AGS【階層別研修(若手・中堅)】
◆カスタマイズ階層別研修 IT企業として幅広いサービスを提供されているAGS株式会社。自ら業務を動かし改革する「自律型人材の育成」という目標を掲げ、階層別研修体系を「自社ならではの活きたもの」にしていくための取り組みについてお話いただきました。お話を伺ったのは AGS株式会社 企画管理本部 人事部の安藤淳様、聞き手は日本能率協会(JMA)山川真貴子です。
階層別研修の見直し~「体系」になっているか?~
(山川) まず、安藤様の現在のお仕事の範囲や、人事部の中でのお役割についてお伺いできますか。 (安藤) 人事には、大きく分けて、人事・給与関係、労務管理、研修、採用の4つの仕事があり、その4つすべてに何らかの部分で関わっております。 研修の中では、階層別研修という部分を主に担当し始めたところです。 (山川) 階層別研修というと、今回、小会でお手伝いさせていただいているのは「若手社員研修」と「中堅社員研修」ですが、それ以外も体系化されているのでしょうか。 (安藤) はい。階層別研修は、「新入社員研修」が出発としてあり、そこから「若手社員研修」、「中堅社員研修」、「管理者基礎研修」、「ビジネスプロ研修」、「ミドル社員研修」というピラミッドで構成しています。それを毎年、一通り実施しています。 (山川) 私どもJMAで、「若手社員研修」、「中堅社員研修」を担当させていただいたのは去年からですが、それ以前から実施されていたということですね。 去年、改めてご相談いただいたのは、それまでの研修で何か課題があったということでしょうか。 (安藤) 「若手社員研修」と「中堅社員研修」は、平成24年度までは社内講師でやっていたのです。 それが、25年度に向けて研修制度自体を見直し、強化していく中で、この2つの研修については、社員が力量を向上できるような研修を行うという点で、人事部が講師になって説明をするというところに少し限界を感じていたのです。 「中堅社員研修」は、25年度は他社さんに委託しました。実は、そのときは、日本能率協会さんも含めて何社かに提案をお願いして、その中で別の会社に研修を依頼したのですけれど、一年やってみて、何かしっくりこないところがありました。 それで、26年度は、改めて弊社の人材育成の課題を研修の要望としてお伝えし、日本能率協会さんともう1社に提案をお願いして、検討した結果、日本能率協会さんが、一番弊社の要望、イメージに合っているということで決めさせていただきました。 (山川) 26年度に研修内容を変えられたときのポイントは何だったのでしょう? (安藤) 「若手社員研修」と「中堅社員研修」の2つに、関連性を持たせたいということがありました。 「若手社員研修」は入社4年目の社員を対象にしています。「中堅社員研修」の場合は、入社6年目から9年目くらいまで、だいたい7年目の人が中心です。若手の研修の3年後ぐらいに中堅の研修ですので、時期的に割と近いですよね。 「若手社員研修」のときに1つのテーマを作って取り組んでもらい、「中堅社員研修」では、さらにそれをステップアップしたものに取り組んでもらいたいという思いがあったのです。 26年度に提案していただいた中で、日本能率協会さんが、若手のほうも中堅のほうも、弊社が考えているイメージと本当にぴったりと合った内容を提案してくださったので、それがとてもよかったのです。
研修導入における2つの難しさとは?~業界の実際業務に合ったトレーニングを~
(山川) そうすると、御社の課題に対してわれわれが適切にプログラムをカスタマイズして提案できたということですね。 (安藤) そうですね。 弊社としてもイメージはあったのですけれど、「このような思いがあるのですが、提案してもらえませんか」とお願いしたところを、うまく汲み取って提案していただいた感じです。 若手社員というのは、やはり”思考力”が必要で、まずはそれを深める「思考力研修」としましたが、さらに中堅社員になると、単純にロジカルシンキングができればいいのではありません。中堅社員は”自律型人材”として、自分で業務を推進できること、それを一番大きなテーマにしたいという思いがありました。 特に、日本能率協会さんの研修の「中堅社員が自ら行動する」「企画提案、業務推進」というテーマが、まさに刺さったという感じで、お願いすることになりました。 (山川) 提案内容を採用していただいてから、さらに詳細を詰めていく過程があったと思いますが、そういう中で課題になったこととか、難しかったことなどはありませんでしたか。 (安藤) 難しさは2つあったと思っています。 1つ目は、やはり研修を2日間やるわけですから、話し合っているだけでは物足りないので、”トレーニング”をする必要があったことです。2つ目は、マインドセットを促した上で、研修で得たものを意識して普段の仕事の場で使えるような内容にするという点です。 この2つがあったのですけれど、弊社はITシステムの会社ですので、トレーニングのところが特に難しかったのです。”ロジカルシンキング”など社会人の一般スキルのトレーニングは、公開型研修に行かせることもあるのですけれど、システムエンジニアのプロジェクトの実際とは、またちょっと違うところがあります。一般的な研修で、社会人の一般スキルを学びに行ってしまうのでは、空振りではありませんが、身に染みるところがちょっと足りないと思っているのですね。 スキルトレーニングになるものの中でも、できればシステムエンジニアや、当社の仕事につながるものをマ学んでほしいという思いがあって、そこが難しかったのですよ。さらに、対人関係のスキルも大事にしたいという希望もありました。実際の仕事でも、対人関係や組織間の問題が入ってくると、問題の解決や業務の推進は非常に難しくなりますよね。 たとえば単純に「傾聴スキル」の研修に行くと、傾聴だけに特化したトレーニングがあって、練習にはなりますが、難しさは感じないでしょう。日本能率協会さんの研修は、本当に実際に職場で起きそうなことなどが演習テーマになっていて、結構ケーススタディでは難しいものを作ってくださっているので、システムエンジニアの実務らしい、しかも人の関係でも悩む研修になっているのですね。トレーニングするという意味で、強いものを作ってくださっているなと思いました。 (山川) そうすると、思考力とか業務推進力というスキルを扱う中で、どういう演習のアプローチをとるかという時に、IT業界に合わせた演習というところがポイントになったのですね。 (安藤) そうですね。 研修を実施する中で、当社に合っているなということは強く感じましたね。
研修効果を高める事前・事後の取り組みとは?
(山川) 今年は2年目に入りましたが、去年一度やってみて出てきた課題はありましたか。 (安藤) 研修のプログラムそのものはあまり変えようとは思っていませんが、今回は、研修で学ぶのと併せて、人事から、”会社の思い”を研修の前後に積極的にメッセージとして出すといったことを心掛けました。 (山川) 研修の場だけではなく、前と後ろで、どのように受講者にアプローチするかということでしょうか。 (安藤) そうですね。研修の開催前に、研修の目的や、課題意識について語るメールを送ったり、研修の途中で口を挟んで、”こういうことを頑張ってください”と直接受講者に伝えたりしました。研修後にも、研修内の講話で役員が話していた会社の方針に関しては、”こういう情報があるんです、もう1回確認してください”、とメールを送ったりもしていました。 弊社には、”自分で仕事を動かせる自律型人材”の社員を増やしたいという、痛切な思いがあります。せっかくそこに連動した研修をやってくださっているのですから、人事としても、単純にスキルアップのために実施していますというのではなく、「こういう力が足りないのだから、強くしていきましょう」、と会社の考えを感じ取ってもらえるように、メッセージ発信をしたということです。 (山川) 研修自体に、事前課題も事後課題もあって、とても丁寧な研修ですので、そこでもやはり人事部さんのサポートが必要になります。いろいろとやっていいただいていると思いますが、ちょうど2015年度の研修が終わったところですが、事後課題の状況はいかがでしょうか。 (安藤) 今、研修を受けた者に取り組みを促しています。研修の事後課題として、各自、業務の問題をロジックツリーで分析して、改善を提案、遂行するというものがあるのですが、今回は、事後課題を出すときに、「ロジックツリーというのは思考力がそのまま表れますので、きちんと考えてくださいね!」と言って、ちょっとプレッシャーをかけてみました。