします。会社と仕事について理解し、給与など対価が発生する仕組みを考えることも、ビジネスマインドの獲得には有益です。

自社・自社事業について知る

「自社や自社の事業に共感できる」ということは、Z世代のモチベーションに大きな影響を与えます。研修で経営理念や自社の事業を掘り下げて学ぶことで、事業内容への理解を深めましょう。

さらに、プラスアルファで学んでおきたい内容としては次のようなことも挙げられます。

チームビルディング

実務に向き合うにあたり、職場に貢献する方法や人間関係のあり方を探ること、同期とのつながりを強化・維持することで、Z世代の求めるコミュニケーションやチームワークやコミュニケーションを実現することができます。一体感の感じられるワークを取り入れるとよいでしょう。新入社員研修後、部門配属時に行うのも効果的です。

メンタルヘルス(セルフマネジメント)

具体的な悩みや不安などが潜在しているタイミングでメンタルのセルフケア方法を学んでおくと、負担を軽減することができます。今まで経験したことの振り返りやシェア、不安解消に向けた相談の仕方など、演習で学ぶとよいでしょう。

実務者講演

どちらかというとフォローアップに類する内容ですが、ある程度実務を経験したタイミング、具体的には入社から1年経った頃に効果的な研修です。仕事を通じて自己を開発したり、チャレンジする姿勢を引き出す効果が期待できます。これまでに新しいプロジェクトの推進・実現した人の経験談を聞き、気づきや自身のチャレンジしたい方向性について参加者同士でディスカッションするとよいでしょう。

ここでは一般的な内容をご紹介しましたが、「新人にどんなスキルや認識を持っていてほしいのか」という現場からの要望も重要です。また、できることなら、研修のゴールは入社から1年~3年後と長期的に考え、そこから逆算して育成するのが望ましいですが、人材流動化の進む現在の環境では早期育成も求められます。こうした現場の課題を把握しつつ、取り上げるべき内容を取捨選択しながら、ゴール達成に向けたカリキュラムを組み立てましょう。

オンライン研修ならではの課題の解決法

オンライン研修やeラーニングでは、「コミュニケーションが生まれにくい」「モチベーションが上がらない」などの課題があることは先ほどご紹介しました。そこで、こうした研修を取り入れる際にできる解決策をご紹介しておきます。

ただ受け身で見て学ぶ、聞いて学ぶのではなく、本人に話させるなど「考える」「振り返る」しかけを作る

eラーニングを活用する際も、報告書の提出とセットにするなど、アウトプットの場を設けるようにしましょう。

休憩中にグループをシャッフルする

→より多くの人とコミュニケーションが取れるよう意図的にコミュニケーションの場を作りましょう。

講師以外にファシリテーターを参加させる。

→講師1人では目の届きにくいところまで目を行き届かせ、平等に参加者に発言の機会を作ることができます。

新入社員+人事のSNSをつくる

→研修外でもコミュケーションを取ることで、不安感の解消につながります。特に、社内の誰に何を聞けばよいか分からない新入社員にとって、すぐに質問できる場は重要と言えるでしょう。

おわりに

新入社員研修は、新入社員が企業で働いていく上での土台となります。研修担当者としては、そのことを意識しつつ、研修の目的を明確にしたうえで企画・実施したいものです。また、新入社員研修は実施するだけでなくその後のフォローも重要です。新しい世代の価値観を受け止めながら研修を進め、より一層の可能性を引き出す内容としていきましょう。