また、「企画提案の研修なのだから、最初から業務として予定しているようなものはいけません、自ら新たに企画提案してください」と、ちょっと強めに言っています。 昨年度は、受講者が提出した事後課題を見ると、せっかくこういう研修を行ったのに研修の主旨をダイレクトに受けとめられていない、内容を十分に飲みこんで事後課題に取り組むことができていない社員が少なくないという反省がありました。そこで、今回は人事として研修を更に活かすための積極的な意識付けをした、ということですね。 (山川) 事後課題は、人事に提出することになっているのですか。 (安藤) はい。上司に説明して、取り組みについて了承を得たうえで、上司と人事に提出するかたちです。 (山川) そうすると、その企画の課題をどの位置に設定するかで、その方の志が見えてきますね。 (安藤) そうですね。でも、志ばかり高ければいいというわけではありません。やはりそこは何か実際に実現、活用できるものでないとならないと思います。 (山川) 実際に、研修後の事後課題が業務に活かされているのでしょうか? (安藤) はい。例えば去年は、受講者に人事の者がいたのですが、人事部内の業務について各担当者がばらばらに持っているものをつなげる仕組みを提案してくれました。今、その改善提案が部内で実際に使われています。 実際に活用できるものだといいですよね。 (山川) テーマ設定、課題設定の目安は人事のほうからみなさんにアナウンスされているのですか。 (安藤) そうですね。昨年度の受講者の企画では、”最初から業務として予定されていることでは?”というような、努力が見えないものもあれば、逆にハイレベル過ぎる企画で、失敗必至だろうというものもある、という感じでした。ですので、今回の受講者には、「自分のできる範囲でやりましょう。ただし最初から到達できるような簡単な企画をつくって100パーセント達成するよりも、努力して高い水準の課題設定をして企画したけれど途中までしかできないほうが、価値がありますよ」と伝えてあります。 また、ありがちなのですが、「他の人の役割ばかり提案するのは避けましょう」とかですね。こういうロジックツリーを作って施策を立案すると、”会社や、他の誰々がすればいい”、というような冷たい施策、自分はあまり汗をかかないような企画をまとめてくるケースが少なからずあったのですよ。やはり慣れていないと、「当社はこうすればいい」という、評論家的な提案になってしまいがちなのです。でも、そうではなく、自らやってほしいというのが大前提としてあるのですね。 そういった具体的な条件を示しながら、このいい研修を活用できるような取り組みをしています。 (山川) とても素晴らしい施策だと思います。
事務局の「思い」を汲み取る丁寧な感覚とは
(山川) 個別の研修についてお伺いしてきましたが、日本能率協会として評価をいただいているところと、もっとこういうことをやってほしいというような、率直なご意見をぜひいただきたいと思います。 (安藤) お願いしているこの2つの研修で特にすごいと思うのは、先ほども申し上げたように、スキルトレーニングとして成り立っているという部分です。システムエンジニアというのは、トレーニングが難しいです。 対人関係の対応力も使いながら業務プロジェクトを進めるスキルなど、複雑な育成課題にダイレクトに刺さるものを用意してくださっているところが、とてもありがたいです。 一般的などこにでもあるようなトレーニングメニューではなく、ちょうど研修講師の方がシステム会社のご経験があり、システムエンジニアやコンサルタントとして、苦労してきた部分や経験に裏打ちされている部分をちゃんと盛り込んでくださっています。そこが特にありがたいところですね。 マインドセットのところもそうです。講師の方が、弊社の課題を意識してくださっているんです。弊社は「業務改革」に取り組むことを重点施策に掲げているのですが、研修の最初に、「これは改革型の業務を行う研修です。どの会社も維持管理業務が多くなりがちですが、改革型の業務というのは本当に大事で、業務改革をやらない会社は淘汰されます」ということを強調してくださったのですね。 あとは、「問題解決というけれど、一番よくないのは問題に気づかないことで、実は最初の発見が一番難しい」とも強調してくださって。「問題に気づかないというのは、すごく根深いんです」と言ってくださいました。その辺りも素晴らしいと思っています。 (山川) 小会の事務局としての対応面はいかがでしょうか。 (安藤) いつもとても丁寧に対応してくださっています。なかなか小まめに連絡を返せないこともあるのですけれど、そこもいつも丁寧に、期限が近くなるとアラームを出してくださいます。 定期的に来ていただいているし、研修の中身の運営の仕方も、ずっと気にしてくださってもいます。 今回も、グループワークをするときに、私からは、グループの構成人数を少なくしたいという話をしたのですが、「逆に少なくし過ぎても難しいので、運営上これぐらいがいい」というふうに、講師と相談したうえでアドバイスしてくださるとか、きめ細かく対応していただいています。 やはり研修に関する要望というのは、実現できないものもあると思うのですね。 そこを100パーセント弊社の言うままにしていただく必要はないのですけれど、こまめに気に留め、丁寧に弊社の思いを汲み取っていただけているからこそ、こういうマッチした提案を出してくださったと思うのですよね。 研修会社さんが持っているメニューからチョイスしてそのまま持ってこられても、それはそれで素敵な内容なものもあるのでしょうけれど、そういうスタンスは弊社に合わない、それは違うなと感じてしまいます。思いを汲み取る丁寧な感覚は、とても大事だと思うのです。
自律型人材の育成のために…相互に刺激し合う会社を目指す
(山川) JMAがご支援している研修に限らず、現在、人事部さんで感じていらっしゃる課題や、これからどういう部分に手をつけていきたいと考えておられるかというところをお伺いできればと思います。 (安藤) 階層別研修全体の主旨もそうなのですけれども、自分で力を発揮して業務を動かすという「自律型人材」を育てたいという思いがあります。 弊社は、昔は銀行の子会社でしたし、独立系企業である現在も安定した営業基盤を持っています。安定は良いのですが、一方、安定した仕事や維持管理業務に慣らされていると、社員の意識が自然に受け身に、おとなしくなってしまいます。それを危惧しているのです。そこを変えていきたいのです。 変えていくためには、社員の相互作用も意識できるといいと思っています。 (山川) 相互作用というのは、社員間、縦も横も含めてということでしょうか。 (安藤) そうですね。 階層別研修をやったなら、その受講者同士で刺激し合ってほしいし、その後で職場に戻ったなら、部署の中で刺激し合ってほしいです。最終的には、上下関係も含めてそうなればいいと思っています。 会社の思いとして「自律型人材の育成」と言い表していますけど、「活躍する人に光を当てて、そういう人にみんなが目を向けて、お互い刺激し合うようなところまでいけるといい」というのがイメージです。 だから人事としても、ここが素晴らしい、というところに光を当ててあげたいと思います。 (山川) 最後に、人材育成に関わられている中での安藤さんのポリシー、こういう思いで人材育成に携わっているというものがあれば、お聞きしたいと思います。 (安藤) 基本的に、偉そうなことを言うには、自分がそれ以上のことやれていないといけないと思っています。私は今は人事部で、その前は企画部という部署で法務関係のことをやっていました。 人事も企画も、社内の間接部門は、やはり評論家ではいけなくて、自分が身を乗り出して、自分の守備範囲以上の役割を背負いながらやらないといけないんだ、と日々感じてきました。だから、自分が必死に苦労して、身に染みている言葉を発信したいという思いが強くありますね。 社員の皆さんに向けて、「もっと自ら責任もって行動して!」と自分で言うのはちょっと恥ずかしいです。でも、やはりそういうことを言わざるを得ないのですよね、仕事ですから。みなさん大変だから、頑張っているから、と遠慮をしていては、何も伝わりません。 今回の研修も、受講者のみなさんが研修の1日目は大変おとなしい感じがしたので、2日目には、「もっと活発にやってください!」と最初に強くお伝えしました。 偉そうに言う分、自分も頑張らないといけないということを思いながらやっています。 私自身も社員の皆さんと刺激を与え合って、やれるといいという思いがありますね。 (山川) なるほど、素晴らしいと思います。 (安藤) ありがとうございます。 (山川) 今日は、どうもありがとうございました。 関連ページ ■階層別研修を探す